第3界層 〜窮猿投林の流転の森〜
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___第3界層、一方その頃のメルク達。
皆とはぐれた事に気付かないまま進んでいくメルク達。
メルクの嗅覚を頼りに進んでいるので、何処にたどり着くか分からないものの、メルクの両手を繋いでいる二人はメルクの事を信じていた。
きっと何かいいことがあると信じて。
パティ「何の匂いなんじゃ?」
『……これはアンモダケね。』
エステル「アンモダケ?聞いたことがないです。」
パティ「アンモナイトなのじゃー。」
『ふふ。アンモナイトとはまた別なの。アンモダケは暗いジメジメした場所に生えるんだけど、その特徴は甘い香りと…藻のようなキノコのような見た目が特徴的なの。ブルーベリーの様に目に作用されると言われる幻のキノコなの。』
パティ「目に作用するキノコ?!なら余計に取らないとダメなのじゃ!」
腕を捲るパティにエステルもやる気を見せる。
目に良いと聞けば黙ってはいられない。
ここはメルクの為にも頑張りたいところだ。
『あまりにも珍しいからテルカ・リュミレースでは1個見つかったかどうかっていう貴重なキノコなの。ここで見つかれば一攫千金出来るかもしれないわね?』
パティ「なぬっ!?それは大量に持ち帰るのじゃ!」
エステル「駄目ですよ!パティ!持ち帰るなら少しづつにしないと!」
パティ「何でじゃ?」
エステル「乱獲は生態系を歪めると聞いた事があります。それに、あまりにも持って帰って売り捌けば売値が暴落して、とても下がってしまいますっ!」
パティ「お主……姫なのに案外逞しいの…。」
呆れた声でパティがエステルを見遣る中、メルクはアンモダケの場所を特定しようと鼻を使っていた。
アンモダケの香りはかなり特徴的な甘い香りだ。
ただ甘い香りだけじゃない。その甘い香りの奥にあるキノコのような独特な臭い。
これがあればもしかして……。
そう期待せずにはいられないメルクもアンモダケを必死に探していた。
『……?』
何か違う香りが混じっている。
これは何だったか…。
記憶を頼りにその香りの正体を突き止めようとすると、エステルが隣で不思議そうな顔をする。
エステル「あれは…なんでしょうか?」
パティ「よく分からぬが、叩いてみるのじゃ!」
エステル「あ!パティ!駄目ですよ!」
大きな花のようなその見た目。
赤くグロテスクな見た目であるにも関わらず、パティはそれを叩く為にメルクの手を離した。
それに気付いたメルクだったが、時は既に遅し。
そして同時にメルクの頭に浮かんだ、その香りの正体。
『皆さん、ここら辺にイロイロバナが棲息している様なので注意して下さい。』
エステル「え?」
パティがその赤い花をポンポンと叩くと、花が開き中央の部分から破裂音がすると粉のような何かが3人に降り掛かってくる。
エステル「きゃあああああ?!!」
エステルの悲鳴に何事かとメルクが目を点にする。
先程の破裂音といい、もしかして誰かがイロイロバナを叩いたのではと推測したメルク。
そんな時だった。
『っ!?』
イロイロバナの粉が降りかかると同時にメルクの目は何か刺激物が入った感覚がして、涙が反射的に出てきた。
恐らくイロイロバナの粉が目に入ったのだと分かったが、涙で落ちるものか?と思案していると、その視界は徐々に朧気だったのが嘘のように晴れ渡る。
そう、メルクの視力は戻ったのだ。
それに驚く暇もなくエステル達を見たメルクだったが、その光景にまた別の意味で驚き、そして……
『ふふ、あはははは…!!』
パティ「ぶっ!あっはははははははっ!!!」
パティもメルクも笑ってしまった訳…。
それはイロイロバナの粉に塗れた自分達が面白かったからだ。
イロイロバナは色の付いた粉を出す。
しかし3人の体には違う色の粉が降りかかり、それぞれ違う色一色となっていたのだ。
エステルは桃色、パティは黄色、メルクは水色。
近くにいても降り掛かった粉の色はこんなにも違うのだ。
それがイロイロバナの出す粉の特徴だった。
『ふふ…!2人とも凄い色…!』
「「え?!」」
その言葉にハッと気付いた2人。
もしかして、もしかしなくとも視力が戻ったのだろうか?
確かめる為に2人は近付き、メルクの瞳を見た。
そこにあるのは先程までとは違い、ちゃんと焦点の合った瞳だった。
ちゃんと視力が戻った事に喜んだ2人は、メルクを抱き締めた。
パティ「良かったのじゃ…!!」
エステル「本当、良かったですっ!!」
『心配かけました。ありがとう、2人とも…!』
喜びを噛み締め、涙を流す3人。
しかし涙を流したとて、その粉が消えることは無い。
悲惨な姿になった3人は改めてお互いの体を見てみると、居ても立ってもいられず爆笑した。
パティ「これじゃあ、誰が誰なのか分からんのじゃ!」
エステル「ピンク一色なんて、驚きです!」
『誰かイロイロバナを叩いたの?』
パティ「あれってイロイロバナって言うのか?」
パティが指さす方向にはイロイロバナが佇んでいた。
そうそれ、と頷くとパティが納得したように近付く。
大きな花のようなイロイロバナは近付くだけではなんの反応もしなかった。
『イロイロバナは叩いたり刺激を与えるとこのように粉を出して威嚇するんです。珍しいものを見れましたね。』
エステル「これ……落ちます?」
『洗濯すれば、ね?』
エステル「あぅ……。この界層を突破しないとずっとこのまま……」
パティ「そうじゃ!折角なら───」
パティが何かを2人に提案する。
その微笑ましい提案に初めはエステルが恥ずかしがってやりたくない、と言い出したがメルクは笑って了承していた。
『ふふ。皆さんを驚かせましょうか?』
パティ「腕が鳴るのじゃ!!」
エステル「うぅ…。上手く出来るでしょうか…?」
パティ「その為の練習じゃ!ほれ!やるぞい!」
エステルを中央に持っていき、その左右にメルクとパティが並んだ状態になる。
そして、パティが叫んだ。
パティ「キュートな女海賊、パティ・イエロー!」
エステル「え、えっと、本が大好き…エステル・ピンクっ!」
『食べる事より植物研究、メルク・ブルー!』
パティ「3人合わせてー?」
「「『イロイロ戦隊、イロガールズ!』」」
若干1人が恥ずかしそうにしていたが、概ね練習は成功だとパティが拍手を贈る。
自分達の今の粉のカラーに合わせて、文言を考えたパティ。
どうしてもやりたいらしく、2人に文言を伝えていたのだ。
その甲斐あって、何だか戦隊モノのような登場シーンとなったが…。
エステル「これ、本当にやるんです?」
パティ「当たり前なのじゃ!これを皆の前でバシッとやるとスッキリするぞ!」
『皆の反応が楽しみね?』
ふふふ、と笑うメルクは全く恥ずかしさは無いらしい。
それどころか、楽しんでさえいる。
エステルも最早諦めの境地に入り、残るははぐれた皆を探し出すだけだ。
パティ「それにしても、どこではぐれたんじゃ?」
エステル「途中までは一緒だったんですけど…」
『声が聞こえなくなったのはさっきくらいだった気がするわ?』
この3人、全く気が付いてなかったのだ。
はぐれたのは自分達だと。
『でも丁度いいかもしれないわ?ここの主はある素材を手に入れないといけないから。』
エステル「じゃあ私達で見つけてしまいましょう!」
パティ「どんな素材なんじゃ?」
『タノシミの実、というものなの。見た目は…』
特徴を伝え、一緒に探すことになった3人。
タノシミの実はその実を食べると楽しくなるという木の実だ。
それが今回の界層の主に効果覿面なのだが、それを話すのを忘れていたので今探すことにしたのだ。
『見つかった?』
パティ「まだなのじゃー。」
エステル「私もですー!」
ここなら豊富な植物があるのですぐ見つかると思ったのだが…。
なかなか見つからないタノシミの実。
でも諦める訳にはいかない。
ここの主にはあれが必要なのだから。
皆に迷惑をかけた分、ここでお返ししたいから。
『…!』
木々を見上げていると、ようやくそれらしき実を見つける。
必死にジャンプして取ると簡単に実が外れ、手に収まる大きさで見た目も面白く楽しめたりするので、タノシミの実と呼ばれている。
『ありましたー!』
その言葉に駆け付けた2人は、タノシミの実を見て良かった、と自分の事のように喜んでくれた。
ああ、なんて嬉しいんだろう。
穏やかになる心に目を細めタノシミの実を見つめるメルク。
近くにまだ沢山あるかもしれないからと、2人も手伝ってくれて沢山取ってきてくれる。
その間にも少しずつタノシミの実を調合していき、投げやすいように丸状のボールのように加工していく。
投げつけた時にすぐに中からタノシミの実の粉末が出てこれるようにも工夫して加工していくのを近くで見ていた2人。
パティ「メルク姐は手先が器用なのじゃ」
エステル「羨ましいです…。私こういった事はした事ないので自信ないんです。」
『2人も手先が器用だから大丈夫よ?これくらいなら2人にも出来るから…そうね?少しやってみる?』
パティ「うむ!やってみるのじゃ!」
エステル「こういう機会はないですから、是非!」
やり方をレクチャーすれば、すぐにこなしていく2人。
ほら、皆手先が器用だから出来るでしょ?
そう伝えれば、メルクの教え方が上手いから、なんて言ってくれるので嬉しくなりながらお礼を言った。
さぁ、名残惜しいけど、主を倒しに行ってまたあの世界へと戻ろう。
──皆で。