第7界層 〜永久不変たる薄霧の鍾乳洞〜
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〈
少女は未だ眠りから覚めておらず、主との戦闘時少女をどうするかを作戦会議することになった。
大体は端に置いて、戦闘が終わるまで安全にしておくのが一番だが…。
ヴィスキント「……却下です。」
カロル「ええ?! 何で?!」
ヴィスキント「ここの主はそう簡単に勝てませんよ。今の状態の彼女を連れて行けば、こちらが不利になること間違いなし。そして生存確率も低くなるでしょうね。」
ジュディス「それで?ここの主はいったいどんなのかしら?」
ヴィスキント「ここの主の名前は〈
レイヴン「え?なんだって?」
ヴィスキント「ですから、〈
ユーリ「長っ…。」
相変わらず長い名前に仲間達が呆れかえる中、カロルは主の情報について聞き出す。
カロル「どんな魔物なの?」
ヴィスキント「名前の通りですが…吸血行動をしてくる魔物だと思っていた方がいいですね。まるで時が止まったように永遠に血を吸い続けるんですよ。その主は。」
レイヴン「だから永久不変、なんて言葉がついちゃってるのねー…?」
ヴィスキント「一度吸われたら死ぬと思いなさい。…助ける事はほぼ不可能です。奴は、かなり体力馬鹿ですから幾ら私たちが攻撃した所で吸血行動は止まりません。人間の血を吸いつくすまで抱き着いて離れませんから、ご注意を。」
リタ「もういや…。もうそういう奴ばっかり…。」
フレン「見た目はどんなのですか?」
ヴィスキント「見た目は大きなコウモリです。ですが、その大きさは簡単にひと一人くらいは羽で閉じ込める事が出来る大きさでしょうね。抱き着かれたことがないので目測ですが。」
レイヴン「あんさんって…見た目に反して強いわよね…?」
ヴィスキント「あなた方とやっている事が違いますので。」
ふん、と見下すような態度を取るヴィスキントに仲間達からは苦情が来る。
それに涼しい顔をして受け入れたヴィスキントは、持ち物の確認をし始めた。
先程のキラーモンスターで大分道具を消費した。……これが悪い結果とならなければいいが……。
カロル「ベン、主の弱点は?」
ヴィスキント「奴は光属性に極端に弱いです。本当なら奴に閃光弾を投げつけるつもりでしたが…まぁいいでしょう。」
レイヴン「つーか、あのナメクジ倒せるわけ?信じられないんだけど…。」
ヴィスキント「倒せないからキラーモンスターなんて呼ばれているのでは?」
ユーリ「まぁ、メルクの力を使ってもようやく…って感じだったしな…?」
ヴィスキント「寧ろ、あの力はどうなっているんですか。見たことも聞いたこともない…。」
ユーリ「俺が知るかよ。急に使える様になったんだからよ。」
ヴィスキント「……という事は彼女も知らなさそうですね。……あの力とその剣…、一体どんな関係が…?」
考え出すヴィスキントを余所に、エステルとフレンは同じ光属性持ちなのでお互いに士気を上げていた。
後は少女が起きるのを待つだけだが…。
パティ「起きないのじゃ…。」
フレン「でも、流石に先ほどの説明を聞いて、彼女のこの状態で行くのは得策ではない気がするね?」
ユーリ「一番先に狙われそうだしな。」
カロル「コウモリかぁ…。」
リタ「っていうか寝たなら、何日間も寝るんじゃないの?」
「「「…。」」」
確かに…、と誰かが呟き、全員の顔が曇っていく。
流石に何日間もここで待機は難しいが…。
カロル「ねえ、一つ思ったんだけどさ?」
パティ「なんじゃ?」
カロル「ユーリ達ってキラーモンスターを倒した時にあの力を使ったって言ってたじゃん?その時は大丈夫だったの?」
ユーリ「……そういえば、お互いに全然大丈夫そうな顔してたな?」
レイヴン「考えられるとしたら、この〈
ユーリ「…条件?」
カロル「問題ないならさ、直前にその力でメルクを起こせば有利に事が運ぶと思うんだ。でも、無理そうなら諦めようと思って。二人に苦しんでほしくないしね!」
ユーリ「カロル…。」
カロルや仲間達の優しさにユーリが笑って頷く。
確かにやりたくはないが、カロルやレイヴンの言葉も引っかかる。
何故、あの時は痛みや苦しさを感じなかったのだろう?
必死になっていたからか?それともやはり、〈
或いは、すぐに剣を振るったからか…。
ユーリ「……いっちょ、試してみる…か?」
リタ「大丈夫なわけ? 二人も倒れるとかシャレにならないんだけど?」
ユーリ「ある意味、賭けだけどな。でもこのままじゃあ確かにメルクも起きそうにねえし、これ以上ここで燻ぶってたら奴の餌食になるだろうしな。」
カロル「うわぁ…。あのナメクジかぁ…。」
フレン「出来れば会いたくない相手だね?」
仲間の会話をヴィスキントも聞いていて、皆の行動に従うようだ。
行くなら良く、行かないならここで待機。
どちらにせよ、ヴィスキントにとってはどちらでも良かった。
……ただ、どちらを選んだにしても少女が起きていないのが気がかりではあるが。
ヴィスキント「…決まりましたか?」
カロル「うん!このまま行くよ!メルクはユーリが起こしてくれるって!」
ヴィスキント「例の力か…。いいでしょう、興味深い事例ですからね。」
ユーリ「…。」
何か言いたげなユーリを無視し、ヴィスキントが先導する。
そして仲間たちは寝ている少女を連れ、緊張を孕んで奥へ奥へと進んでゆく。
薄霧で視界の悪い中、お互いの位置を確認しながらしっかりと前へと進んでいた。
ヴィスキント「200m先…、主が居ます。準備はよろしいですか?」
カロル「ユーリ!」
ユーリ「…やるか。」
ユーリは少女の腰を引き、抱きしめる。
強く、強く……!!
ユーリ「(力を貸してくれ…!メルク!)」
『─────────はっ、』
強く抱きしめた少女の背中から羽根が出現する。
それと同時に少女が息を詰め、目を瞬時に見開いた。
『ゆーり…?』
ユーリ「よしっ!成功だな!」
痛みも来ない、ただ湧いてくるのは体の底から湧き上がってくるような力の奔流。
ユーリは光り輝き、そして彼の持っているキュアノエイデスも波に揺られてるような光を映し出す。
少女も起きただけで痛みはなさそう───いや、少女に痛みの感覚は無いが、それでも吐血はしそうにないことが今は分かる。
不思議そうな顔をした少女に仲間達が声を掛け、主との闘いを伝えれば少女も大きく頷き、皆と共に主へと進んでいく。
『ユーリ!行けます…!』
ユーリ「よし!行くぞ!!」
お互いに頷きあい、いざ主との戦闘へ…!!
その牙は大きく、そしてひと一人分は簡単に包み込めるだろう大きな翼。
逆さでいる〈
耳を塞ぎ、耐え抜く仲間達に心強い支援がやってくる。
『♬✧*。◌*⃝̥◍♫*✲゚*。 ♪♬+゚』
その超音波を物ともせず、少女が奏でたのは攻撃力上昇、防御力上昇の歌。
たちまち、少女の歌が鍾乳洞という洞穴の中に響き渡り壁にぶつかって反響すれば、敵の超音波の効果が弱まってくる。
それに今の少女は七色に輝く妖精の羽根を持った最強の神子さまなのだ。
その威力はリタのお墨付きなほどの威力なので、誰もが次第に勇気を振り絞り、敵へと立ち向かっていく。
ユーリもその剣が光り輝いているのを見て、一度大きく閃かせる。
するとその一振りはあの薄霧を断ち切り、たちどころにして薄霧が晴れてしまったではないか。
ヴィスキント「…!!」
それにヴィスキントが反応しないはずもない。
強い力を持った剣と、光り輝くユーリと少女。
それにお互いがお互いの意志を分かっているように、たまに頷いて見せているのが気に掛かる。
ヴィスキント「(あれはどういう効果だ…?何故そんな力が今更発現した…?)」
ユーリが成功した、と言っていたのも気に掛かるが…今は目の前の敵である。
〈
ユーリ「蒼破っ!!」
カロル「落破スパイダーウェブ!」
前衛組が頑張る中、後衛組も負けていない。
フレンが光属性の術を使用した後、すぐさま前へと駆け出し、前衛へと切り替わる。
エステルも負けじと回復よりも術攻撃を選んで、敵へと手痛い攻撃を繰り出していた。
エステル「ホーリィランス!」
フレン「光破旋衝刃!」
少女も支援術を全員に掛け終えた後、攻撃へと転じる。
少女も光属性の魔術を持っていたのだ。
『♫•*¨*•.¸¸♪✧』
光の洗礼を受けた七色の剣が降り注ぐ、プリズムフラッシャ。
それが主の頭上から降り注ぎ、主を苦しめる。
キラキラと輝くそれを抜け出せずにいる主は、苦しそうに声を上げた後、目標を光属性で攻撃する三人に絞った。
手始めに近くに居たフレンへと降り立ち、牙を向けたが難なく剣を閃かせられ、次の目的であるエステルへと飛び立つ。
パティ「エステルはやらせないのじゃ!」
パティがエステルを庇うようにして、武器を使い敵を牽制させる。
エステルすら難しそうだと判断した主は最後である少女へと目標を変える。
しかしながら、それをさせない頼もしい二人がいた。
ヴィスキント「彼女を狙うとは命知らずですね。」
ユーリ「メルクはやらせねぇぞ!」
こういう時だけは一致団結している二人は、主に向かってご自慢の武器を翳し、少女へと行かせようとしない。
その間にも三人は光属性で主へと攻撃を繰り出しては、体力馬鹿である主を更に苦しめさせる。
それぞれに護衛がついた今の状態で無闇に攻撃をしなくなった〈
それにヴィスキントがいち早く気付いて仲間達へと注意喚起を促す。
ヴィスキント「気を付けなさい!特大の超音波攻撃が来ます!耳を持って行かれたくなければ即座に耳を塞ぎなさい!!」
「「「……!!」」」
ヴィスキントの指示に従い全員が耳を塞ぐと、そこへ翼を広げ、威嚇するように牙を見せた〈
耳を塞いでいてもその音はそれぞれの鼓膜を揺るがして、仲間達を苦しめる。
そのうち、仲間達の何人かが膝を着く事態となり、少女が耳を塞ぎながら自身の歌で反抗する。
しかしその音は今の超音波の前ではあまりにも無力すぎた。
その激しい超音波にかき消されるように少女の歌が響かず、打ち消す効果さえ出せない少女は、悔しそうに顔を歪ませた。
ユーリ「(メルク…!)」
『(ユーリっ…!)』
そんな悔しそうに顔を歪ませた少女を見てユーリも何とかしなければ、と顔を歪ませ、主を睨んだ。
少女もまた無力な自分に悔しくて、以前あった危機的状況を思い出し、ユーリの名前を心の中で無意識に叫んでいた。
───その瞬間、
「『っ!?』」
二人の身体が一際強く輝いた。
そしてユーリの持つキュアノエイデスが早く振るえ、と急かすように波打つ光を明滅させる。
少女の背中の羽根は更に強く輝き、少女を奮い立たせる。
『っ、♫•*¨*•.¸¸♪✧゚.*・。゚♬*゜』
するとどうしたことだろう、少女の歌声があの超絶なる超音波をかき消して洞穴内に反響する。
すぐさま耳から手を離した仲間達は、少女を見る。
未だに耳を塞ぎ必死に歌う少女を見て、自身を奮い立たせていた。
そんな中、ユーリはキュアノエイデスを見て大きく頷き、主へと大きく一閃させた。
ユーリ「はぁあああああ!!!」
ユーリの声と共にキュアノエイデスから出された一撃は、主の身体へと到達し、その体を真っ二つにしてしまう。
悲鳴を上げる隙もなく、主の身体は光り輝いて……それは、主の討伐を意味している暖かな光であった。
ヴィスキント「(あんな攻撃が可能になる剣……。キュアノエイデス、だったか…。これは厄介だな…。)」
ヴィスキントが少女を見て、消えたことを確認すると目の前に〈
こうしてユーリ達は元の世界へと戻って行ったのだった。