第3界層 〜窮猿投林の流転の森〜
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___第?界層、?????
眩い光の中、目を覚ましたメルク。
そこはやはり真っ白な光の世界で、何度目だろうかと僅かにその笑顔を曇らせた。
《私の神子よ、良く来ましたね。》
『!!』
今度はちゃんと聞こえる。
それに希望を持ったメルクは、何もない光の世界に問いかける。
『あなたは、誰なのですか…?』
《私の神子、よく聞きなさい。ある男があなたを殺そうとしています。十分に気を付けて。》
『待って、それは誰なのですか?それに、貴方はいったい…』
《私の神子、可愛い神子よ。貴方が人間の願いを叶える姿、この目でしっかりと見ていますから。しっかりと人間を見てきなさい。あの世界を救うも滅ぼすも…全ては……人間次第なのですから。》
『世界を、滅ぼす…?そんなこと、』
《私の神子、可愛い神子よ。どうか、人間に絶望しないで。》
『待ってっ!』
瞬間、再び眩い閃光が訪れる。
そして、次に目を開けた時にはまた夜の町だった。
言うまでもなくそこは、〈
「帰ってきたか。」
『!!』
後ろを振り返ったメルクに驚きを見せるヴィスキント。
何故なら少女の視力が回復していたからだ。
でなければ瞬時に振り返ることなど出来るはずないのだから。
「目が戻ったのか。」
『はい。イロイロバナの花粉のおかげで治りました。』
「流石植物博士だな。よくやった。」
頭を撫でるヴィスキント。その姿は夜に紛れ込める黒づくめのいつもの格好。
しかし、すぐにヴィスキントは後ろを警戒し、小声で現状報告をする。
「騎士どもが動き出した。偽の〝神子〟情報を掴んでな。今頃血眼になって探してるんだろうよ。」
『その女性はもう…?』
「ああ、あいつがもう確保していた。〝神子〟である当の本人はノリノリだったがな。」
『そう、ですか…』
「…落ち込むな。どうせ偽物だ。騎士共に渡っても何ら問題はないし、俺達はお前しか要らないからな。」
『…はい。……そういえば、』
「ん?」
『〈
「…なんだと?」
『覚えは…ないですよね…?』
「初耳だな。それに、その声も気になる。どんな声だった?」
『女性の声で…威厳があるけど、優しさも伴ったそんな声でした。私のことを”私の神子”と呼んでいました。』
「……。」
しばらく考えるヴィスキントだが、前回のこともあるので後ろを振り返りすぐにメルクを見ると別れを告げる。
「分かったことがあればまた報告する。お前の方も何か分かった事があれば報告に来い。お前は分かってるだろ、俺がここでベンとしてやってることは。」
『はい。何かあれば、また。』
「男か…気になるな。こっちでも調べてみるさ。じゃあな。」
すぐに消えたヴィスキントのすぐ後に、ユーリたちの声が聞こえる。
すぐに振り返るとユーリ達が走ってきていた。
カロル「はぁっはぁっ。何で、メルクって、そんなに、早いの?」
リタ「毎回毎回早いのよ!」
ユーリ「大丈夫だったか?黒い奴が来なかったか?」
『ええ、大丈夫。ありがとう?ユーリ。』
ユーリ「無事ならいい。」
頭を撫でられ、目を細める。
ユーリ「パティ達に聞いたんだが、視力戻ってよかったな。」
レイヴン「おっさんたちは何にも役に立たなかったけどねー。」
『そんなことないわ?私にとって、とても居心地の良い場所を作ってくれてる。だから、私にはそれだけで十分。ありがとう。』
レイヴン「お、おう…」
照れたようなおっさんに皆が冷やかしの顔をして、肘で小突いたり背中を叩く。
まだ、沢山分からない事がある。
でも、私は界層を何とかして突破しないといけない。あのお方の為にも。
そこに、皆が居てくれたら心強い…。
メルクは星空を仰いで、目を閉じた。
どうか、あの人の願いが叶うまでは誰も私を殺さないで。
どうか、どうか、お願い…。
ユーリ「……。」
そんなメルクを盗み見ているユーリは、メルクの様子に心の中でため息を吐いた。
何か抱えているのなら、話せばいいのに。
単純に聞き出せばいいのか。
そんな複雑な思いを抱えて、今度は静かに溜息を吐いた。
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???「………。」
テンガロンハットを被り、口元には包帯を巻いて隠している背の高い妙な格好の男が居た。
場所は見晴らしの良いエフミドの丘。
しばらくその景色を堪能していた男だったが、自身の得物である銃を見て呟く。
???「この世界に神子が居るのか…。必ず殺してやる…。神子は壊すべき存在だ。」
鼻で笑うと銃でテンガロンハットのつばを上げ、踵を返した。
物語は新たな局面へと向かっていく。
そして、新たな歯車がカチリと嵌まろうとしていた。
__さあ、貴女はこの世界でどういう物語を紡いでいく?