第3界層 〜窮猿投林の流転の森〜
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___帝都ザーフィアス城内、音楽室
最近、戦闘も行っていない。
城内で過ごすには研究素材が足りないし(豊富な蔵書はあってもだ)、ココとロロはメルクから離れて騎士の人達から剣を教わっているし、兎にも角にも何も無い訳で。
丁度音楽室なるものが城内にあると聞いて、折角なら歌の練習でもしておこうとここへ来た。
フレンがいつ第4界層の話を持ち込むか分からない以上、それまでは普通に過ごして置いた方が良いだろう。
『……』
音楽室には沢山の楽器があった。
恐らく、城でパレードやら行事が行われる時に使われるものだろう。
その中でも特に目を引くのはやはり、奥に佇むグランドピアノだろう。
手袋を外し、そっと触れればその触り心地に溜息が出る。
楽器の使用は兵士の方々から許可を得ているので大丈夫なので、少しだけ弾いてみる。
〜〜♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜
優しいピアノの旋律が流れる。
一度手を止め椅子に深く座り、ピアノを弾き始めればどんどんと指は鍵盤を叩いていき、流れるような旋律を奏でていく。
『•*¨*•.¸¸♬︎』
やはり伴奏があると違うというもの。
いつも戦闘では伴奏はないし、頭の中で思い描いていてもやはり寂しいものは寂しい。
『•*¨*•.¸¸♬︎...♪*゚』
音楽室に流れるのは優しく穏やかな旋律。
心の綺麗な人でなければきっと流せないような、そんな心が清らかになる旋律だ。
部屋が大きいのもあって入口までその旋律が届くかは分からないが、それでも聞く人あればそっと目を閉じて聞き入ってしまうだろう。
その歌は誰のためでもない。
ゆっくりとしたそのスローテンポの曲は聞く人に語りかけるような、そんな歌。
『...♪*゚.・*’’*・.♬』
きっと、誰をも癒す。
そんな曲だ。
〜•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪.・*’’*・.♬〜
ピアノの旋律もとても心地良い。
いつまでも、いつまでも、その曲は音楽室に響き続けた。
久しぶりに弾いてはみたが、その腕は全く鈍っていなかったようだ。
長い旋律のその曲をゆっくりと閉じれば、何処からか大勢の拍手喝采が飛び交う。
メルクが驚いて見渡せば、音楽室の入り口にユーリやフレン、エステルやリタにカロル等仲間達が勢揃いしている上に、音楽室の許可を出してくれた兵士達まで押しかけていた。
その全員が笑顔で拍手をしていたのだ。
音楽室では音は響いて聞こえる。
だから余計にその音は大きく聞こえたのだ。
無論、それを聞いていた皆はメルクの音を聞いて癒されていたのだ。
誰一人辛い表情などしていない。
皆、笑顔でただただ拍手を送っていた。
ただ一人の演奏者へと。
『皆さん…』
「凄い良かったです!」
「もっと聞きたいくらいですよ!」
「ここだけで聞くには勿体ない!今度コンサートでもしてみられたらどうですか?!」
兵士の人達からそう声を掛けられ、笑顔で応える。
そんな中、ユーリ達も感想を述べてくれる。
エステル「メルク!やはりメルクは上手ですね…!私そこまで上手く弾けないです!」
リタ「こればっかりは才能よね。ほんと、上手かったわ。」
ジュディス「この子がこんなに褒めることなんて中々ないわよ?」
レイヴン「そうそう!リタっちがここまで言うのは中々……って痛い!」
リタが怒りの形相でレイヴンを蹴り上げ、途端に悲鳴を上げる。
パティ「うーん、癒されるのじゃ〜。最早これは回復術なのじゃ。」
カロル「パティの言う事、すっごく分かるよ!何か悩みなんて吹っ飛んでいきそうな歌だったよね!」
ラピード「ワフッ!」
フレン「ええ。本当に美しい旋律でした。心の清らかな人でないとあそこまで綺麗な旋律は出せないと聞きますから。」
ユーリ「お前の歌がここにいる全員を魅了したんだ。もっと誇って良いと思うぜ?」
近くに寄った皆の感想を聞いて、いつもの笑顔から照れるようなそんな微笑みを見せたメルク。
最初はユーリ達が兵士から居場所を聞いて音楽室へと向かったのだが、あまりにも美しい旋律とその姿に入り口を開け放ったまま固まって聴いていたのだ。
するとどんどんと観客が増えて、ここまで増えていき、皆メルクの音に魅了された。
それは誰が聞いても素敵な才能だ。
自己犠牲の気があるメルク。
仲間達にユーリ達はその事包み隠さず、話していたのだ。
そんな中、あんなにも綺麗に歌われると余計に儚く見えるというもの。
だが、賞賛はお世辞無しで本物の感想だ。
音楽に通ずる訳でもないが、こればかりは本当のことを言ってくれているとメルクも分かっていた。
『まさか、皆さんが聞いているなんて思わなくて……。すみません、もう少し明るい曲にすれば良かったですね。』
カロル「全然っ!あの曲が好きだよ!すっごい綺麗だった。」
レイヴン「指も流れるように弾いてて、ほんと、凄いわ、嬢ちゃん。」
兵士達からも賞賛を受け、頬を染め困ったように照れるメルク。
こんなにも褒められるなんて思ってなかった。
だからとても嬉しいのだ。
褒められて悪い気はしないものだ。
ユーリ「メルク。」
『??』
ユーリ「急で悪いんだが、俺たちは第4界層へ向かおうと思う。お前のその力、また貸してくれないか?こいつらはどうもお前が居ないと駄目みたいでな?」
ジュディス「あら、よく言うわ。貴方が一番この子に付いてきて欲しい癖に。」
フレン「人をダシに使わないでくれないか。」
ユーリ「フレン、お前はおかしいだろ。その言い方。お前のためだろ……」
ユーリがジトッとした目でフレンを見れば、何処吹く風で笑う幼なじみ。
あの野郎…、今度覚えておけよ。
『はい。喜んで。』
立ち上がるメルクを見て、ユーリも一度頷き仲間達を見た。
さぁ、問題の第4界層だ。