第2界層 〜恒河沙数たる火蛾の街道〜
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__ギルド〈怪鴟と残花〉ギルドホーム内
ユーリ達は少年2人を連れ、翌日に例のギルドホームへと来ていた。
緊張を孕んだ少年2人は自分たちのギルドホームでもある建物を前に、立ち尽くしていた。
「ここだよ……。おれたちのギルドホーム。」
「メルクお姉さん…、無事かな…?」
「この中は本当に迷路のような構造になってるから、おっさんマジで焦ったぜ…。まるで侵入者が来るのが端から分かってる造りだな。」
レイヴンが頭の後ろで手をやりながら、ホームを見上げそう話す。
中を捜索したのはレイヴンだけでなく、他のギルドの奴等も手伝ってくれた。だからこそ、こんなにも早く手を打てたのだが、その仲間達も苦戦したくらいだ。
最奥までは中々たどり着けないだろう。
「つーか、自分ところのギルドメンバーを襲うなんて物騒なギルドだな。」
「ボスは子供という子供を各地から攫ってるんです。ギルドの中では自分が偉い、と子供達に言い聞かせては洗脳していって、自分の言うことを聞くよう指示するんです…。」
「馬鹿だよなー。そんなんで洗脳されてる奴なんていないのによ。」
生意気な少年ココは睨みつけるようにギルドホームを見て、穏やかな少年ロロは怯えるようにギルドホームを見ていた。
「そう聞くと、もう闇ギルドだな。」
「誰も幸せになれないのに、どうしてそんな事してるんだろ…。それにメルクは子供達の夢のために、って言ってたのに…」
「メルクはギルドの中の実情を知らなかったんだろうな。」
「メルク姉はこのギルドの汚さを全く知らないよ。純粋な人だから…。だから、あいつに狙われるんだよ…!」
「ボスはメルクだけは目にかけていたから、余計にだと思います。」
「さっきの黒い人は?」
カロルが言っているのは恐らくココとロロが追いかけられていたあの黒づくめの人の事だろう。
それにココもロロも顔を歪ませ、首を横に振る。
「要らなくなった子供や、おれたちみたいな色々と勘づいている子供には死神が来るって聞いたことがあったけど、まさか本当にいたなんて思わないだろ…」
「ぼくも、あの人は初めて見ました。なので、誰かは分からないんです。ギルドの大人たちと言えば、ボスとメルクお姉さんだけでしたから。」
「てっきりあいつに直接殺されると思ってたからビックリしたよ。」
ココの言う"あいつ"はギルドマスターの事だ。
どうも彼の性格上、ギルドマスターとも、ボスとも呼びたくないらしい。
しかし、余計に不思議だ。
何故このギルドは子供を攫ってきたのだろう。
そして、なぜ殺していくのか。
何故メルクだけは殺されず、閉じ込められているのか。
このギルドの目的は…?
「そういえばフレン。騎士団がわざわざギルドの子供を保護するなんて今まで無かっただろ?なんか知ってんじゃないのか?」
「そうだね…。だが、ここでは話せない。誰が聞いてるか分からないからね。メルクさんを助け出してから帝都に行こう。そこで全てを話すよ。僕が態々〈
「じゃあ余計に早く行こうぜ!こんな所で油売ってる暇ねえよ!」
少年ココが口だけは勢いが良いものの、入るときになれば恐る恐るだが中へと入っていく。
そこへ続くようにユーリたち一行も気を引き締め、中へと入っていく。
しかし、中に入るとすぐに暗く長い廊下が彼らを待ち受ける。
あまりの視界の悪さにリタやエステル、女性陣から苦情が来る。
「これでは見えませんね…」
「ちょっと。明かりも無いの?このギルド。」
「これじゃ前が見えないわ。どこにスイッチがあるのかしら?」
少年たちがそれに首を横に振る。
「ここはいつもこんな感じなんだよ。どうせ、こんなところにお金なんて裂けないんだろ?」
「いつも金不足ですから…」
「じゃあメルクの研究費は本当に奇跡的に出てたんだな。」
歩きながらこのギルドについて話していると分かれ道に出てしまい、皆が立ち止まろうとしたが少年たちは迷うことなく左へと向かっていく。
先導され、そのまま進んでいくとまたすぐに分かれ道。
すると今度は右へと入っていく少年たち。その歩みは全くと言う程迷いがない。
その後も何度も分かれ道に当たり、その度に少年たちが先導して進んでいくが左右に次々と少年たちが迷いなく入っていくので、いつも地図担当をしていたカロルも流石に頭で覚えきれなくなってしまう。
レイヴンも大変だと言っていた意味がようやくここで分かるようだった。
「後どれ位で着くんだ?」
「まだまだだよ。あいつの部屋に行こうと思ったらあと15分はかかると思った方がいいよ。」
「このギルドの構造上、周り回ってるんです。だから最奥までは長いんです。」
「こりゃ、本当に侵入者対策だな。よく道なんて覚えられるな。」
「ここで覚えなきゃ、あいつらに一矢報いれないじゃん!」
その話をしながらも、次々と右へ左へと入っていく。
どうもこの少年たちにはこの道は簡単らしい。
15分かかると言っていた道案内も、あっという間に着いてしまった。
「……ここだよ。メルク姉が閉じ込められてる場所。」
「ボスの…自室です……。」
確かに少年たちの言う通り、他の扉よりは豪華で、且つその扉には頑丈な錠前がついている。それも複数だ。
道中で鍵とか見つけていないがどうしよう、と少年二人が顔を見合わせるが、他のメンバーの視線は惜しみなくカロルに注がれていた。
カロルは皆の視線を受け最初険しい顔を見せたが、錠前の前に来るとお得意のピッキングを始めた。
少年たちもそれを見てごくりと生唾を飲み込む。
どうか、開いてくれと。
「ん~、他にもたくさんあるからちょっと時間かかりそう。」
作業は止めずにそう話すカロル。
しかし、既に一個の錠前はピッキング完了済みである。なんと手早いことか。
しかし、その横を見ると何個も何個も錠前がついており、厳重に鍵がかかっている。
明らかに中に大切なものを隠しているといった感じが伝わってくる。
やはりこの中にメルクは捕らえられているのだろう。
__ピッキング開始から数十分後。
「終わった!」
「でかしたぞ、カロル!」
ユーリに褒められ嬉しそうに笑うカロル。
ユーリは扉に耳を当て慎重に中の様子を探る。
しかし、中は物音ひとつ聞こえない。
不気味なほど静かなその様子の中にユーリには一抹の不安がよぎった。
「……(音がしない…?まさか、)」
バッと開けた扉の中はユーリの予想通り、もぬけの殻だった。
それに後ろから様子を見ていた他の面々も息を呑む。
少年たちも顔を真っ青にさせ、更に奥の扉を開け放った。
その場所は豪華なソファや机などが置いてあることから、ギルドマスターの仕事部屋のように見える。
しかしそこにもメルクの姿はなく、ギルドマスターの姿も既になかった。
「逃げられた!!」
「そんな!メルクお姉さん…!」
「どこに連れて行かれたか、予想着くか?」
「……もしかしたら、第2界層かも…」
ロロの言葉にユーリたちは目を見開く。
何故、こんな状態で第2界層へ…?
皆のその疑問に答える様に、ロロがユーリたちを見て説明する。
「ボス、異様にあの門の踏破を気にしてたんです。だからこそ、メルクお姉さんに界層突破を頼んでたんだと思います。」
「そういえば言ってたかもな。…あんまり覚えてないけど。」
「だから…多分今頃第2界層へ連れて行かれてるかも…」
「行き違いになったか…。」
「だったら、早く行かないと!!第1界層であの強さだったのに一人じゃ無理じゃない?!」
次の目的地は決まった。
だが、この少年たちをまずは帝都に送らなければならない。
ユーリたちはフレンの話も聞くために、メルクを心配しながらも一度帝都へと向かうことにした。