始まりの章
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その事件から早数ヶ月。
政府やギルドで名付けられた〈
その周りには簡易的な街が作られ、冒険者や騎士団の補給場所として賑わいを見せていた。
実際な所、星喰みから人々や世界が救われ、情勢を立て直そうとしている深刻な段階なのに、急にこんなお祭り騒ぎのようなことが起きるものだから皆そちらにかまけるのも無理は無い。
……まぁ、人身被害は甚大ではあるが。
「はぁ……、何がいいんだか。」
ユーリが街中でそう呟く。
隣にいたギルドメンバー達(違う人たちもいるが、もはやいつも一緒なのでもうギルドメンバーなのではないかと囁かれている)がユーリの呟きを聞き、耳を澄ませてみる。
今や民衆の殆どの話題を掻っ攫っている不思議なダンジョン。
それについてだろう、と検討つけたメンバー達は苦笑いを零した。
危険な事に自ら乗り込んでいく気持ちがユーリには分からないらしい。
そう皆が思案している中、一人はそれに対抗する者がいた。
凜々の明星の首領、カロルだ。
「でも、今でもその話題が尽きないってことはさ、やっぱり中に何かあるんだよ!」
「その何かってなんだよ?」
「それが知りたくて皆、潜ってるんじゃん!!」
鼻の下を擦りながら面白そうだ、とカロルが顔を明るくするのは前から変わらない…いや、昔よりは逞しくなったと言うべきか。
それにからかう様な姿勢を見せたユーリ。
「じゃあ、カロル先生はあのゲートに潜りたいんだな?」
「うーん…、正直さ?ボクだって気にならない訳じゃないんだ。でも、ギルドの皆の事を思ったら危険を冒したくはないかなって思ってて。」
ボスとしての裁量を徐々に学びつつあるカロルに皆がジーンと感動する。
ここまでギルドの事を思えるのだ。
きっとこれなら不思議なダンジョンとやらに行くとは言わないはずだ。
ギルドメンバーにエステル、リタ、レイヴン、パティもその場に居たが、誰もがカロルの提案には賛成だった。
せめて少しは安寧が欲しい。
このメンバーなら誰しも思うことだった。
ついこの間まで世界救済の為に奔走させていたのだから。
「でもさ、すっごいよね!最初にあの不思議なダンジョンを踏破したのって、確かギルドの人でしょ?しかも、あのダンジョンには界層があるって発見もしてさ!ロマンを求める冒険者〜って感じ!」
「まるで海賊のようなノリの奴なのじゃ!」
「騎士団も頑張ってはいるみたいですが、やはりそこまで人員を割けないみたいです。」
「そりゃそうだろ。市民にとっちゃ、そんな御伽噺より自分の生活だからな。」
何だかんだ自分たちの話題も〈
「皆、ここに居たのか。」
今や騎士団のお偉方でもあるフレンがユーリ達を訪れていた。
笑顔で接する彼に皆がそれぞれに挨拶を済ませると、フレンはユーリの肩を軽く叩いた。
「カロル君、ちょっとこいつを借りていいかな?」
「うん!いいよ!」
「何だ?デートのお誘いか?」
「気味の悪いことを言わないでくれないか…」
呆れた顔でどこかに向かうフレンの後をユーリが仲間に謝ってから追いかけていく。
暫く歩いたあと、フレンはゆっくりと振り返り急に真面目な顔になった。
それを見てユーリが茶化す。
「何だ?今度は告白でもしてくれんのか?」
「真面目な話だ。」
ユーリの茶化しにも真面目に答えるフレンに、彼の性格を知っているユーリは「はいはい」と素直に聞く体勢になる。
少し言い淀んだ後、フレンはユーリの目をしっかりと見て話し始める。
「一つ頼みたいことがあるんだ。」
「厄介な事じゃねえだろうな?」
「厄介かどうかは君次第だけど…。真面目な話……エステリーゼ様を君達、凜々の明星に暫くの間任せたい。」
「……そりゃまた何で?騎士団が守ってやれよ。その方があのお姫様も安心だと思うぜ?」
「今や騎士団もギルドも協力関係にある。その上君がいるギルドならエステリーゼ様を任せられる。」
「話が見えねえんだが?要は何が言いたいんだ。お前らしくねぇ」
「ふっ。僕らしくない、か。そうかもしれないね。」
ふっと笑ったフレンだったが、表情を引き締め直すと、素直に話し始めた。
「騎士団の方でも今や話題になっている〈
「あぁ、話くらいにはな。……お前、まさか……」
「そのまさかだよ。今度は僕が行くことになったんだ。」
「また騎士団長直々に行くなんて、あそこに何があるってんだ。」
「……まだ他の奴らに知らされてない事がある。あそこには……」
そう言うと口を噤んで一点を見つめるフレン。
そこには俯いているエステルがいた。
こりゃまた一波乱ありそうだ、とユーリが大溜息を吐いた。
このお姫様はほっとけない病を患ってる。
そんな彼女がフレンを一人静かに送り出すとは思えない。
つまり……俺らの出番ということか。
そこまでの思考がいとも簡単に至り、我ながら苦労性体質だなと哀れんでさえいる。
その間にもフレンとエステルの話が進んでおり、ユーリの想像していた通りの展開に陥っている。
静かにことを見守っていたユーリだったが、エステルがユーリを見て言い淀んだのを見て助け舟を出す事にした。
「お前も、エステルの心配性は今の今まででよく分かったろ……」
「だが、エステリーゼ様を危険な所に行かせる訳にはいかない!」
「フレン!一緒ならば何かあっても私が怪我が治せますし、一人で行くのは危険すぎます!」
「他の騎士団の連中は行かねえのか?」
「別の任務に当たってもらうつもりだ。」
「お前までお人好し炸裂させてんじゃねえよ……」
頭をガシガシと掻いたユーリは大きな声でカロル達を呼ぶ。
「ここはボスを通してもらわないと困るんでね?」
「なーにー?ユーリー!」
カロルの後ろから他のメンバーもやってきた事でユーリが今までの経緯を説明する。
するとカロルが口元に手を当て暫く考え込んでしまった。
ジュディスに至っては笑顔で何考えてるか分からないし、おっさんは面倒そうな顔をしている。
「リタはどう思います?」
「あー?あたし?あたしはどっちでもいいわよ?あの〈
「え?!そうだったんですか?!」
急なカミングアウトに全員がリタを見る。
しかし本人はあっけらかんとしており、一つ頷いてみせるだけだった。
「がきんちょがさっきの思想だって分かった時点で一人で行くつもりだったわよー?」
「え?!なんで言ってくれなかったの!?」
「がきんちょが先にそう言ったんでしょうが。あたしは悪くないわよ?」
「……ユーリ…」
エステルが色々含んだ声音でユーリの名前を呼び、頭を抱える。
どうしたって行くことになりそうだ。
「ここは首領に決めてもらおうぜ。」
「え?!ボク?!」
「そうよね?だって、私たちの首領なんだから。」
「……一人はギルドのために、ギルドは一人のために……。うん……決めた。やろう!ユーリ!」
「首領が決めたならしゃあねえな。」
「ふふ。異議なしよ。というより元々請け負うつもりじゃなかったの?あなた。」
「なんの事だ?」
今度はユーリがあっけらかんとした声音でそう話しているが、その口元は笑っている。
また一緒に旅することになって、エステルがリタやラピードに挨拶を交わしている。
そしてフレンを振り返って笑顔で頷いた。
「……仕方、ないですね…」
「お前ももう諦めろ。あそこまで言わせといて無かったことには出来ねえぞ。」
「分かっている。……〈
「行ってみなきゃ分かんねえ事を、いつまでもうだうだ考えるなよな。」
「君も変わらないな。」
「お互い様だ。」
___機は熟した。
凜々の明星も〈
さぁ、物語の幕を開けよう。