第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
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そこにいるベンに話し掛けるカロルも最早見慣れていた。
カロル「今日も大変そうだね。」
「おー、分かるか!?最近〈
チラリとベンがメルクを見た。
しかしすぐに全員を見渡した為、それは誤魔化せただろう。
「それで?お前さん達は今度は第4界層か?」
カロル「うん!ようやくここまで辿り着いたよ!」
「はっはっ!本当、お前さん達すごいな!ここまで来れたのはなかなか居ないぞ?」
カロル「まだ最終地点は第4界層なの?」
「お、聞いてくれるか?実は他の探検家達が第6界層まで突破したようだぞ?また本が出てるから今度買ってみたらどうだ?」
カロル「うん!絶対に買うよ!どんな場所だったんだろ……。」
「ははっ!言ってもいいのか?」
カロル「うーん、気になるから少しだけ教えてよ!」
「そうかそうか!勉強熱心なのは悪くねぇ!まずは第5界層だが……こりゃまたやべえところだ。何でもお化けが出る塔らしいぞ?」
リタ「っ!」
カロル「え…、マジ?」
「なんだ?ここに来て怖気付いたか?はっはっは!まだやっぱり坊主だな!!」
カロル「そ、そそそんな訳ないじゃん……?」
「足ブルってるぞ?」
ベンの言う通り、カロルの足はガクガクと震えている。
リタの顔も真っ青になっている。
二人ともそういう類は苦手らしい。
それを知っているユーリ達は、心の中で合掌する。
カロル「ま、まあ…、フレンの目的地って第4界層だし…!!」
「じゃあ第6界層の説明はいらないか?」
カロル「いる!!」
「はっはっは!元気だな!!第6界層だが、まだ未踏破だ。どんな感じかはわかってるが攻略に躓いてるって感じだな。案外お前らの方が早いかもな?」
カロル「ちなみにどんな所なの?」
「名前はまだ“罪過の湖”としかついていないな。あの長ったらしい名前はまだ踏破していないから付けられてないんだ。」
リタ「長ったらしい名前って自覚はあるのね。」
「呼びにくいしなー?アレつけた奴の気が知れねえな。」
実際名前を付けているのはベンじゃない。
勝手に誰かがそう名付けている……と言いたいが、実は文献に名前が全て載っている。
あそこまで長ったらしい名前になったのは、他の誰かが付け足したからだ。
ユーリ「ちなみに第4界層の説明はないのか?」
「そうだな、今は第4界層だもんな!第4界層の名前は“〜進退両難なる黒雨の湿原〜”だな!進むも戻るも出来ず、にっちもさっちもいかない湿原地帯だ。ただでさえ泥沼で足を取られて呑み込まれていくのにその上、空からは激しい雨ときた。雨対策とか湿気対策とか湿原対策はした方がいいぞ!後は明かりもな!」
カロル「明かり?暗いってこと?」
「黒雨って知ってるか?“空を暗くするほどの大雨”って意味なんだ。だから辺りは暗いから足元注意だぞ!」
それを聞いて装備を見直すことにしたユーリ達は一度解散にした。
メルクだけはその場に留まり、ベンと話をすることに。
「あーあ…。疲れるったらありゃしねぇ…」
『ふふ、お疲れ様です。』
「全くだ……。最近特に忙しくなってきやがって…」
『〈
「いや、違うな。ただの物好きか、馬鹿だろう。まぁ俺達の探している宝ではないだろうが、金銀財宝を探して、とも取れるか。」
『その方々は踏破はされてるんですか?』
「まぁまぁだな。だからやめとけって言ってやってるんだが、こっちの忠告を聞きやしねぇ。」
『そうですか…。』
笑顔だが落ち込む優しい少女に「あー…」と零したベン…基、ヴィスキントは少し考える素振りを見せた後奥へ引っ込み、何かを手にして戻ってきた。
「こいつを持っていけ。」
『?』
「第4界層だろう?これが役に立つかもしれないからな。」
ヴィスキントが持ってきたのは大人用のレインコートと手に持つタイプのランプだった。
特殊な加工なのか、その火はずっと燃えていた。
「〈
『いいのですか?そんな貴重なものを…』
「言っただろ。お前に死なれては困る、と。そのための援助ならこちらも惜しまないさ。……無事に帰ってこい。いいな?」
頭を撫でるヴィスキントに笑顔で頷くと、ヴィスキントは一点を見つめ元のベンの顔へと戻った。
丁度そこへユーリが帰ってきた。
ユーリ「メルク。」
『ユーリ。もう買い物はいいの?』
ユーリ「あぁ。それよりも何話してたんだ?」
『第4界層についてのお話を少しだけ、ね?』
ユーリ「ふーん?」
メルクの手に持っているランプを見て珍しそうに見るユーリ。
そしてチラリと意味ありげにベンを見たが、何も言わなかった。
「(こいつ…さっきの見てやがったか…)珍しいやつだろう?お嬢ちゃんが第4界層について色々聞いてくるから餞別に、と思ってな!」
ユーリ「それは有難いな。貴重な奴なんじゃないのか?」
「まぁそうだが、背に腹はかえられないだろ?お嬢ちゃん達が無事に帰ってくる為にもそれ、使ってくれや!」
ユーリ「そうか、それじゃあ有難く使わせてもらおうぜ?」
ユーリがメルクを見て頭を撫でる。
一瞬目を瞬かせたメルクだったが、ユーリが撫でてくれた事で頬を赤く染め嬉しそうにした。
それに内心ヴィスキントが驚いていた。
そして危惧した。
このままこいつらと同じ場所に居させて、作戦に支障は出ないか、と。
この少女がまさか、人に恋するなんて。
あんなにもアビゴールに心酔しているのにも関わらず、その少女がアビゴールとは違う他者に頭を撫でただけであんなにも頬を染めることなど見たことがなかった。
「……(この界層踏破したら一度攫ってしまうか…?)」
ユーリ「さて、他の奴らが戻る前に買いたいものはないか?」
『私は特に何もないと思うわ?ユーリはもういいの?』
ユーリ「特に買いたいもんねえからな。…そうだ、あんた沢山の奴ら見てるんだろ?」
「ん?あぁ、そうだが?」
ユーリ「界層に挑む奴らの中に“ヴィスキント”って名前に覚えねえか?」
「『!!』」
顔には出さずに2人は驚いていた。
何故その名前が出てくるのだ、と。
「ヴィスキント…?…いや、今はパッと思い出せないな。後で調べておこうか?」
ユーリ「あぁ、頼んだ。もしかしたら、手掛かりになるかもしれねえからな。」
話しながらメルクを見るユーリ。
しかしメルクは内心焦燥感に駆られていた。
何故ユーリがその名前を知っているのか、と。
しかしそこは持ち前の笑顔でユーリの視線に応えたメルク。
そこへ良いタイミングで仲間の皆が帰ってきたので話が中断する。
カロル「ほら、ユーリ絶対何も買わないと思った!!」
カロルがユーリへと渡していたのは大人用のレインコートだった。
それを礼を言いつつ受け取るユーリに、カロルはジトリと視線を送った。
ユーリ「さーて!第4界層、行くとしますか!」
「気をつけて行ってこいよ!」
ベンが手を挙げ皆に激励するとユーリとメルク以外のメンバーがそれに答えた。