第7界層 〜永久不変たる薄霧の鍾乳洞〜
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アビゴール様に会えたその日、リコリスさんに抱き枕代わりにされてしまい、そのまま寝てしまわれたので暫くそのまま抱き締められていたのだが、中々起きそうになくどうしたものかと思っていた。
そんな時、ユーリがやってきてあの〈
起きたリコリスさんからはお礼を言われて、〈
ただ、ユーリと二人だけかと思っていたが、他の皆も一緒に行ってくれるようで〈
カロル「よし、行こう!」
リタ「興味あるわね。その本とやらが沢山ある図書館に。」
エステル「ええ!私もワクワクしています!」
ユーリ「はしゃぐのはいいが、魔物が居る事忘れるなよー?」
ユーリが海風から私を守りながらエステル達に話しかける。
私もユーリに必死にしがみつきながらそれを見届けていた。
ジュディス「魔物なら任せて欲しいわね。」
レイヴン「ひゅー。頼りになるねー、ジュディスちゃん。」
パティ「ま、戦闘組と読書組に完全に分かれそうなのじゃ…。」
カロル「レイヴンはどっち側?」
レイヴン「俺様は勿論、読書側───」
リタ「嘘おっしゃい。アンタは完全に向こう側でしょうが。」
エステル「カロルはどっち側なんです?」
カロル「僕は本が気になるし、読書側に回ろうかなって思ってるよ!」
ジュディス「でも、言語が複雑なんでしょう?そんなの、私たちが読めるのかしら?」
そんな話をしている間、ユーリが歩き出した為に少女も歩き出さなければならず、二人はそのまま〈
それに合わせて仲間達も後ろから付いてきていたのを確認したユーリは、少女に向かって大きく頷いた。
少女はユーリを見上げ、そして〈
『……"図書館"への扉、開き給え…。』
少女がそう呟くと、扉が反応し
仲間たちはまだ見ぬ図書館にそれぞれ思いを馳せながら扉を潜っていった。
カロル「うわぁ…。」
レイヴン「こりゃあ、すごいけど…。」
ジュディス「あまりの本の数と高さに眩暈がしそうね。」
全員が見上げる本棚の数は無数にあり、そしてその高さも果てしない。
本や蔵書が不可思議に所々浮かんでいるさまは、誰もを不思議な気持ちさせた。
少女が初めの一歩を踏み出し本を探す中、他の仲間たちは圧倒的なその空間に暫く呆然としていたのだった。
『(勇者の本…。あるかしら…?)』
目的の本を探す少女を余所に、仲間たちは口々にこの図書館の不思議について話し合っていた。
そして流石に少女を手伝おうと読書組が動き出した頃に、戦闘組も戦闘の準備を始めた。
ユーリ「よし、鍵を探すか。」
パティ「何色の鍵なんじゃ?」
ユーリ「十数個鍵が必要なはずだぞ?あの扉の数ほど鍵を集めないといけないしな。」
そう言って振り返った戦闘組だったが、その入ってきた扉の鍵穴の数に目を点にさせる。
以前は十数個だったそれが、今回は無数にあったからだ。
それも扉の上の方までびっしりと…、だ。
「「「……。」」」
レイヴン「…え、本当にこんなに探すわけ?」
ジュディス「あら、上等じゃない。それほど戦闘をしていいって事でしょ?」
パティ「それにしても限度というものがあるのじゃ…。」
ラピード「クゥーン…。」
ユーリ「おいおい…。これは想像以上だぞ…。」
戦闘組言葉を失う中、読書組からも叫び声が聞こえてくる。
どうやら向こうも思うようにいかないようだ。
リタ「ちょっと!これなんの言語なのよ?!」
エステル「古代文字…とも違いそうですし…。でも、メルクはこれが読めているんですね?」
フレン「流石にお役に立てそうにありませんね。」
カロル「うーん、でもこういうのって大体法則とかあるんだよね?メルクに教わって何とか読める様にならないかな?」
リタ「それじゃあ、時間がかかるわよ。」
少女を振り返ってみれば、難なく読めているようで横文字を追っていっているような視線の動かし方をしている。
しかし折角別れた読書組も何にもせずにそのままにする訳にもいかない為、翻訳や辞書などに関する本がこの広大な図書館に無いか全員で探しにかかる。
時々ふわりと浮かんでみては、この不可思議な図書館の本をくまなく探してみたり、浮かんでいる本を手に取って読めそうな部分がないか探してみたりする。
リタ「……あぁもうっ!全然ないじゃない!」
カロル「これなら僕達も戦闘組に加わった方が良さそう…。だってあの鍵穴の数だけ鍵を探さないといけないんでしょ…?」
カロルが指差す方向には例の大きな扉があり、そこには無数の鍵穴がびっしりとあった。
エステルもそのあまりの鍵穴の数に身震いをしている。
フレンは扉の上の方まで確認をしていた。
フレン「…ざっと100はありそうですね…。」
カロル「ユーリが言ってたけど、確かあの鍵ってレアアイテムらしくて、中々モンスターから出ないらしいんだ。」
フレン「それなら僕も戦闘に加わろう。」
カロル「メルクには悪いけど僕もそうするよ…。流石になにも分からないだけじゃ申し訳ないしね。」
エステル「リタはどうします?」
リタ「アタシはもう少し探ってみるわよ。あの子だけじゃこの数の蔵書は日が暮れるでしょ?あんなに戦闘員がいるならもういらないわよ。」
エステル「はい。そうですね…。では、私も手伝います。」
そう言ってリタとエステルは本棚に向かっていき、カロルとフレンも戦闘組と合流することになった。
そんな中、少女は目的の本を見つけ読書を開始していた。
『…。(これが、"勇者"の本…。)』
そこにはユグドラシルが言っていたように勇者の事について書かれていた。
しかし、そこに書かれていたのは少女の思っていたものでは無かった。
『("勇者"は神子の対となる存在…。〈
沈黙し、ただ本を読みふける少女。
周りでは戦闘音が繰り出されているにも関わらず、それに気付いた様子はない。
それほど集中していたようだ。
『("勇者"は神子から力を貰い、その力を揮う事が出来る。……ここまでは、本当にユーリと同じ現象…。でも……)』
少女は一旦本から目を離す。
そして周りを見ると、所々戦闘音が目立っていることからこの図書館のあちらこちらで戦闘が行われていることが分かる。
どうやら鍵集めは順調なようで、仲間達の喜ぶ声が聞こえてくる。
それに微笑んだ少女は再び本へ目を落とした。
『(…"勇者"には、神子と同じ七色に輝く妖精の羽根が出現する。それを以って、その者を神子の"勇者"と呼ぶことが出来る……。これ、ユーリには当てはまらないわ…?でも、力を揮うことは出来る……。どういうこと…?他に勇者が居るって言う事…?)』
折角調べものをしているというのに、余計に新たな謎を呼んだだけだ。
少女は一度ユーリを見つけると、ユーリがこちらに気付き何かあったのか、と首を僅かに傾げさせていた。
それに少女が笑顔で首を横に振ると、ユーリはまた鍵集めに戻って行った。
『(これは…ユーリに言うべきじゃない…。もしこれが本当なら、彼を……苦しめるだけだから…。)』
もし本の事が本当なら、神子を護る勇者は…神子が使命を完遂するまで守らなければならない存在になってしまう。
死ぬと分かっている神子を護る……という立場になってしまう。
それにその神子を護るという事自体も、きっと想像以上に大変なものだと思う。
そんな悲しく、恐ろしい話をユーリにして、どうするというの…?
首を振った少女は再び本の続きを読み始める。
『(……副作用のことは…書かれてない…。やっぱり、ユーリは神子を護る勇者ではないのかもしれないわ…。でも出来るなら話さないでおこう。もし本当に勇者だった時に…ユーリを苦しめたくはないから…。)』
ついでに神子の副作用についても調べてみてもいいかもしれない。
そう思って勇者についての本を閉じると、大分鍵穴に色とりどりの鍵が刺さっているのが確認出来る。
…もうそろそろ潮時なのかもしれない。
勇者の本を持ち帰る事にして、副作用についての本を探し回っていると、血気盛んに鍵を探すユーリ達の魔の手から逃れる様に魔物が何体もこちらに駆け込んでくる。
そしてそれを追いかけるように後ろからユーリ達がやってきていた。
あっという間に倒されていく魔物を見て、苦笑いをした少女だったがユーリ達はすぐに次の魔物へと取り掛かっていき忙しそうである。
邪魔をしない様にと隅に寄り、目当ての本を探し出す。
すると何処からともなく音がする。
ガタガタ…!
それに気付いた少女は本を探す手を止め、音のする方へと近寄る。
するとそこには、大きな宝箱が置かれていた。
しかも、それはガタガタと上下左右に動いており、質素な見ために反してその見た目以上に不気味で気持ちが悪い。
少女は周りを見渡してみる。
しかし、ユーリ達は別の場所で魔物狩りをしているのか近くにはいないようだ。
恐る恐るその宝箱へと手を伸ばす少女。
すると───
『きゃあぁぁ!!!?』
その宝箱はミミックだった。
少女を飲み込もうとその宝箱を大きく開き、鋭い歯を見せる。
長い舌を宝箱から存分に出しては、少女をその長い舌で絡めとろうとするので少女は思わず悲鳴を上げてしまったのだ。
…いつぞやの事を思い出して。
少女の悲鳴に仲間達が慌てて少女の元に駆けつける。
そしてミミックを見て、それぞれ武器を手にした。
ユーリ「メルク!! 下がってろ!!」
『ユーリ…!』
エステル「メルク!大丈夫です?!」
『はい…!』
仲間達がミミックに果敢に挑む中、エステルは少女へと回復を使い、回復させていた。
傷ついてはいなかったが、それでもその優しさに少女はエステルへと惜しみなくお礼を伝える。
リタ「こんな魔物が居たのね。倒したらなんかお金とかたくさん入ってそうね。」
リタは魔術を使わず、皆が戦っているのを見ているだけだった。
どうやら魔術を使えば周りの蔵書などに被害が行くことを懸念しているらしかった。
エステルもユーリ達の戦闘を観戦しているだけで、わざわざ戦いには行こうとしなかった。
『驚きました…。世の中にはあんな魔物も居るんですね…?』
エステル「私も初めて見ました。」
リタ「アタシもよ。あんなのあったら、今後宝箱開ける時に躊躇するじゃない。最悪よ…。」
ミミックを見て顔を顰めさせたリタは、ユーリ達が倒すのを待っていた。
そしてカロルが最後のとどめをさし、ミミックが消えるかと思いきや宝箱だけ残った状態で中からは無数の…それも色とりどりの鍵が次々と溢れてくる。
その綺麗な光景に誰からも感嘆の声が上がっていき、湧き出る鍵を一生懸命かき集めていた。
パティ「これでもう魔物を倒す必要は無いのじゃ!」
カロル「こう言っちゃなんだけど、メルクのお手柄だね!メルクが居なかったら、こいつの存在に気付かず永遠に鍵を集めることになってただろうし。」
レイヴン「それは勘弁よー?」
ジュディス「あら、もう終わりなの?つまらないわね。」
レイヴン「ジュディスちゃん…。」
正反対の事をいう二人に仲間たちは笑う。
少女もまた、そんな仲間達を見て笑みをこぼす。
そして全員の視線が少女に集まっていく。
ユーリ「んで?良い情報は集まったのか?」
『まだ物足りませんが…、こうして鍵も集まりましたし、一度戻りましょうか。』
カロル「賛成~!」
パティ「ちょっと小休憩なのじゃ。」
リタ「でもまた来る方が大変なんじゃない?今度は何個いるか分からないわよ?」
レイヴン「人数によってあの鍵穴が変わるんなら良いけど…、流石に一人で来ようとは思わないわね…。」
沢山の鍵を持った子供組を見て、ユーリ達は動き出す。
その方向は、あの大きな扉の待つ方面だ。
それぞれが鍵穴に一つ一つ鍵を差し込み、そして扉が開かれる。
全員が吸い込まれるようにして扉の中へと引きこまれたのだった。
____〈
リタ「で、収穫は無かったけど。これからどうすんの?」
『収穫は無かったにしろ、〈
レイヴン「迷惑じゃないって。寧ろ、頼ってくれた方がおっさんたちは何倍も嬉しいけどなぁ?」
パティ「うむうむ…。おっさんの言う通りなのじゃ。自分を責める事はないぞ?メルク姐。」
エステル「どちらにせよ、挑戦はしないといけませんから。それは誰も分かっていることですし、メルクが気にすることは無いんですよ?」
ユーリ「そういうこった。で、いつ挑戦するんだ?」
『ヴィスキント様に話を伺ってからにします。そうしたら、第8界層へ行きましょう。』
「「「おー!」」」
仲間達が意気揚々と手を上げる中、少女は〈
その瞳には、決意と………少しの揺らぎがあった。
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