第2界層 〜恒河沙数たる火蛾の街道〜
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__第2界層、最終地点手前
「そういえばさ、ここのヌシはなんて名前なの?」
『ここの主ですか?確か〈
「ぐり…、なんだって?」
『〈
ゆっくりと分かりやすいように話してくれるメルクだが、その名前は流石に覚えにくい。
誰もが覚える気なんてないので、いつものようにリタが適当に名前を付ける。
「なっがいわねー!もう、グリモスでいいわよ。」
「それの方が呼びやすいかも……」
「因みに、この界層の名前はなんだったんです?」
『ここは第2界層でしたよね?』
「あぁ、そうだな。」
『第2界層は〈
「なんなの?この界層の名前をつけてる人は頭おかしいの?こんな長い名前つけてくれちゃって。」
リタが悪態を吐く中、ユーリやレイヴンも頷く。
エステルとカロル、フレンだけはそうは思わないようで、界層の名前の意味について深く考えていた。
ジュディスは何処吹く風で街道を見渡しているし、パティはパティでさっさと先へ進んでいこうとする。
マイペースなメンバーが多い中、カロルが疑問を口にした。
「ごうがしゃすう、ってなに?」
『数え切れないほど沢山ある、または沢山いるという意味ですね?』
「火蛾が、街灯に集まる蛾のことだから…。うわ、想像したら本当に気持ち悪い…」
カロルが物凄く嫌そうな顔をしたことで、メルクは何となく彼の虫嫌いを察知した。
ココとロロは虫が大好きでよく持って遊んでいたな、と感慨深くなる。
しかしそんな回想に浸っている暇もないようだ。
大きな羽音が辺りを包んだ。
流石にその聞きなれた音に皆も武器を構え、辺りを見渡す。
そいつはユーリ達の上にいたのだ。
『グリガリオス・モスです!!』
「略してグリモスね!」
リタが詠唱を唱える直前にそう叫ぶ。
カロルは相変わらず悲鳴をあげ、エステルもグリモスのその大きさに驚き、口を押さえ悲鳴を緩和させた。
優に人の倍ある大きさの蛾が自分達の頭上を飛んでいるのだ。エステルの気持ちは誰もが分かった。
その上、見るからに気持ち悪い蛾で、羽からは何か粉のような物が舞っていた。
『皆さん!グリモスの鱗粉に注意して下さい!あの鱗粉は麻痺の効果があります!』
「うげ…。ヤバい奴じゃん!」
「メルク!弱点はなんだ!?」
『奴らは街灯の火に集まっては来ますが、そこは虫なのでやはり火属性に弱いです!!』
「あたしの出番ってわけね!」
リタが嬉しそうに術を発動させる。
そこへ新たな情報を入れる為、メルクが再び声を頑張って張り上げる。
『風属性を使わないで下さいねー!鱗粉が飛んで全滅の可能性があるんですー!』
「メルク?!先に言って!?」
カロルが悲鳴じみた声でメルクに叫ぶ。
その間にもリタが火属性魔術で大活躍していた。
『分身もするので皆さん気を付けてください!』
「「了解!」」
「うぅ…!ボクだって…やってやるんだからぁぁぁ!!!」
必死な形相で戦うカロルに対し、残りのメンバーは普段通りのコンディションで戦っていく。
そこへメルクの支援も加わり、コンディションはバッチリだった。
しかし、主だけあってやはり一筋縄じゃいかない。
グリモスが他の小さな蛾の魔物を呼び寄せると、その小さい蛾の群れで攻撃を仕掛け、その間自分は休んで回復するという奇行を見せた。
「ズルくない?!」
「回復する暇を与えなきゃ良い話でしょ!!」
リタの魔術で小さな蛾達が一掃され、本体を叩く前衛組。
これなら勝機がだいぶ見えてくる。
《シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!》
グリモスから妙な奇声が発せられたかと思えばその本体はどんどんと増えていき、メルクの言っていた分身が始まろうとしていた。
分身を叩いても効果がないのだが、どれが本物か分からないので手当り次第叩くしかない。
「ここはおっさんの出番だわね!」
レイヴンが弓矢で敵を複数狙っていく。
すると分身が次々と消えていき、最終的に本体だけが残る。
そこへ前衛組が本体を叩いていく。
「第1界層よりも楽に勝てそうなのじゃ!!」
「相性が良かったんだろう、なっ!!」
ユーリが攻撃をしながらパティの言葉に答えていく。
確かに第1界層では皆疲労困憊と言った感じではあったが、今回は苦戦を強いられていない気がした。
『•*¨*•.¸¸♬︎.・*’’*・.♬』
「メルク姐の歌もあるし、楽勝なのじゃ!」
嬉しそうにするパティもその他の皆も今回の戦闘は楽だと感じていた。
だから油断していたのだ。
グリモスがその体躯に見合う程の大きな羽を動かすと、辺りに一斉に例の鱗粉が宙に舞っていく。
その鱗粉の標的は……
「くっ…!」
「か、らだが…」
「しししびびれるるのじゃあぁあ…!」
前衛組全員がその鱗粉の餌食となり、エステルとメルクが急いで回復をこなしていく。
しかし、それを見たグリモスは標的を後衛組へと変え、鱗粉を後衛組に撒き散らした。
前衛組の麻痺が回復した途端、後衛組全員が鱗粉でやられてしまうので、前衛組がハッとする。
〈
更に攻撃の要でもあったリタもその鱗粉にやられ、地に伏している状態だ。
「あ、あれ?!これまずくない?!」
「!!」
「メルク!!エステル!!」
ユーリが駆け寄り、声を掛けると痺れで反応が上手く返せないにしろ僅かにでも反応があることに安堵する。
メルクが必死にユーリに視線で何かを訴えかけていた。
『こ、こし…ぱなしー、あ…ぼとる……』
「!!」
強力な痺れから言葉が途切れ途切れではあるが、すぐに察したユーリはメルクの腰にあるポシェットからパナシーアボトルを取り出し、メルクに振りかける。
すぐに回復したメルクは立ち上がり、他の後衛組の状態異常回復に専念した。
「メルク!他の奴らは頼んだ!」
『•*¨*•.¸¸♬︎.・*’’*・.♬(こくり)』
歌で返事が出来ない分、頷くことで了解したことを返事するメルク。
ユーリもそれを見て前線へ復帰し、本体への攻撃と洒落込む。
再び鱗粉を巻き散らそうとするグリモスにカロルが殺虫剤を撒いたことでその行動を中断させた。
「いいぞ!カロル!」
「は、早く倒してよ!!ユーリ!!」
「もう飽きたのじゃ!さっさと倒すのじゃ!」
「皆疲れが溜まっている。早く倒してしまおう!!」
前衛組が声を掛けながら本体を叩いていくと後衛組の回復も終わったようで魔術が飛んでくる。
短いようで長い主討伐もそろそろ終わりを告げようとしていた。
「撃虫ブレス!!」
最後カロルが殺虫剤を撒いて、グリモスは悲鳴をあげながらも倒れていくが、何故か皆は納得がいかない顔をしていた。
呆気ない幕引きだったが、ともかく倒せた事に皆で喜んでいると先程グリモスがいた場所が光り輝く。
そしてメルクは一人その光に包まれ、また別の場所へと飛ばされていた__