第7界層 〜永久不変たる薄霧の鍾乳洞〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヴィスキント「…急に挑むなんて、どういう風の吹き回しですか。」
嫌そうな顔を隠しもせず、相変わらず教祖姿のヴィスキントは目の前に居るユーリを睨みつける。
そんなユーリもヴィスキントに対して挑発的な笑みを向けては言葉を紡ぐ。
ユーリ「そんなに忙しいなら来なけりゃいいだろ?なぁ?ヴィスキントさんよ?」
ヴィスキント「チッ…。ふざけやがって…。」
ユーリ「おい、素が出てんぞ。」
相変わらず二人の相性は最悪そうで緊迫した空気の中、他の皆は慣れたようにのほほんとしていた。
ただ一人、少女を除いて。
パティ「メルク姐!体、大丈夫なのか?」
『はい。今はまだ大丈夫そうなんです。ですから挑戦するなら今の内だと思いまして…。皆さんにはご迷惑を…』
レイヴン「迷惑じゃないって。メルクちゃんが行くところなら、西から東に…」
カロル「メルク、疲れたら言ってね!休憩しながら行こうよ!」
ジュディス「流石に7界層っていうこともあって、皆緊張は無いわね。」
賑やかな会話の中、少女は不安そうに険悪な二人を見る。
それに他の仲間達が気付いて、大丈夫だという。
皆に言われたから、少しだけ少女が安堵しているとヴィスキントが少女を見ていることに気付いて首を傾げながら近寄る。
ヴィスキント「いいですか。いつぞや言ったみたいに戦闘になれば私の後ろに隠れてなさい。無理は禁物、支援も出来る範囲でいいです。分かりましたね?」
『はい。』
ヴィスキント「それから…。体はどうですか?体調は?」
『逆に今は大丈夫そうなんです。ですから今のうちに挑戦しておきたく…』
ヴィスキント「…なるほど?そういう理由なら致し方ありませんね。」
ユーリ「素直じゃねえやつだな。」
ヴィスキント「…。」
静かに睨んだヴィスキントにユーリも負けじと睨みかえす。
それに少女が内心ヒヤヒヤしていると、仲間達が近寄って第7界層の話を聞いてくる。
リタ「第7界層ってのはどんなところな訳?なんか準備とかいんの?」
『第7界層~永久不変たる薄霧の鍾乳洞~は、その名の通り、薄霧が続く鍾乳洞なんです。ただ…その薄霧も奥に行くにつれて濃くなったり薄くなったりするそうで…。』
パティ「こりゃあ、迷子必須なのじゃ…。」
カロル「全員、ロープでつないでおく?」
ジュディス「私は遠慮しておくわ。戦闘の時に邪魔になりそうだし。」
パティ「そんなこと言ったら全員が奇異な技を使うから、ロープは邪魔になるだけなのじゃ…。」
リタ「アタシとエステル、メルクは繋いでおいても大丈夫そうね。後衛組だもの。」
レイヴン「ちょっとリタっち!俺様も後衛組なんだけど?!」
リタ「あんたは弓で自由に動き回るでしょーが!!邪魔よ、邪魔!」
レイヴン「ひどいっ!!」
『あらあら、ふふ…。それじゃあ、私達だけ繋いでおきましょうか?』
パティ「あーん。ウチも繋いでほしいのじゃ~。メルク姐と一緒に居たいのじゃ~。」
カロル「…ビックリした。そういう趣味なのかと思っちゃったよ。」
パティ「そんなわけあるかい!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ子供組を余所に、リタは何処からかロープを調達し、三人を繋げる。
それに誰も反対することなくそれを見守っていればヴィスキントが動き出し、〈
そして呪文のようなものを唱えると、〈
ヴィスキント「迷子になった瞬間、切り捨てるので注意してください。」
「「「ええ…?」」」
『永久不変…。』
ヴィスキント「その言葉を理解するのは
中に吸い込まれるように全員が中に入って行く。
ロープで繋がれた三人も一緒に中に入って行けば、見えてきたのは鍾乳洞の入り口……そして、白く視界を染める薄霧だった。
臭いは無いものの、視界を白く染める薄霧に仲間達からは苦情が飛び交う。
時折風が吹いてかは不明だが、薄霧が薄れる事がありそれで全員が確認でいるようだった。
リタ「さあ、私たちも行くわよ。」
エステル「うぅ、緊張します…!」
リタ「さっき、ジュディスが緊張がないって言ったところなのに…。アンタって子は…。」
エステル「だって!こんな何も見えないところに入るんですよ…?!怖くないです?!」
『でも、二人がついているから、私は頼もしいわ?』
「「!!」」
すると二人は嬉しそうに表情を変える。
一人は照れて視線を逸らし、もう一人は非常に嬉しそうに顔を綻ばせていた。
そして近くにはヴィスキント様が呆れたように三人を見遣る。
ヴィスキント「…いつまでここに居るつもりですか。早くいきますよ。」
リタ「寧ろアンタが先導しなさいよ。」
ヴィスキント「分かっています。決してはぐれないでくださいよ。」
ヴィスキントが歩き出し、全員が歩を進める。
鍾乳洞の中は薄暗く、寒い傾向にあるが、それを少女が知るはずもなく周りが「寒い」と言っているので気が付いたくらいだ。
熱感知能力を喪っている少女には、皆の寒いが共感できない。
だが、声を掛け合うことは出来る。
『風邪をひかない様、注意してくださいね?』
パティ「うぅ、メルク姐の言葉が身に染みるのじゃ~…。」
カロル「でも風邪ひきそうなくらい、肌寒いよね…?」
ユーリ「それよりも、お前らはぐれるなよー?」
ジュディス「一番突っ込んでいきそうな人の言葉に思えないわね。」
ユーリ「おいおい、どういう意味だよ…そりゃ。」
賑やかなおかげで全員の居場所が分かる。
しかしそれよりも驚くのが、ヴィスキントが全員の位置を正確に把握していた事だった。
ヴィスキント「……そこ!離れない!」
カロル「え、何で分かったの?」
パティ「つーか、あの𠮟り方……まるで子供の遠足なのじゃ…。」
薄霧の中、高身長であるユーリ、フレン、ヴィスキントは霧が晴れた一瞬で辺りを見渡せるが、こんな薄霧の中…それも誰かが離れたことが分かるなんて不思議だと、仲間が怪訝な声を上げた。
それに少女が皆の疑問の答えを教える。
『もしかしたら、ヴィスキント様は今、〈
ヴィスキント「その通りです。分かったなら早く歩きなさい。早くしないと奴が来ます。」
『…!』
少女が立ち止まったことで、エステルとリタも立ち止まり不思議そうに少女を見る。
どうしたのか、と聞けば少女は瞳を揺れ動かし、動揺したように口元を押さえる。
それと同時にラピードが「ウゥゥゥゥゥ…」と威嚇しだし、全員が警戒を強めた。
『…待ってください…。何か…ずるずる引きづるような音を出しながら、近付いてきます…!!』
ヴィスキント「…チッ。早かったですね。」
カロル「え?え? 一体何が起きてるの?」
ヴィスキント「この薄霧の鍾乳洞…。実は絶対に倒せないと言われる魔物がうろついているんです。それに会えば間違いなく喰われてお陀仏でしょうね。」
レイヴン「それって、青年たちが言ってたキラーモンスターってやつじゃない!!」
ヴィスキント「?? キラーモンスター?なんです、その名前は。」
『ヴィスキント様! 11時の方角に巨大な何かが居ます!』
そう言ってくれた少女にヴィスキントは息を潜めると、武器を手にし、警戒をする。
しかし倒せない魔物を相手にするほど、ヴィスキントも馬鹿ではない。
ヴィスキント「全員、目を瞑りなさい!!」
咄嗟にヴィスキントは閃光弾を11時の方向へと投げ、そこから漏れた強烈な光を掻い潜り、仲間達と共にその場を後にする。
魔物の気持ち悪い悲鳴を聞きながら仲間たちは、キラーモンスターを掻い潜る事に成功したのだった。
リタ「ちょっと!あんなのいるなら先に言いなさいよ!!」
ヴィスキント「奴は耳が聞こえない分、触角で辺りの散策をします。それにその魔物に出会うのは奇跡的な確率です。…私も合うのは初めてですが…。まさかここで会うことになるとは…。」
ヴィスキントがやれやれと肩を竦めさせると、キラーモンスターについて聞いてくるので、そちらは少女が快く対応した。
『絶対に倒せない魔物が、各界層に忍ばせてあるみたいなんです。それを倒せば豪華なご褒美が貰える、とユグドラシル様が仰られてました。』
ヴィスキント「……豪華なご褒美?もしかして、奴の持ってる剣は……。」
『“キュアノエイデス”と呼ばれる水の剣なんだそうです。』
ヴィスキント「なるほど。どうりで不思議な力を持っていると思いました。説明ありがとうございます。」
『はい。』
少女が全部説明しちゃったことで、今度は仲間達がやれやれと肩を竦める。
でもこれは仕方がない。
少女はどちらの味方でもあるのだから。
ヴィスキント「取り敢えず、奴を掻い潜りながら進みますよ。」
ヴィスキントの言葉に全員が頷いた後、それぞれ逸れないようにと声を掛け合いながら奥へ奥へと進んでいく。
時折少女の体の心配をしながら先へと進むユーリ達。
ラピード「ウゥ…!」
『皆さん、注意してください…!キラーモンスターが近くにいます…!』
カロル「えっ?! またぁ?!!」
ヴィスキント「……尋常じゃないスピードで現れますね…。ですが、交戦はやめておきなさい。命が惜しければですがね。」
パティ「ユーリとジュディ姐以外は勘弁願い所なのじゃ!!」
ジュディス「あらひどい。私も勘弁願いたいわよ?」
ユーリ「嘘つけ……。」
するとジュディスがユーリをニッコリと見たからか、ユーリがそのまま押し黙る。
そしてそのキラーモンスターの横を通り抜け、無事を確認し合う仲間達。
ヒュオオオオ……
強い風が吹き、薄霧が晴れていくとそのキラーモンスターの姿が顕となる。
体長は鍾乳洞の高さギリギリで、横幅も長く……まるでそれは“ナメクジ”のような魔物であった。
長い触角をこれでもかと伸ばし、辺りを探るような魔物を見て子供組が震え上がる。
それでなくともその見た目の気持ち悪さに大人組も身震いをするほどだ。
耳が聞こえないのはナメクジがそういった性質だからだろうか…。
ヴィスキント「因みに奴はこの鍾乳洞にずっといますから、目も退化しているはずです。おそらくあの頭の触角はただの飾りですよ。だからこそ、あの長い触角が進化したのでしょうが。」
カロル「説明はいいから、早く行こうよベン!」
ヴィスキント「いえ、下手に動けば今なら気付かれる可能性が高いです。ここは薄霧が戻るまでは動かずジッとしていましょう。」
ヴィスキントの言う通りにすれば、キラーモンスターは薄霧が戻ってきたあと触角だけを頼りに他へと移動していく。
それを見送ったユーリ達は大きな息を吐いて、無事だった事を安心する。
ユーリ「つーかあれなら幾らでも倒せそうだけどな?」
ジュディス「あら、同感ね。ノロそうじゃない。」
レイヴン「流石、トップ2だわ……。」
パティ「霧にも飽きてきたのじゃ……。」
ヴィスキント「奴はたまに天井にいることがあるらしいので、気をつけてください。落ちてきたら……知りませんよ?」
確かに、あんな大きな図体をした物が落ちてきたら……あっという間に人間など潰されてしまうだろう。
想像した何人かが、身震いをしたのを確認後、ヴィスキントは先へと進んでいく。
しかし、あまりにも景色が代わり映えしなさすぎて、果たして先に進んでいるのか後退しているのか分からない仲間達はヴィスキントへと文句を垂れていた。
少女だけは、そんなヴィスキントを頼りにしていて、それがユーリには面白くなかったのは言うまでもない。
時折ヴィスキントに話し掛けては、その服をキュッと握り……それを見たヴィスキントが少女の頭に手を置くのが見えた時は……ユーリも拗ねるだけなら良かったが、嫉妬なんて醜いものが渦巻いた時にはどうしてやろうかと思った。
ユーリ「(俺も大概、大人気ないな……。)」
カロル「あれ、ユーリ? ついてきてる?」
ユーリ「ここに居るぞー?」
ユーリは返事をして先に進む。
ヴィスキントはそんなユーリの様子を見て、一人
ヴィスキント「…少し、休憩を入れますか?」
レイヴン「へ? ここで?」
ヴィスキント「…彼女の様子が変です。」
そう言って、ヴィスキントの近くにいた少女の様子を見て顔を顰めさせる。
時折目を擦っては首を振っていた少女。
それを見てヴィスキントは休憩を申し出たのだ。
……流石にこんな地帯で、休憩は好ましくない。
しかしそうも言ってられないのだ。
背後にいる少女が先に進めないのでは、ヴィスキントとしては意味がないのだから。
『……もうし、わけありません…。』
ヴィスキント「…前回の眠気は何時です?」
『一昨日、でした…。』
ヴィスキント「なるほど。(やはり早くなっているか…。あの猫……どこに行ったのやら…。サッサと探し出して問い詰めてやりたいところだ。)」
ヴィスキントは心配するな、と少女の頭を撫でる。
しかしそんな少女の顔が歪み、ヴィスキントに必死に訴えかける。
『上、です…っ!』
ヴィスキント「…!!」
少女の方を向いているヴィスキントの背後に降り立ったのは、例のキラーモンスターだった。
寧ろ、この鍾乳洞……他の魔物がいない。
きっとコイツに食われてしまったのだろう事は容易に想像が出来た事だった。
背後を振り返り、すぐに閃光弾を投げ捨てるヴィスキント。
改めてあの気持ち悪い悲鳴を聞き、仲間達は慌てて逃げだすが、一人遅れた者がいた。
……そう、先程まで眠気を再発させていた少女だ。
エステルとリタが気付き、悲鳴じみた声で少女の名前を呼ぶ。
それに気付いたヴィスキントとユーリが目を見張り、少女の姿を探す。
しかし何とか眠気を持ち堪えた少女はエステル達に手を掴まれ、何とか走り出す事に成功していた。
リタ「あの子は掴まえたわよ!」
エステル「早く逃げましょう!!」
二人が必死に少女の手を握り、そしてひた走る。
しかし今回のキラーモンスター……、いやにしつこい奴である。
まるで神子だけを狙っているのか、その長い触角を辺りに散らしながら探し回っているではないか。
リタ「アイツっ…!何でこっちに来るのよ!!」
エステル「えっと、目と耳が退化しているんですよね?!」
リタ「なのにアイツ、こっちに来てるじゃない!!」
二人の焦燥感ある言葉に仲間達が慌て始める。
自分達が逃げた方向と違う方向へ行くのをヴィスキントが確認し、舌打ちをする。
ヴィスキント「そっちはいけません!!魔物の巣窟ですよ!」
リタ「だったらアレをなんとかしなさいよー!!」
リタの言葉にジュディスとユーリが動き出す。
武器を持ち、キラーモンスター目掛けてその武器を力いっぱい振るったのだ。
それを見た仲間達もまた、リタ達を助けるべくキラーモンスターへと果敢に挑んでいくのを見て、ヴィスキントも動き出す。
ヴィスキント「……チッ。この〈
「「「分かった!!」」」
何だかんだ優しいヴィスキントに仲間達が反応し、応える。
そしてリタ達もその言葉を聞き、詠唱を開始する。
リタ「火属性なら任せなさいっ…!吹っ飛べ!!」
リタお得意の火属性の術が〈
うねり、くねった様子の〈
少女の隣のエステルもまた、火属性は持っていないものの持ち前の術で攻撃をしていく。
『゚.*・。゚♬*゜…………』
少女も支援術を味方に飛ばしたが、それも途中で尽きてしまう。
それで全員が少女の様子が分かってしまう。
今まさに眠気と闘っているのだ、と。
しかし先程の支援術は成功している様子で、体が軽くなったのを感じてそれぞれが少女へとお礼を伝える。
しかし、少女は眠気で皆の言葉が聞こえていない。
『(だめ……皆が頑張ってるのに…。)』
目を擦り、強く首を振るが一向に眠気が治まる気配はない。
それどころか、どんどん眠りの淵に
少女は二人の悲鳴を聞きながら、その場で倒れるようにして意識を失った。
◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆+。・゚*:。+◆
〈
それは少女の近くに居たはずの二人の悲鳴だ。
それにいち早く反応をしたユーリとヴィスキントが、悲鳴の聞こえた方へと視線を向けるが、目の前の敵をどうにかしなければ自分たちが全滅してしまう。
ユーリ「くそっ!!」
ヴィスキント「何がありましたか⁉」
エステル「メルクが倒れたんです!!」
ヴィスキント「やはり、か…。」
ユーリ「怪我は?!」
リタ「今のところないわよ!とにかくそいつを倒すか、逃げるかしないと咄嗟の事態になった時に分かんないわよ!!」
全員で叩きこむように〈
ユーリ達の攻撃を物ともしないボディ、ヌルヌルして切れ味が悪くなる一方のぬめり……。
そして目が見えていないのにも関わらず、長い触角で仲間達を察知し、毒を吐いてくるあの大きな口。
パティ「状態異常回復技は誰が持ってるのじゃ?!」
エステル「私、持ってます!状態異常になったのは誰です?」
パティ「カロルの奴なのじゃ!」
エステル「リカバー!!」
カロル「ありがとう…エステル…。」
口から吐きだされる毒にやられたカロルが復活し、再び攻撃を仕掛けようとするが再び触角が仲間を捉え、毒をそこに向けて吐き出す。
次にやられたのはフレンだった。
フレン「くっ…?!」
パティ「エステル!次はフレンじゃー!!」
エステル「リカバー!!」
フレン「すみません、エステリーゼ様。」
レイヴン「ちょっとちょっと!まずいじゃないの!!」
どんどん仲間がやられていき、回復が間に合わない。
形勢は不利と見たヴィスキントが一時退避を仲間達へと指示する。
流石に全員が頷くとともに、ユーリが少女へと駆け寄る。
ユーリ「メルク!」
リタ「今、ロープを切るから早く連れて行って!!」
リタが手早くロープを切ったことでユーリは少女を持ち上げ、避難を開始する。
それにつられて、エステルとリタも避難を開始したのを見たヴィスキントは追いかけてこない様に閃光弾を再び〈
幾ら退化したとはいえ、多少は見えてる様子の〈
そして、仲間たちは逃げることに成功したのだ。
レイヴン「はぁ、はぁ、はぁ…。ちょっと…ウソみたいに、強い…んですけど…?!」
カロル「よく、ユーリ達……勝てた、ね…!!」
ユーリ「あの時は、メルクの力が、あったから、な…!!」
全員が息切れをする中、ヴィスキントだけは涼しい顔で薄霧の中仲間達を見遣る。
ユーリの腕の中にいる少女も確認し、ヴィスキントは休憩を改めて提案し、それに仲間たちは大賛成をしたところで皆で膝をついた。
エステル「ユーリ、メルクは?」
ユーリ「あー?今は、寝てる。」
レイヴン「いやぁ、タイミングが悪かったわねー。」
カロル「でも仕方ないね。体、調子悪いのに挑戦しないと治らないんでしょ?」
副作用の事を知らず、ただ踏破すれば治ると信じているカロル達の言葉にユーリとレイヴンは沈黙する。
まぁ、間違ってはいないので否定のしようもない。
リタ「つーか、あの化け物何よ…。こっちばっかり狙ってくるのには意味があったわけ?」
エステル「もしかして、狙われていたのって…メルクだったんでしょうか?」
ヴィスキント「神子を狙ってるというのは正しいのかもしれませんね。人間ではありますが神子自体、奇異な存在ですから。魔物から見たらご馳走なんでしょう。」
レイヴン「自然の摂理が…恐ろしいわねー…?」
薄霧の中、全員が近くに居るのを確認し、休憩も適度に終えた仲間たちはそのまま進んでいく。
少女はユーリが抱え、道案内をヴィスキントが担当する。
たまに〈
それに安心して仲間たちは第7界層を奥へ奥へ進んでいったのだった。