第3界層 〜窮猿投林の流転の森〜
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___第3界層~窮猿投林の流転の森~、入り口付近
門に吸い込まれたメルク達はいつの間にか森の入り口に立っていた。
深い森を連想させるほどの目の前の多くの木々に、メルク以外の仲間たちは足を止めていた。
この森を抜ければ第4界層への道が開かれる。
そして、ここでメルクの目の薬を手に入れる。
仲間たちの想いは一つになっていた。
エステル「メルク?深い森のようですから気を付けていきましょうね?」
パティ「ウチらもいるからの?安心せえ!」
『ふふ、頼りにしてますよ?二人とも。』
意気込んで先頭に立つ三人。
それにカロルが慌てて着いていく。
ユーリ「あいつら…目が悪いメルクを先に歩かせるなよ…」
ジュディス「そんなに心配なら貴方が手を繋げばよかったじゃない?」
ユーリ「そう言うのはあいつらの役目だろ?それにいざって時に動けないとな?」
ジュディス「素直じゃないわね。」
ユーリ「言ってろ…。」
遅くなったが、ユーリ達も歩き出す。
同じような視界が続いた後、急に森が開けてくる。
もうゴールだろうか?と不思議そうに見る仲間達を余所に、開けた場所へ辿り着いたエステル達は驚いた顔をする。
それもそのはず。
その場所は先ほどまで居た、森の入り口だったからだ。
エステル「え?!」
パティ「おかしいのじゃ!さっきまでちゃんと真っすぐに進んでいたのじゃ。なのに何で入り口に戻っとるんじゃー!!」
『あぁ、やっぱり入り口に戻っちゃったのね?』
可笑しそうに笑うメルクにエステルとパティは不思議な声を出す。
そういえばこの第3界層の名前を聞いていなかった。
後ろから来た面々も入り口に戻ってきたことに驚いた声を上げる中、メルクがこの界層の説明に入る。
『この第3界層は、
リタ「また長い名前…」
カロル「あ、聞いたことある。目印をつけていても森自体が移動してるから意味がないんだよね?」
『流石、カロルね?合ってるわ?』
エステル「
『ええ、そうね?流転の森というくらいだから森自体の景色が移り変わってしまうの。でも、
リタ「つまり、悩む暇があればさっさと進めって言いたいんでしょ?分かりやすいじゃないの。」
そう言ってリタが先に進んでいくので、仲間たちが慌ててそれに着いていく。
一緒に行かなければまた景色が変わってしまい、仲間同士で散り散りになることを恐れたからだ。
そんな中、エステルとパティはメルクをしっかり先導しながら歩いていき、それを信じてメルクも迷いなくどんどんと歩いていく。
そんなメルクだが、ずっとスンスンと匂いを嗅ぐような仕草をしていた。
それにエステル達も不思議そうに見ていた。
エステル「何か臭います?」
パティ「おっさんの臭いじゃないのかの?」
レイヴン「え?!そうなの?!メルクちゃん!?おっさん、そんなに臭い酷い?!」
ユーリ「ま、おっさんだしな?」
レイヴン「ちょ、青年もひどくなーい?!青年だって、もう少ししたらおっさんと同じになるわよ?!」
ユーリ「一緒にしないでもらいたいがな?」
段々と悪い方向へと話が転がっていくのをくすくすと笑って聞き流すメルク。
何だか落ち着くここに戻ってきたような、そんな感覚を覚えたからだ。
アビゴールの所は自分をよく見せたいがために頑張っているので、常に気を張っているのだ。
ここではそんな心配しなくてもいい。
いくら自分が心酔している”神”の作戦の途中だとは言え、メルクは久しぶりに緊張を解いていた。
『ふふふ…。本当、ここに戻ってきたんだって実感が湧く…。何だか、嬉しいの。』
エステル「本当、良かったです。私も、皆も…メルクの心配してましたから。」
『ふふ。ありがとう、皆___ん?』
急に止まったメルクにエステル達も足を止めざるを得なくなり、メルクを不思議そうに見遣る。
急に止まってどうしたのだろう。
エステルが疑問を口にする前に、前を歩いていたカロルとリタが声を上げる。
リタ「ちょ、魔物よ!?」
カロル「ぎゃあああ!!虫ぃぃぃぃぃ!!!」
ジュディス「あっちは賑やかね。」
ユーリ「言ってる場合か!」
前衛組が急いで前線に出る。
パティも前線に行き、前衛組を支援するようだ。
エステルがメルクへと声をかけ、戦闘が始まったことを告げる。
『(この匂い…)』
エステル「メルク!考え事は後にしましょう!魔物なんです!」
『!! 分かりました。』
パティ「ヴァリアブルトリガー! メルク姐は無理しない程度にじゃ!」
得意の銃攻撃で攻撃をしながらメルクを気遣うパティにメルクも短杖を構え、魔術で支援を開始する。
目を閉じ、神経を集中させ魔術を組み立てていく。
いつものそれをすれば、寸分の狂いもなく味方に支援技が届く。
お礼を言われたことに安堵しながら、魔術を行使していくメルク、その隣にはエステルがいつでもメルクを庇えるようにと術を使いながら待機していた。
しかし前衛組が頑張ってくれているおかげで、後衛組に魔物が襲い掛かってくることはない。
ユーリ「円閃牙!」
フレン「散沙雨!」
カロル「崩襲ブレーク!」
連続で使用していく技の応酬。
そうやって見事に華麗に決まっていくので、魔物討伐など簡単に終わってしまう。
あっという間に終わった戦闘に、エステルがメルクへと声をかけ戦闘が終了したことを伝え、メルクもそれを聞いて歌を中断する。
見事な連携に二人も満足そうに頷く。
まるで今までそうやってきたかのように息がぴったりだ。
『簡単に終わりましたね。ここの魔物と皆さんは相性がいいのでしょうか?』
エステル「そうかもしれませんね。前衛の人たちが優秀ですから、そんなにかからないかもしれません。」
パティ「終わったのじゃ~」
『お疲れ様?パティ。』
パティ「メルク姐もお疲れ様なのじゃー!」
手を繋ぎ、嬉しそうに笑うパティに、見えないがすぐに察したメルクも笑顔でパティを見遣った。
もう一つの手はエステルによって繋がれ、ゆっくりと歩き出す二人。
しかし、その足はメルクの声で止まることになる。
『すみません、2人とも。右に行ってもらえませんか?』
「「え?」」
『ふふ。良い物があったの。』
笑顔のメルクに、2人は最初こそ不思議そうな顔をしたが互いの顔を見合わせ頷くと右へと進んでいく。
それを仲間たちが慌てた声で止める。
レイヴン「ちょっと、ちょっと!勝手に逸れないでちょーだい!!」
ジュディス「何かあったのかしら?」
ユーリ「さあな。でも、もう先に行っちまったから追いかけるしかねえな。」
フレン「メルクさんが何かを見つけたのでしょうか?」
カロル「え~?目が見えないのに?」
リタ「野生の勘じゃない?だって植物探して結構歩き回ってるんでしょ?それなら野生の勘が働いてもおかしくないんじゃない?」
ラピード「ワオーン!」
ユーリ「ん?…そうか?」
フレン「僕も…分からないな…。」
リタ「犬っころ何だって?」
フレン「何か、甘い匂いがするようなんだ。」
カロル「甘い……」
レイヴン「…匂い?」
一斉に全員がスンスンと匂いを嗅いでみるがそんな匂い、何処にも存在しない。
犬の嗅覚ならまだしも、メルクがそれを嗅ぎ分けられたのならそれはもうすごいとしか言いようがない。
フレン「ともかく急いで三人を追いかけよう。結構離れてしまったようだ。」
リタ「足が速いわね。」
ユーリ達も急いで追いつこうとしたが、急に目の前の景色が変わったように見えた。
そして三人の姿が見えなくなってしまい、まずいと本能が言う。
リタ「……はぐれたわね。」
ジュディス「ま、あの子たちなら無事に最後まで辿り着けそうだけど。」
レイヴン「ジュディスちゃん?どこからそんな根拠が…」
ジュディス「そうね…。私も野生の勘、かしら?」
リタ「女の勘の間違いじゃない?」
ユーリ「ともかく一応三人を探しながら歩くぞ。」
ユーリの言葉に皆が一様に頷いた。
そこへ丁度魔物が現れ、ユーリたちの進行を邪魔する。
カロル「ちょっと待って、これって回復役不在じゃない?」
「「「「……」」」」
ジュディス「あら、皆それぞれ回復が使えるじゃない。あの子たちが多少居なくても大丈夫よ。」
真っ先に魔物を倒しに行くジュディスに、それもそうかとユーリも続く。
フレンはカロルの肩に手を置き、同情する。
そして、そのフレンも魔物へと向かっていった。
カロル「もう、やるしかないよねーー?!」
リタ「さっさと行ってきなさいよ。」
カロル「ひどっ」
そう言いつつもカロルも前線に向かっていくのを見てリタとレイヴンも後方で支援を始める。
あっという間に倒した魔物だが、そこからは魔物の登場の感覚が徐々に早くなっていき、ユーリ達も徐々に苦戦を強いられるようになっていた。
もしかしたらヌシまでの場所も近いのかも、と皆が心構えをする中、一向にメルク達は見つからない。
ジュディス「あの子から先にボスの情報聞き出しておくんだったわね。」
リタ「確かねー。ここのヌシってやつ?どんな奴なのかしら?」
ユーリ「意外だな。敵が来てもやっつけるだけだーっつって誰彼構わず攻撃するかと思ったわ。」
リタ「失礼ね。あたしだってちゃんと考えてるわよ。属性攻撃なめないでちょうだい。相性悪かったら最悪でしょ?」
レイヴン「ま、そうよねー?術攻撃は属性考えなくちゃ駄目だから大変よねー。」
ジュディス「貴方は元々騎士に勤めていたんだから前衛でも行けるんじゃなくて?」
レイヴン「今はもうそんな無茶出来ないわよ!?ジュディスちゃん!」
緊張感のない会話が繰り広げられる中、ラピードが急に嫌そうな声を出す。
ラピード「くぅーん…。」
ユーリ「ん?どうした、ラピード。」
ラピード「ウゥ…ワンワン!ワフゥ…!」
カロル「なんだって?」
フレン「甘い香りが強くなってるらしいんだ。それも…かなり近くから。」
ユーリ「全員、警戒しとけよ。」
辺りを警戒するユーリとフレン。
それに合わせてカロルたちも辺りを警戒し始める。
すると、何かの破裂音がした後悲鳴が辺りに轟く。
「きゃあああああ?!!」
「「「「?!!」」」」
カロル「あの声…!エステルだ!!」
フレン「エステリーゼ様…!!」
全員が目を点にする中、急いで声のした方へと向かおうとするフレンだったが魔物の出現に気付いたユーリがそれを止めた。
ユーリ「ちょっと待て!」
フレン「止めてくれるなっ!エステリーゼ様の身が危ないんだぞ!?」
そんなフレンの前に魔物が現れ、邪魔をする。
すぐに武器を持ち、魔物を切りつけるフレンにユーリ達も急いで魔物を攻撃する。
こんな時に限って魔物が強く、倒すには時間がかかりそうだった。
ユーリ「くそっ、こいつらと遊んでる暇ねえってのに…!」
ジュディス「早くやっつける他ないようね。」
カロル「っていうか、さっきの音なに?!なんか爆発したのかな?!」
リタ「がきんちょ!早く倒さないとどっちしろ行けないんだから先にそっちに集中しなさい!」
魔術を使いながらカロルを叱咤するリタ。
その後ろからレイヴンも詠唱を唱えながら支援をしていった。
気になる爆発音だったが、カロルも前線へ復帰し敵を倒していく。
しかしもっと気になることが向こうでは起きていた。
『ふふ、あはははは…!!』
パティ「ぶっ!あっはははははははっ!!!」
「「「「!!!」」」」
ユーリ「あいつら、大丈夫か…?」
ジュディス「とっても楽しそうね。」
カロル「もうっ!気になって戦闘どころじゃないよ!!」
遠くからだが、かすかに聞こえるその笑い声。
えらく楽しそうな雰囲気にユーリ達は魔物と戦いながらもひとまず安堵していた。