第2界層 〜恒河沙数たる火蛾の街道〜
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「くそっ…!!」
第2界層から脱出し、町中に居たメルクが見えた途端隣に居た黒づくめに誘拐されてしまった。
追いかけようとしてもその足の速さには敵わない。
結局ユーリ達一行は、どこへ消えたか分からない状態で、メルクを見失う事となる。
カロル「さっきの人って、第2界層にいた人だよね?!何でもうこっちに帰って来れてるの?!」
フレン「…いや、もしかしたら違う黒づくめかも知れない…。〈
パティ「なら、黒づくめの集団って事かの?なら、何故界層にいた黒づくめのやつはメルク姐を殺そうとして、さっきの奴は攫って行ったんじゃ?辻褄が合わないのじゃ。」
カロル「目的が違うとか…?」
ジュディス「ここで話し合っても仕方ないんじゃなくて?一刻も早く彼女を救い出さないと、また危ない目に遭わせられるかもしれないわよ?」
ジュディスの言葉に皆が大きく頷き、肯定した。
あの足の速さでどこまで行っているか分からないが、一刻も早く取り戻さなければ。
リタ「でも…良く考えたら……あいつらの目的がこの門の踏破なら、またここに来て、門の向こうへあの子を押し遣るんじゃない?」
パティ「でも、それまでに安全だという保証もないのじゃ…」
フレン「奴らの目的は…やはり〝神子〟の捜索だろう。この門の何処かにいる〝神子〟の存在が彼らに影響しているとしたら…」
エステル「というより…〝神子〟というのは〈
エステルの疑問に、誰もが「確かに」と言葉を噤んだ。
フレンでさえ黙り込むということはもしかしたら〝神子〟は、この世界のどこかに居るかもしれないのではないだろうか。
ジュディス「それが本当ならメルクの捜索と併せて〝神子〟の捜索をしてもいいかもしれないわね?彼らの目的が〝神子〟であれば、その人も狙われるはずだから。」
レイヴン「何だか…また昔のように事が大きくなってきたな…」
レイヴンが頭を掻きながら呟く。
フレンは先程の指針で良いようで、提案したジュディスに頷いていた。
カロル「ココとロロになんて説明しよう……。折角途中までメルクと一緒だったのに…」
ジュディス「素直に話した方がいいんじゃない?ああいう子供は察知能力が高いわよ?」
リタ「あたしもそれでいいと思うわ。ガキに嘘ついたってしょうがないでしょ。」
リタもジュディスには賛成のようで、腕を組みながらカロルに話していた。
これで決まり、とリタは手を叩くとさっさと宿屋の方へ向かっていく。
皆一応先程まで〈
疲労困憊なのは誰もが感じていた事だったので、リタの後に続き今夜は宿で休むことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
___翌日。
一行は現在の状況をココとロロに伝えるべく、帝都へと向かっていた。
その足取りは少し重めだ。
絶対にメルクを連れて戻ると誓ったばかりだったのに、悲惨な結果になってしまったからだ。
カロル「ココとロロ…残念がるだろうなぁ…」
エステル「誠心誠意伝えれば大丈夫です!……多分…」
ずーんと暗い雰囲気の中、ユーリもメルクの行方を気にかけていた。
皆が心配する中、辿り着いた帝都。
誰ともなく溜息を吐いたのを近くの騎士が見遣り、フレンがいると分かると敬礼をした。
「お疲れ様です!」
フレン「あぁ。ココとロロは何処にいる?」
「現在、客間の方で勉強中です。何でも、褒めてもらいたい女性がいるとの事で勉強を頑張っているようです。」
フレン「そうか…。」
敬礼をしていた騎士にお礼を伝えると、皆で客間へと向かう。
そこには先程騎士が言っていた通り、家庭教師に勉強を教わるココとロロの姿がそこにはあった。
こちらに気付いた2人は笑顔になり、勉強を中断するとこちらへと駆け寄ってきてくれた。
「「おかえりなさい!!」」
フレン「……ただいま、2人とも。」
「あれ?メルクお姉さんは…?」
フレン「……2人とも、よく聞いてくれ。メルクさんは…」
2人に事情を話したフレンとエステル。
ユーリ達はギルドの関係者ということで、2人からは警戒されていたので、話にはなるべく参加せずに見守っていた。
その話を聞いた2人は沈んだ顔を見せたが、何処か浮かない顔もしていた。
「……もしかして、あの黒い人はギルドの人間かもしれません…」
「あぁ、おれもそう思った。」
フレン「?? 詳しく聞かせてくれるかい?」
2人の浮かない顔は何かを考えている顔だったらしい。
フレンが優しく問うと、2人はゆっくりと自分達の考えた仮定を話し始める。
「メルクお姉さんに対してのその執着…、それに、ぼくたちを殺そうとするにしても、あまりにもぼくたちのギルドについて分かりすぎてるんです。」
「外部の人間が一々おれたちみたいな子供を覚えられる訳ねえし、殺す命令だって、名前と顔を覚えてないと出来ないはずだぜ?それにさ。あのギルドにいた子供は100人を超えていたんだぜ?そんなこと出来るかよ。」
「あと一つ……。あのギルドの大人はボスとメルクお姉さんだけって言ったと思うんですけど…、もしかしたら昔いたかもしれないんです。」
いつぞやレイヴンが持っていたギルドの名簿を広げるロロ。
そこには子供たちの名前がビッシリと書かれていたが、ロロが指した名前は生年月日からしても大人の年齢だ。
その名前は……
フレン「……ヴィスキント・ロータス。確かにこの人とギルドマスターだけは年齢が違う…。もしかして、このヴィスキントという人があの黒づくめなのか…?」
エステル「ですが、あの黒づくめの人は私達よりも先にこの世界に戻ってきていますよね?そんな事が可能なんです?」
エステルのその疑問に誰もが口を噤んだが、ココとロロは再び反論した。
「もし、ボスが〝神子〟を探し当てていたら可能なんじゃないですか?」
ユーリ「そりゃまた、何でだ?」
「〝神子〟という存在は、まだよく分かっていません…。もしかしたらその人が界層の途中から出入り出来るとしたら……可能ではないでしょうか?」
「だって、妖精の羽を持ってんだろ?何でも出来そうじゃん。」
フレン「……一理ある、か…」
子供の豊かな発想で驚かされる事になろうとは思いもしなかったユーリ達は、その仮定を否定せず選択肢の1つとして捉える事にした。
ただ、メルクを連れ戻せなかった件は謝っておいた。
でないと、子供達に申し訳なかったからだ。
しかし2人も流石に怒ることは無かった。
事情が事情なだけに、2人も分かっているようだった。
……子供らしい発想をしたかと思えば、大人のような対応を見せる。
フレン「本当、子供というのは凄いね。改めて感じさせられるよ。」
エステル「えぇ。本当ですよね。」
そんな2人の会話にもニカッと子供らしく笑う2人。
この子供達の為にも先ずはメルクを取り返すことが先決だ。
フレン「問題は、メルクさんの誘拐された場所だが……」
ユーリ「情報がそこら辺に転がってれば良いんだがな…。おっさん、なんか情報ないのか?」
レイヴン「流石におっさんでも分かんないものは、分っかんないわよ?」
ユーリ「んだよ。役に立たねえな。」
レイヴン「ちょ、青年ひどーい!」
不満げな声と顔で訴えかけるレイヴンだったが、ふと思い出した様にポンと手を叩いた。
レイヴン「あの宝石の入った宝箱。アレを持っていたらあちらさんから姿を現さないかね?」
カロル「何で?」
レイヴン「考えてもみなさいよ、少年。向こうさんは〝神子〟である〝願い叶える者〟を欲してんのよ?もし〝神子〟が仲間になってるんだとしたら、この宝箱は必要になるんじゃないかなーって思ってさ?」
この宝石の入った宝箱の中には宝石と紙が入っていて、その紙に確かに書かれていたのをレイヴンは覚えていたのだ。
[この宝石を願い叶える者に食べさせるべし。]
これに釣られない人はいない、とレイヴンが豪語する。
まだ未確定の情報が多い中、これだけは確定している情報なのだ。
レイヴンの言葉に賭ける事にしたユーリ達は、噂を流すことにした。
[騎士であるフレン・シーフォが〈
__と。
レイヴンの手にかかればすぐに噂など広まっていく。
それに噂なんて大抵独り歩きするものなので、それに釣られてすぐに相手さんは現れるかもしれない。
だからか、皆期待せずには居られなかった。
ユーリ「(……待ってろよ、メルク。)」
そこに願いを込めた者も近くにいたことを忘れてはならない。