第1界層 〜変幻自在なる翻弄の海〜
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__第1界層踏破してから3日後
「はぁ、はぁ、はぁ…!」
「止まっちゃダメだ!!追いつかれるっ!!」
子供二人がエフミドの丘の獣道を何かに追われる様に必死になって走っている。
宛もなく走っている子供二人だが、このままではその何者かに追いつかれそうだ。
もうダメだ、と子供二人が諦めそうになった時、二人に光明が見える。
……人だ!
その人達目掛けて走っていき、子供二人は声を大にして叫んだ。
「助けてっ!!!」
「お願いしますっ!!」
その人達は、凛々の明星の面々だった。
いつもの面子にレイヴンとフレンが居ないだけの大人数のいつものパーティ。
その人たちに助けを求めた子供達。
すぐさまユーリ達が反応すると、子供の後ろにいた全身黒づくめの人を確認する。
「え?え?!なになに?!」
「はっきり分かる事は、コイツらがやべぇ奴に追われてるって事だ!」
ユーリが黒づくめの人へと攻撃するとひらりと躱される。
その身のこなしから、かなりの手練だと分かり、ユーリが舌打ちをする。
子供が近くにいたエステルへと飛び付き、後ろへと隠れる。
「そいつっ、おれたちを殺そうとしてるんだ!!」
「追われてるんです…!」
「悪い人は成敗ですっ!!」
エステルも武器を持つと他の面々も武器を持ち威嚇する。
それを見た黒づくめの人は勝ち目がないと判断したのかすぐに姿を消した。
呼吸を整える子供たちをエステルが心配し、2人の背中を摩る。
「2人とも、大丈夫ですか?」
「ありがとうございます、お姉さん」
「あー、助かった……」
安心した子供たちは安堵のあまり、その場に座り込んだ。
そこへユーリが事情を聞こうと子供達に声を掛ける。
「何でまたあんな物騒な奴に追われてたんだ?」
「わっかんないよ。いきなり殺されそうになって、逃げてきたんだからさ。」
「ココ!大変だよ!?ぼく達、逃げてきたからお姉さんが助けられないよ!」
「あ!!そうじゃん!!」
何の話だか、とユーリ達が頭を悩ませているとココと呼ばれた少年がユーリに向かうとその場で土下座した。
「たのむっ!!おれたちを助けてくれ!」
それを聞いて隣の穏やかそうな少年も隣に土下座をする。
「お願いしますっ!!助けてください!!何でもしますから!!」
「いや、何でもするって言ってもな…。どうすんだ、カロル?」
「え?!ボク?!」
「そりゃあ、うちのギルドのボスだからなー?」
「ギルド…!?」
ギルドという言葉に反応を示す子供二人。
その顔は驚きと恐怖心と、疑心が入り交じった顔だった。
「ギルドなら…いい…!!」
「ココ!!?」
立ち上がりその場に俯くと拳を作り、怒りを表すココと呼ばれた少年。
それに慌てて隣の穏やかそうな少年が、先程の彼の発言を取り消そうとココの肩を揺する。
「ダメだよ!?ここで二人だけになったらお姉さんを助けられなくなる!!」
「分かってるよ!!!でも…!ギルドのヤツらに頼みたくなんかないっ!!!」
大声で言い切ったココに、カロルやエステルが困惑の表情を浮かべる。
ジュディスはどうするの?とユーリへと視線を向け、反応を待つ。
暫く考えていたユーリだったが、とある方向へ視線をやると、そこへ珍しい組み合わせの2人がやってきた。
「ギルド〈怪鴟と残花〉の子供たちだな?」
「良かった…!間に合ったみたいで…!」
レイヴンとフレンがユーリ達と合流し、子供達を見て安堵の息を吐いた。
そして、フレンが少年達の前に片膝をつき、視線を合わせる。
「ギルド〈怪鴟と残花〉にいた子供たちの生き残りだね?僕達騎士団が、君達の保護をすることになったんだ。」
「ホントか?!騎士の格好してるけど、実はギルドの奴らとかじゃねえよな?!」
「大丈夫だ、安心してくれ。君達は僕達騎士団が必ず守る。だから僕と一緒に帝都に行ってはくれないかい?」
「ああ!分かった!!」
「お願いします!!」
子供たちがフレンに目を輝かせ着いて行くことを決心する中、レイヴンはユーリ達へと話し掛けていた。
「随分と早い調べだな?おっさん。」
「いやー、これでも苦労したのよー?あいつらのアジトの中ったら迷路なんだから!……ま、そんなことはさて置いて……これを見てみな?」
急に真面目な顔になったレイヴンはユーリに数枚の紙を渡す。
そこには沢山の名前が書かれており、同時に殆どの名前には斜線が引かれていた。
「で、これが何だって?」
「ギルド〈怪鴟と残花〉にあった、ギルドメンバーの名簿の写しだ。詳しく調べて見ると、その斜線が引いてある奴は行方不明者扱いにされていた。」
ペラペラと捲る中、カロルやリタ達もその名簿を覗き込む。
そして彼らは信じられないものを目にする事になる。
「……メルク・アルストロメリア…!何で、メルクの名前に斜線が引いてあるんだ…?」
「え?!だってメルクは第1界層踏破した後、ギルドに戻って行ったはずなのに!!」
「その行方不明者なんだが……実は全員、何者かに殺されてるんだ。」
「「「「え?/は?」」」」
レイヴンが暗い声でそう話す。
それに全員の目の前が真っ暗になるようだった。
メルクが死んだ……?
その事実に誰もが信じられない気持ちでその名簿を見つめる。
それにこの斜線の数……半端ない数だ。
こんなにも死亡者がいるなんて、誰が信じられるのだ。
「そんな…!!また会おうって言ってたのに…。」
「その名簿見せて。」
先程ココと呼ばれていた生意気な少年が手を出して催促をしてくる。
ユーリはその少年に紙を渡すと、ココはその名簿に目を通した。
「……」
しばらく見ていた少年だったが、隣の穏やかそうな少年の顔を見ると大きく頷いた。
「これ、確かに死亡者リストだ。だけど、メルク姉は死んでない!!メルク姉はあいつに監禁されてるんだ!!」
「「「「監禁?!」」」」
これまた大きな話になってきた。
流石にフレンも看過出来ず、その名簿を覗き込むと斜線の多さからか顔を途端に顰めた。
「メルクお姉さんはギルドマスターに捕まってます…!確かにぼくたち、見たんです!!ギルドマスターの部屋に連れていかれるメルクお姉さんを!!」
「こりゃあ、大変な事になってきたな…」
「ど、どうするの?!ユーリ!」
「決まってるだろ。カロル先生?」
「助けに行くに決まってんでしょ!!!メルクの術はまだ色々と見せてもらってないのよ!?こんな所で死んでもらったら困るのよ!!」
リタが少年の前に仁王立ちして、圧をかける。
「早くそこへ連れてって」
「待ってくれ。彼らは騎士団の保護対象だ。それにまたあの場所へ連れて行けば、彼らが危ないんだ。」
「「……」」
少年2人はお互いの顔を見合わせ、どうするか迷っているようだった。
少年2人にとって、メルクは大事なお姉さんで家族とも呼べる大切な存在。
優しい微笑みでいつも接してくれて、励ましてくれて、元気をくれて、大切にしてくれて…。
決して蔑ろに出来るような存在じゃない事は重々承知の上だった。
だから彼らの目は決意を抱く。
「ボスの部屋は複数の鍵がかけられていて一筋縄じゃいきません。」
「ギルドの中も侵入者対策用に迷路になってる。おれたちなら案内出来る!メルク姉を助けてくれるならおれたち、何だってやるぜ!」
2人はお互いを見て大きく頷くとリタ達を見据えた。
「「メルク姉を助けて!/メルクお姉さんを助けて!」」
次への物語が開かれる。
それは別れの道か、それとも再会への道か。
物語は紡がれていく。
それは破滅の道か、救いへの道か。
噛み合わない歯車がカチリと音をたて嵌ってくれることを願い、君達は先へと進む。
果たして、君達はどんな未来を見せてくれる?
第1界層〜変幻自在なる翻弄の海〜
終幕
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