第3界層 〜窮猿投林の流転の森〜
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___翌日、帝都ザーフィアス城内
城というのは料理人がついているものだ。
だから自分が作る必要がないと分かっていても早起きしてしまう。
もう癖になっているそれに苦笑いを零し、城内を散歩する。
何か情報収集でも出来れば、それに越したことはないからだ。
すると向こうから欠伸をしつつ寝ぼけているカロルを発見する。
カロル「ふわぁ…。あ、メルクだ…。おはよー。」
『おはよう?カロル。』
カロル「こんな朝っぱらから…どこに行くつもりなの……?」
まだまだ眠いのか目が半開きの状態で声をかけるカロルにメルクがくすりと笑う。
その寝ぼけ姿はまるでココとロロみたいに愛らしい。
『城内って初めて入るから、場所を覚えつつの散歩よ?』
カロル「あ、そうなんだ…。待ってて、ボクもついていくよ…」
『大丈夫なの?眠そうよ?』
カロル「地図なら…任せて…ふわぁ…」
目を擦り、大きく伸びをしたカロルは頭を振るとようやく覚醒した様で、ちょっと待っててと言い残しどこかへ走り去っていく。
律儀にそれを待っていれば、30分後にカロルが戻ってくる。
カロル「お待たせ!さ、行こう!」
『??』
覚醒したカロルはメルクの手を取ると、どこかへと連れて行こうとする。
素直に従っていれば、道中騎士の方々に敬礼される。
それにお辞儀をして返しながら、カロルに連れられ歩いていく。
何処に行くかは秘密なようで、一向に教えてくれなさそうなので楽しみにしながら歩いていく。
カロル「見てみて…!」
小声で話すカロルに近付き、扉向こうに目を向ければフレンが剣を持ち稽古に励んでいた。
一生懸命なその姿に感心しつつ、カロルを見ると説明をしてくれた。
カロル「この時間になるといっつもここで稽古してるんだ。すごいよね…!だからあんなに強くなれたんだよね!」
小声ながらも感心しつつ感想を述べてくれるカロルに笑顔で頷いた。
もう一度扉向こうに目を向けると、そこにはユーリも現れて何かを話している。
カロル「ユーリとフレンは幼馴染なんだって。ここ最近、城に居るとたまに稽古に付き合ってるみたい。」
『カロルは物知りね?』
カロル「えへへ。そうかな!」
2人で扉向こうにある訓練場をしばらく見ていると、僅かな隙間で見ていたにも関わらずユーリがこちらに気付いたように目を丸くする。
そしてニヤリと笑うとユーリがフレンに何かを言おうとしたので、カロルが慌ててメルクの手を取り、走り出す。
カロル「やばっ、ユーリにバレた…!」
『バレてはまずいの?』
カロル「そりゃ、まずいよ。こんなこっそりと見ているなんて知られたら…」
カロルが身震いをするので目を丸くし、くすりと笑う。
子供の発想は時に面白い。
きっとココとロロもここに居たら楽しいことになっていただろうな。
『ふふ…!』
カロル「笑い事じゃないよー!」
真っ青なまま暫く走っていた二人だったが、訓練場から大分離れたことでようやく立ち止まる。
呼吸を整えながら二人はお互いを見ると、どちらともなく笑い出した。
今日はカロル先生に着いていこう。メルクはそう思った。
城内探検withカロル先生、といったところか。
カロル「じゃあ、次行こ!」
『はい。』
次はどんなところを見せてくれるんだろう。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*+..:*○o。+
___帝都ザーフィアス城、図書室
大きな部屋に連れてこられたメルクは目を瞬かせていた。
ここにある蔵書は色んな所から集められているようで、様々な造詣がここには集まっていた。
特に歴史本が目立つものの、植物の本なんかもあり、メルクにとっては天国のような場所だった。
カロル「見て…、あそこ。」
またしても小声でそう話すカロルに言われ、その方向を見ればエステルとリタが一生懸命机に向かって本を読んでいた。
何の本か気になった二人は場所を移動して、本のタイトルを確認する。
エステルは歴史の本、リタはやはりというべきか魔術についての本だった。
カロル「…二人はブレないよね…。」
『それほど勉強熱心ってことね?偉いわ?』
カロル「ま、勉強が出来ても実践が出来なくちゃね!」
自慢げにカロルが言うのでくすりと笑う。
可愛らしい子供特有の鼓舞だ。
そんなカロルの声に気付いたのか、リタが反応を示す。
リタ「…何かさっき、がきんちょの声が聞こえた気がするんだけど…」
エステル「え?そうです?」
カロル「げ、マズい…。」
カロルが嫌そうな顔をするので後ろで苦笑いすると、リタが立ち上がって辺りを見渡し始めたのでカロルが慌て始める。
本当、面白い探検だな。と一人笑っているとカロルがメルクの手を取り、走り出した。
さあ、次はどこに連れてってくれるんだろう?
__そんな二人を視認して目を丸くするリタ。
リタ「…あいつら、何やってんの?」
エステル「何かあったんでしょうか?」
ユーリ「おーい、2人ともいるかー?」
ユーリとフレンが図書室に足を運んでいた。
その二人はリタとエステルを探していたようで、図書室まで来たのだ。
ユーリのその顔は何か企んでいる顔をしていて、フレンは苦笑いで着いてきただけのようだ。
ユーリ「ちょーっと力を貸してくんねえか?」
「「??」」
2人は首を傾げつつも、ユーリの話を聞き了承した。
意外にもリタがやる気になっていて、その顔はユーリと同じで何か企んでいる顔だった。
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___帝都ザーフィアス城内、噴水広場
カロル「ここは普段から誰も居ないんだけど、たまにジュディスが居ることあるんだ。」
『カロルは良く知ってるのね?仲間たちの動向を。』
カロル「まあね!やっぱり仲間のいる場所って、ギルドのボスとして把握しててもおかしくないでしょ?」
『ふふ。そうね?』
噴水の音を聞きながら、近くにあったベンチに座り一休みしているとカロルが今までにあった冒険の数々を教えてくれる。
魔導器のことだったり、星喰みの事だったり。
まるで冒険小説を読んでいるような、そんな感覚にさせられる。
カロル「ねえ、メルクは何であのギルドに入ろうと思ったの?」
『…私は、幼いころ両親を亡くしてるの。そこで私を拾ってくれたのが、今のギルドマスター。育ての親として私を育ててくれて、植物に興味があると知ったら植物園まで作ってくれて…。本当に、素敵な人なの。』
カロル「…。でも、そのギルドマスターがメルクを……」
『もし、ギルドマスターと話せる機会があるならば…どうしたいのか聞いてみたい。そう思うの。』
急に静かになってしまう中、噴水だけはいつまでもその音を響かせていて静寂に少しだけ刺激を与えてくれていた。
今はその音があってありがたいと思った。
嘘をつくのは良くないけれど、今だけはあの方の作戦を壊すわけにはいかないから。
カロル「…やっぱり、ギルドに戻りたいと思う?」
『…どうかしら。私にも分からないの。』
カロル「ボクは…そんなギルドがあるなら止めたい。子供を誘拐して、殺すようなギルド…。それにメルクだって苦しんでる。そんなの間違ってるよ…!!」
『カロル…。』
カロル「〝神子〟だとか〝願い叶える者〟だとか…。そんなもののために沢山、たくさん犠牲になってるんだ…!ボクは、それを許さないよ。」
凛とした声でそう言い放つカロル。
俯きそうになる顔を上げて、メルクは笑顔でカロルの頭を撫でる。
『じゃあ、カロルは私も罰してくれるの?』
カロル「そ、それは…。だって、メルクは被害者だし…。」
『でも、私もギルドの大人組の一人だから。ココやロロのような犠牲者を出したギルドの一員だから、それに甘えるわけにはいかないわ?』
カロル「……。」
『ふふ、カロルには難しいお題だったわね?』
カロル「…………ないよ」
『うん?』
カロル「メルクは悪くない。それにもしメルクがあのギルドと同じように悪い道に行こうとしてるなら、ボクはそれを止めるだけだよ。」
子供だと思っていた彼が、まさかこんな大人びた顔をするとは…。
僅かに驚いたメルクだったが、すぐに優しい笑顔でカロルを見る。
『じゃあ、その時はお願いするわね?』
カロル「その前に、悪い道に行く前提で話し進めないでよ…。心臓に悪いよ…!」
『ふふ。カロルから話し始めたじゃない?』
カロル「あー!もう、この話やめっ!」
カロルはベンチから勢いよく立ち上がると、メルクの手を取った。
カロル「悪い奴らのせいで良い人たちが辛い思いをするのは、もう懲り懲りなんだ。だからボクは何度だってメルクに手を伸ばすよ!悪い方へ行くなら良い方に向かうように手を伸ばすよ!」
『……あらあら。』
急に大人びた発言をするものだから驚く。
こうして子どもは大人になっていくのかな。なんて思っているとカロルの頭に何かが落ちてきた。
カロル「あいたっ!」
それは地面を転がっていって、頭を押さえるカロルは涙目でそれを目で追っていく。
地面に転がったそれは小さな宝箱で、カロルは恐る恐るその宝箱を手にし、開けていく。
そこには一枚の紙が入っていた。
カロル「…?これ…、宝の地図だよ!!」
『え?』
急に喜びの声を張り上げるカロル。
さっきまでの雰囲気はどこへやら…。
目を輝かせそれを見るカロルに、横から失礼して紙を見せてもらうと何やら地図らしきものに×のマークがついている。
…確かに世間一般的にいう宝の地図だ。
ただ、こんな偶然あるだろうかと頭を悩ませていると隣に居るカロルの顔が見える。
その顔は先ほどから嬉しそうに綻ばせ、目を輝かせている姿。
その姿に野暮なことは言えないと口を噤ませると、カロルは私の手を取り、走り出した。
カロル「ここは確か、城の中でも武器の格納庫のある場所なんだ。そこにお宝があるかもしれない!」
『…ふふ。』
誰が考えたかは知らないが、カロルの楽しそうな表情を見れてメルクも満足していた。
『(誰だか分かりませんが、ありがとう。)』
カロルに連れられ、またメルクは城内を走るのだった。
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