第3界層 〜窮猿投林の流転の森〜
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___帝都ザーフィアス、城内
メルクの視力の件は残念だったが、久しぶりの再会に皆が喜ぶ。
嬉しそうに話し合う女性陣の姿は、先程の暗い空気とは大違いだった。
エステル「そういえば、メルクは〝神子〟って知ってます?」
エステルの話題にメルクはいつもの笑顔を絶やさず聞いていた。
暫く思案した振りをして、エステルへと先ほどの質問の答えを告げる。
『私が居た場所に、そういった方が居ました。そこに居る人たちから〝神子〟と呼ばれていたので間違いないと思います。』
「「「!!」」」
思わぬ情報にフレンやユーリ、レイヴンも身を乗り出して聞いていた。
ともかく情報が欲しい。
フレンたちは突然だが会話に参加することにした。
フレン「どういう人だったか見ていないかい?」
『すみません。その時にはすでに視力が落ちていたもので…。』
フレン「いや、すまない。こちらも気が急いていた。先ほどの不躾な言葉、許してほしい。」
『ふふ、大丈夫ですよ?そこまで視力が落ちたことに悲観しているわけじゃないんです。どうか気に止まないでくださいね?』
ユーリ「ま、絶対治らないわけじゃねえんだ。こいつも気にするだろうし、皆が落ち込むと余計にメルクに心配かけるぞ。」
エステル「そうですよね…!私、絶対治す方法見つけてみせますから!」
手を取り、メルクの手を握ったエステルに笑顔を向けお礼を伝える。
そこへカロルがメルクへと疑問をぶつける。
カロル「そういえばメルクって、確か薬剤師でしょ?なんか目に良い薬とか聞いたことない?」
『…そう言えば、噂に聞いたことがあるのですが…第3界層には珍しい植物が生っていると聞きます。そこへ行けば…或いはあるかもしれませんね?』
カロル「え?!本当?!」
意外にも朗報な情報にカロルやエステルの顔が明るくなる。
他の面々も頷き、目的は一致したようだ。
レイヴン「でもよ?植物博士であるメルクちゃんが居ないとどんな草か分からないんじゃないの?…それに今、メルクちゃんは視力が回復していないのに連れて行くのは酷だと思うぜ?」
ユーリ「おっさんの言う通りだが、俺たちじゃどんな植物か分からないんだ。それに…悪く言うつもりはねえけど、騎士の穴を見つけてあの黒い奴がまたメルクを攫うよりかは連れて行った方がいいと思うぜ?ま、メルクが決める事だけどな?」
一斉に視線はメルクに向けられる。
そこへエステルが援護をする。
エステル「私も…メルクには近くに居て欲しいです。騎士とか云々の話より、純粋に…もっと一緒に居たいんです。それに戦闘の面でも回復薬が二人いれば皆さんも楽だと思いますし。」
リタ「魔術には繊細さが求められるけど、メルクなら大丈夫だと思うわよ?大体目を閉じても魔術を使えるんだから戦闘においては何の問題もないわよ。」
カロル「もし、敵が近くに居たら教えればいいって事?なら、問題はなさそうだよね!」
フレンとレイヴンは心配していたが、メルクが頷いたことでそれ以外言うつもりはないようだ。
視力が悪いメルクを連れ、一行は第3界層へと挑むことにした。
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ユーリ「何だかんだ、メルクとはこうやって旅をすることになったよな。」
エステル「嬉しいです!でも、無理は禁物ですよ!」
エステルとパティに手を繋がれ、歩いているメルク。
視力が悪いので二人の援助で歩いているのだ。
しかし常人ならば視力が悪いと怖がるはずの歩行も、腰が引けることなく普通に歩けているので不思議だ。
だが、やはり視力が悪いというのは本当なので、ちょっとの段差にも躓いたりするので両手を握っている二人の声かけはメルクにはとても大事だった。
『すみません、2人とも。面倒に巻き込んでしまって。』
パティ「気にすることないのじゃ!ウチらは好きでやってるんじゃからの。」
エステル「そうです!メルクは安心して歩いててくださいね!」
『ふふ。ありがとうございます。』
パティ「敬語が元に戻ってるのじゃ。」
『あらあら。本当ね?』
ふふふ、と笑う三人の笑顔に他の者も癒されていく。
視力が悪いにしろ、メルクが笑顔なのだから大丈夫だと思えるのがメルクの魅力であり、彼女の不思議なところだ。
〈
そこにはいつものようにベンが居て、ユーリ達を見てまた声をかける。
「(!!…来たのか。こいつの視力が戻っていないのにか?)お?今度こそ第2界層か?」
カロル「あ…。いや、この間偶然第2界層に行けたんだ。だから今度は第3界層でお願い!」
「ほう!お前たち、どうやったんだ?あの後何しても動かなかったんだが、数日後にはまた開くようになったんだぜ!もうああならないことを祈るけどな。」
カロル「大変だね。ベン達も。」
「分かってくれるかー?!もう本当、色んな所から苦情の嵐でよ?俺たちは案内してるだけだってのによ~?な?お前ら!」
後ろにいる男たちもうんうんと真剣に頷く。
それほど事は重大だったのだろうとカロル達が思うほどには、皆真剣な顔で頷いていた。
「ま、それはさておき。第2界層の踏破おめでとう!ここで祝ってやりてえところだが、お前たち第3界層へ向かうんだろ?俺たちはそれを見送るだけだ!頑張れよ!?」
熱烈な応援を受け、カロルたちは〈
すると自然と門が開き、カロルたちは中へと吸い込まれた。
「……。」
ベンが心配そうにそれをじっと見ていた。
「頑張れよ…。」
もうそこには居ない少女を思いだし、門の向こうの第3界層へと思い馳せた。
あそこは迷いやすかったはずだから、あいつらが何処まで行けるか…。
ベンは一息つくとすぐにまた仕事に戻った。