第2界層 〜恒河沙数たる火蛾の街道〜
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__〈難攻不落の扉〉前
ユーリ達一行は〈
あの案内人のベンのところまで行けば、彼はこちらに気付いたように手を振り快活な様子を見せる。
「おお!あんたら、第1界層踏破おめでとう!」
「ありがとう!ベンのおじさん!」
「おじさんって…、まあいいや。もしかして第2界層へ挑むつもりかい?」
全員を見てそう話すベンに、カロルが代表して頷いた。
「うん!早く行かないといけなくなってさ!」
「あー…じゃあ運が悪かったな。今第2界層へは行けないんだ。」
「え?!何で?!」
「実は〈
ベンが困った顔をしながら〈
それにカロルも困った顔になり、後ろに居たユーリ達を見る。
「ど、どうしよう…!早く行かないとだめなのに…!」
「一つ聞いていいか?」
「ん?なんだい?」
「瑠璃色の髪と瞳の色をした女性が来なかったか?」
「…いーや?見てねえな。その女性がどうかしたのか?」
「いや、見てないならいい。」
「そうか…。よくわからねえが、早く見つかるといいな!」
一度カロル達はベンから離れ、今後のことを相談しあうことにした。
「どーすんのよ?このままじゃ、いつまで経っても行けないわよ?」
「ユーリ、なんかいい案ない?」
「…今のところ思いつかねえな。」
万事休すかと思われたが、レイヴンが一つ提案をする。
「少年。一旦この町の宿屋に行こうぜ?」
「え?う、うん。」
良く分からない提案に誰もが首を傾げる。
しかしレイヴンの事だから何か策でもあるのかと皆が期待して宿屋へと移動を開始する。
その後ろ姿を睨みつける奴が居るとは知らずに。
*:..。o+◆+o。..:**:..。o+◇+o。..:**:..。o+◆+o。..:*
レイヴンの提案で町の宿屋まで来たユーリたち一行。
部屋を借りるレイヴンに皆が黙って付き従えば、部屋の中に入った途端ベッドに横になった。
「ちょっと!おっさん!なんかいい案が浮かんだんじゃないの?!」
「ん?おっさん、一言もそんなこと言ってねえけど?」
「使えないわねー」
「ちょ、ひどくない?!」
それでも余裕な顔を崩さない辺り、何かあると踏んだユーリは溜息を吐きながらレイヴンに問いただす。
「本当は何か思いついたんだろ?」
「さっすが青年。良く分かったわね。」
「どれくらいの付き合いになると思ってんだ…」
呆れた眼差しでレイヴンを見れば、それもそうかと勢いよく体を起こした。
「夜になったら〈
「え、だって故障中だって…」
「だが試しちゃいないだろ?真昼間じゃ、下手なことは出来ないし?もしかしたらメルクちゃんを第2界層に閉じ込めた犯人がまだこの辺をウロチョロしてるかもしんねえし?」
「なるほどな。やってみる価値はあるかもしれねえな。」
「ベンが嘘をついてるってこと?」
「それかもしくは、知らずに誰かにそう言わされてるか…。」
「ベンは嘘つけないタイプに見えるけどなぁ、ボク。」
「分からないものよ?人って。」
今後の指針が決まったところで夜まで自由行動になったユーリ達は各々探索の準備をしつつ、町の観光を楽しんでいた。
__その日の夜、〈
寝静まる町をこっそりと通り抜け、〈
門へと続く橋を渡り、扉の近くに寄ったが全く反応がない。
本当に故障だったかも、と皆が納得しかけたその時__
「死ね!!!」
後ろから屈強な男が一番後ろに控えていたフレンに武器をかざしていた。
それにすぐ反応したフレンは咄嗟に武器を取り、相手を切りつける。
相手もバカではないようで、すぐにその攻撃をかわし後退すると下卑た声で笑った。
「お前ら、ここは立ち入り禁止だぜ?」
「立ち入り禁止とは聞いてねぇな?」
ユーリがそう話すのを全く聞いていない様子で、男が笑う。
その後ろにも屈強な男が何人も佇んでおり、それぞれ武器を手にしてこちらをニヤニヤと笑いながら近付いてきた。
「悪く思うなよ?お前らを始末するよう言われてるんでな。」
「誰に言われたんだ?そんなくだらないこと。」
「そいつぁ、契約に反するんでな。」
男がそう言うと、再び武器を翳し手当り次第近くにいた者を攻撃していく。
他の男らもこちらへと攻撃するのを見て、ユーリ達も武器を手に取った。
「ほんと、馬鹿ばっかりなんだから!!」
「こっちは急いどるのにじゃ!!」
「急いで片付けるぞ!!」
ユーリの掛け声に全員が返事をし、戦闘が始まる。
屈強そうな男だけあって、その攻撃の重さはかなりキツイ。
普段剣を扱ってるフレンやユーリでもその一撃は重いと感じ、両腕で支えるほど。
「くっ…!この、馬鹿力がっ…!」
「そんな細腕じゃあ、勝てねえぞ!!」
一度体勢を立て直す為に、武器を払い、大きく後退するがすぐに追いついてきて武器を振りかざす。
パワーだけでなく、割と速さもあるらしい。
暫く一進一退の攻防が繰り広げられていたが、どうやら優勢はユーリ達である。
「くそっ、一旦引くぞ!」
「「「おう!!」」」
屈強な男らが逃げていく中、誰も追うことはしなかった。
今はそれよりも〈
「どうやって開くんだろ!?」
「あいつら、立ち入り禁止っつってたよな?ってことは誰かが俺達を中に入らせねぇようにしてるっつー事だな。しかし、何とかして開けねえとな…!」
「故障じゃないと信じたいのじゃ!!」
門の前に立つ皆は願う様に、祈る様に門に願う。
どうか、第2界層への扉を開いて!
その願いが叶ったか、扉が音を立てゆっくりと開かれた。
そして皆の体は門の中に吸い込まれるようにしてこの世界から消えていった。
「……何故だ。…何故、門が開いた……?」
ヴィスキントが唖然と門を見る。
門の管理は自分しか行えなかった。
なのに、何故?
例の文献にも書かれていない出来事に、隠そうともせず舌打ちをすると、ヴィスキントはその場を後にした。
こうなれば、あの少女に作戦変更だと伝えねばならない。
「チッ…!面倒な仕事だな…!」
以前とは違う口調で言い放つ彼の顔は焦燥感に滲んでいた。