第6界層 〜蛙鳴蝉噪なる罪過の湖〜
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レイヴン「───っていうか、罪状の大きさなんて人それぞれじゃな〜い?罪の重さの感覚だって人それぞれなんだしさぁ?」
パティ「確かにそうなのじゃ…。」
ヴィスキント「えぇ。ですが、万人にこの人が悪人だと分かる人ならばどうですか?」
ユーリ「どういう奴だよ……それ。」
私達はそのまま、街道を道なりに歩いていた。
この界層は別の界層と比べても比較的広く、大きく分けても3つのエリアがあるらしい。
一つは、街エリア。一つは、スラム街。
最後の一つがこの界層のメインでもある罪過の湖である。
その言葉は蛙や蝉がやかましく鳴き騒ぐことからきているものらしいが、それほど罪人達が大騒ぎして蔓延っている界層の様だ。
『……罪人、ですか?』
ヴィスキント「えぇ、大罪人ですね。例えるなら人を殺す事を厭わない──そんな性格の持ち主だと言えます。蛙鳴蟬噪と謳われる通り、罪人共がピーチクパーチク何処かしら
レイヴン「
ヴィスキント「特に、貴女を含めた子供組は相手の言葉を真に受けたり、付いていくような真似はしない事。良いですね?」
「「「『はーい/はい。』」」」
子供組だと分かっているらしい何人かが返事をする。
私も入っていたので一応返事をしておく。
ヴィスキント「後、何があろうとも罪過の湖に入らないように。入ったが最期──死にますよ。」
「「「え?!!」」」
ユーリ「それは流石に先に言っといて欲しいぜ……。」
ヴィスキント「だから今言ってるのでしょうが。罪過の湖には魔物が棲みついています。それに引きずられたらもう誰も助け出せませんよ。もしも入ってしまったら即刻諦めなさい。」
「「「うえぇ……。」」」
返事とは言い難い返事が返ってきて、私は苦笑いをして、ヴィスキント様は顔を歪め皆を一瞬ほど見た。
……でも。こうして、皆とヴィスキント様が一緒に居るのが何だか不思議。
敵同士だけど……、それでもこうやって一緒に居られるのが今の私には……丁度いいのかもしれない。
またここから出たら……皆の近くには居られないから。
パティ「あ!見えてきたのじゃ!」
ヴィスキント「…………街エリアです。ここでも罪人が蔓延っていますから注意願います。」
「「「おう/はい/はーい」」」
街の中に入ればどんよりした空気が辺りを包んでいた。
大通りの端にはぐったりしている人達が居て、みすぼらしい衣服を着てこちらを死んだ魚のような目で見ている。
その瞳は何処か……何かを見抜こうとしているような視線の様に感じて、思わず隣に居たヴィスキント様の服を掴んだ。
そんな私を見てヴィスキント様は一瞬だけ私を見て、すぐに頭を撫ででくれた。
ヴィスキント「……行きますよ。覚悟を決めなさい。」
『……はい。』
歩き出したヴィスキント様に合わせて私達も歩きだす。
すると突然目の前に人が現れる。
その人は他の人と変わらずみすぼらしい格好で頬もコケていて……見ていて痛々しかった。
そんな目の前の男性は私の肩を掴むと強く、強く掴んできた。
何かを必死に訴えかけてくるように。
「た、助けてくれ…!!」
『……え?』
「殺されそうなんだ…!頼むから、助けてく──」
その瞬間、男性は吹き飛ばされていた。
よく見ると、ヴィスキント様がその長いお御足を片方だけ上げていた事から、ヴィスキント様が男性を蹴り飛ばしたのだろう事が分かる。
吹き飛ばされた先の家で泡を吹いて倒れているのが見え、私は口に手を当てて息を呑んだ。
ヴィスキント「……罪人如きが。」
『ヴィスキント、さま…。』
ヴィスキント「言ったでしょう?罪人の言葉に耳を傾けないように、と。あれは嘘です。貴女を殺そうとする、真っ赤な嘘。その証拠にこれ、ですね。」
そう言うとヴィスキント様は地面に落ちたボロボロのナイフを拾い上げる。
明らかに私達の誰かが持っているような、そんなちゃんとした装備品ではないのが明白である。
ヴィスキント「……ふん。落とし物ですよ。」
そう言って軽々とナイフを先程の男性がいた場所へと投げた。
男性の横に刺さったそれを感情のない眼差しで見たヴィスキント様。
そして私の腕を掴むとゆっくりと歩き出した。
ヴィスキント「行きますよ。グズグズしているとまた罪人が寄って集って来ます。」
私は静かに頷き、先導されるがまま歩き出した。
ユーリ達もそれを静かに見て、そして歩きだす。
子供組は恐怖の色を濃くして歩き、大人組は顔を顰めさせ、警戒しながら歩き出した。
……ここは、やはりそう簡単にはいかなさそうだ。
‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥
暫く歩いていた私達だったが、何処も同じ様な景色だった。
道の端に座り込む、みすぼらしい格好をした罪人たちが鈍い光を湛えて私達を睨みつける。
なるべく見ないようにしていた私だったが、背後からラピードが唸る声がして、ハッとしてヴィスキント様を見た。
ラピード「グルルルルル…」
「「…!」」
ユーリとフレンが辺りを警戒し始めたと同時に、隣にいたヴィスキント様が立ち止まり警戒をした。
目を閉じ、耳を澄ませているのか手には武器を持ち、もう片方の手はしっかりと私の手を握ってくれていた。
ヴィスキント「(この音…、どこからする…?)」
『……。』
邪魔にならないように静かにしていたが、不穏な気配を感じ取って無意識にギュッと手を握りしめる。
それに気付いたヴィスキント様が何事か、と私を見ていた。
『あ、そこ……。』
ヴィスキント「……?」
『何か居ます……!』
私がとある家を指すと、ヴィスキント様は指した方向を睨みつけ武器を持つ手に力を入れる。
ヴィスキント「(何がいる…?)……何か来たらすぐに知らせなさい。交戦します。」
『は、はい…!』
ラピードでさえもその家に向かい、吠えている。
ユーリとフレン、そしてレイヴンも周りのただならぬ空気に武器を持ち、構えていた。
そして、私達の目の前に突如現れたのは血塗れの男だった。
「ヒャッハーー!血が美味いぜ!!!」
急に家から飛び出してきた男はこちらを向くとニヤリと笑いを浮かべた。
悪寒がして私が後退ると、ヴィスキント様が私を庇うように前に出た。
ヴィスキント「貴女は下がっていなさい。」
「美味しそーな嬢ちゃんじゃん?」
『……!!』
ヴィスキント「耳を塞いでいなさい。所詮罪人の戯言です。」
すると血塗れの男はこちらに向かって武器を振りかざし、ヴィスキント様を攻撃した。
しかしその視線は、後ろにいた私を見つめていた。
ニタァと嗤ったその血塗れの男の人を、真っ青な顔で見れば男の人のターゲットがすぐに切り替わる。
サブウェポンである短剣を取り出し、男の人の武器を何とか往なしたがすぐに次の攻撃が来てしまう。
間に合わないと思っていた矢先、ヴィスキント様が男を蹴り飛ばした。
ヴィスキント「チッ!狙いはこいつか…!」
すぐに空中で回転し地面に着地した男は首を鳴らしながら少女を見つめた。
ニヤニヤ…ニタニタ、そんな笑いを浮かべて見られると恐怖心が表に出て来てしまう。
後退した私を見て、男は逃すまいとすぐに駆け出す。
ヴィスキント様が男の武器を受け止め、交戦したその瞬間、横から別の手が伸びてくる。
道の端にいた罪人が私に手を伸ばしてきていたのだ。
掴まれる───愕然としていた私を……ユーリが抱き寄せて守ってくれた。
ユーリ「大丈夫か?!」
『ゆー、り…』
ユーリ「(こりゃ、やばいな…。体も震えてやがる…。)そのまま何も見るな、メルク。」
言われたとおり彼の胸にしがみつけば、彼は頭を撫でてくれてそれに少しだけ安心した。
ユーリはそのまま武器を手に、横から出てきた罪人を睨みつける。
「……チッ。」
罪人は守られている少女を残念そうに見遣り、その場を去っていった。
他の罪人共も、早く弱みを見せないか、と瞳を鈍く光らせているのが分かり、ユーリは余計に少女を抱きしめる力を強くした。
ジュディス「恐ろしいところね?ここ。」
カロル「ジュディス、全然平気そう……。」
レイヴン「弱みを見せたが最後、殺されるかもな…。」
パティ「それよりあの男はなんなのじゃ!?」
未だヴィスキントと激しく交戦をしている血塗れの男に全員が目を向ける。
そしてヴィスキントが一瞬だけこちらを見て、叫んだ。
ヴィスキント「彼女を連れて逃げなさい!ここは私がやります!」
「そうはさせるかよ…!」
男がヴィスキントの横を掻い潜ろうとしたが、そこはヴィスキントの力量の方が上だった。
すぐさま男の腹部へと蹴りを入れようとして男がそれを察知し、慌てて後退する。
「チッ……美味しい獲物が目の前にあるってのに、お預けとは酷ぇじゃねぇか。」
ヴィスキント「食人とは…、大層な罪をお持ちですね?」
カロル「も、もしかして……あの人がここの界層のヌシ…?」
レイヴン「めっちゃあり得るわー。」
ユーリ「んなこと言ってる場合か。メルクの為にも一旦引くぞ!」
ユーリはメルクを抱え、来た道を引き返す。
少女の顔色は既に真っ青を通り越し、白くなっていた。
カロル達もそれに倣い、来た道を引き返す。
それを見たヴィスキントが鼻を鳴らし、ようやく真剣に武器を構える。
ヴィスキント「守るべきものが居なければ、こちらのものです。───殺してあげますよ。」
ヴィスキントは目を見開き、男へと武器を振り下ろした───
‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥
息を切らしながらユーリ達は来た道を戻っていく。
腕の中にいる少女はかなり衰弱しているように見えた。
その証拠に先程まであった震えが今は感じられなかったからだ。
ユーリ「(くそっ…。早いところ街道に戻りてぇが…)」
長い長い道のりをひたすら走っていく。
その道中では行きとは違い、罪人共がニヤリと笑いを浮かべて走っていくユーリ達を見ていた。
まるで良い獲物を見つけた、とでも言うように。
レイヴン「こりゃあ、ちょっとまずいかもね…!」
カロル「え?!なんで?!」
レイヴン「端にいる奴らの目つきが変わってる…!狙いはもしかしたら……」
そう言ってレイヴンは前を走るユーリに向けられる。
恐らくその視線はユーリではなく、ユーリが抱えている少女に向けられたのだ。
全員がレイヴンの言葉を理解した時、ようやく街道への道が見えて来て、ユーリ達は全力で走り抜けた。
暫くそのまま街道を走り抜けたユーリは立ち止まり後ろを振り返る。
すると、
ユーリ「っ!?やっべ…!」
カロル「ちょ、僕、もう〜限界ーーーっ!!!」
パティ「が、頑張るのじゃ…!!」
ジュディス「まさかあの罪人が追い掛けて来るなんてね?」
リタ「余裕ぶっかませるなら…!あいつっ、なんとかっ、してきなさいよーっ!」
後ろから来ていたのは例の血塗れの男だった。
ヴィスキントと交戦していたはずの男が何故こちらに向かってきたのか。
レイヴン「あの人、逃げたんじゃないの〜?!」
カロル「ベンはっ、そんなことっ、しないよっ!!」
流石に息が上がってきたカロル達を見てジュディスが急に立ち止まり、男に向かっていった。
それに驚いて振り返るカロル達だったが、ジュディスが叫ぶ。
ジュディス「ここは私にやらせてもらえないかしら?」
ユーリ「ジュディ!」
ジュディス「その子をどうにかしないといつまても追い掛けて来るわよ!」
レイヴン「ジュディスちゃん一人にはさせられないわねー?」
レイヴンも武器を手にしたのを見てリタがユーリに叫ぶ。
リタ「早く走って!二人の言うとおりよ!!その子をどうにかしないとどうにもならないわ!!」
リタも術の構えをした辺りで、残りの者が再び走り出す。
とにかく少女をどうにかしなければ罪人が追い掛けて来る。
ユーリ達はそのまま少女を抱え、走っていく。
三人が見えなくなる頃、少女はユーリの服をギュッと握った。
『……ごめん、なさい……』
ユーリ「…!」
呟かれた言葉は謝罪だった。
何に対しての謝罪なのか、今は考えるより足を動かすことを優先させたユーリは少女の言葉に聞こえないふりをした。
ユーリ達はそのまま走り続け、別のエリアである“スラム街”へと辿り着いた───
‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥………‥‥・*・‥‥
___第6界層、スラム街
寂れた家が建ち並び、道には飢餓状態である子供たちが蔓延っていた。
時には倒れている者もいて、それはピクリともしない。
それを他の子供たちは見向きもせずに通りすがる。
カロル「……ここも、何か…ヤバそうだね……。」
ユーリ「ヤバくない所があるならそこで休みたいが、な…。」
パティ「ユーリ。メルク姐は大丈夫なのか?」
ユーリ「…今は寝てる。」
恐らく薬を飲んでない所為で、例の副作用が来てしまったのだろう。
仲間達と別れてしまったユーリ達はアテもなくスラム街を歩いていた。
流石にユーリとフレンという二人の大人がいるからか、子供たちの視線はこちらに向いてもすぐに目線を逸らされていた。
フレン「…休める所は無さそうですね。」
エステル「でも、メルクを休めないと……。」
パティ「しっかし、あんな奇人に狙われてしまったら誰でも怖いのじゃ〜。メルク姐が可哀想で仕方ないぞ。」
カロル「ホントだよね!!あんな血塗れの人……追いかけられたら怖いって……。」
身震いをしたカロルだったが、何故か周りにいた子供がカロルを見て途端にビクビクさせてはカロルを避けるように逃げて行った。
カロル「え?!ちょ、」
ユーリ「あーあ。カロル先生、随分と嫌われたな?」
カロル「なんで?!」
エステル「…もしかして、さっきの血塗れの人の事を話したからでしょうか?」
ユーリ「それしか考えられねぇよな…?」
いつの間にか周りには子供一人も居ない。
居るのは地面に突っ伏している人らしきモノだけ。
ユーリ達はそれを見て溜息をつく。
……何にしても休める所が出来そうだ。
ユーリ「ちょっとそこら辺の家を拝借しようぜ?」
エステル「え、ユーリ!不法侵入ですよ?!」
カロル「え?!ほんとにするの?!」
パティ「拝借なのじゃ〜。」
フレン「……。」
フレンも仕方ない、とユーリたちの後を追う。
一軒家を借りる事にしたユーリ達は中に入り、適当な床に座り込んだ。
胡座をかいた上にメルクを置くと、ユーリは少しだけ休憩をする。
羽のように軽い少女だから疲れはないが……走り疲れはする。
エステル達もユーリの近くに座り、暫しの休憩をすることにした。
カロル「にしても、ベンって強いね。あんな激しい戦い方初めて見たよ。」
ユーリ「……確かに、あいつは強いな。船の上で戦った時、俺と互角だったしな。」
「「「え?!」」」
フレン「……本当なのか?」
ユーリ「これが嘘をついてるように見えるか?」
自分の顔を指し、ユーリが肩を竦める。
フレンはそれを聞いて珍しそうにユーリを見た。
ユーリとフレンの戦力は互角だ。
彼がそれと同じくらいと言う事は、戦力的に言えばこちらに一応軍配はある。
だが先程の戦い方はフレンから見ても、確かに珍しい型であった。
カロルの言う激しい戦い方とは、きっと彼の戦闘の型が特殊だったからだろう。
体術と剣術と他の何かを併せ持つような戦い方だ。
その証拠に、彼は少女を助ける時に剣技ではなく、体術を優先させていたからだ。
特に、長い足を活かしたあの蹴撃はフレン達との戦いでもかなり厄介だろう…。
男一人を簡単に吹き飛ばすほどの力はあったのだから。
パティ「何故メルク姐が狙われるんじゃろなぁ?」
フレン「メルクさんが、神子ということも何か関係しているのかもね。」
エステル「でも、確かヴィスキントさんは精神が安定していないと……とか言ってましたよね?あれは関係ないんです?」
ユーリ「確かにな。あの時のメルクは不安定そうだったしな。」
フレン「それは…あんな血塗れのおかしな奴に追いかけられたら誰だって…」
エステル「女性ならトラウマになりますって…!」
パティ「そうじゃそうじゃ!あんな全身を血に染めてからにぃ〜!大罪人なのじゃ!!」
カロル「あの人がヌシなら、早く倒してしまいたいけど……メルクの事を考えたら会うのも危ない気がする……。もう少し、ベンから聞いておいた方が良かったかもね。」
───ガタッ!
「「「「っ!!」」」」
……家の外から音がする。
ユーリ達はすぐに交戦出来るように武器を手にした。
少女を狙っているのなら真っ先にユーリの所に来るはずだ。
そこを狙って叩くしかないだろう。
フレンがユーリを見てアイコンタクトをする。
その横ではラピードも唸り声を上げて、外を警戒していた───そんな時、少女が起きてしまった。
『……ん、』
「「「「…!」」」」
「みーつけーた!」
家の外壁を破壊し入ってきたのは、ジュディス達が交戦していた筈の血塗れの男だった。
真っ先にメルクの元へ飛びかかってきた男にユーリが武器を閃かせる。
しかしそれを間一髪で躱し、地面に足をつけた男はニヤリと笑いながら背中を仰け反らせると首をポキポキとわざとらしく鳴らしたではないか。
奇妙なその行動にカロルとエステルが身震いをした。
カロル「な、なんなの…あの人…!気持ち悪いんだけど…!?」
エステル「身震いしてしまいます…!メルクの気持ちがすごく分かります!!」
パティ「確かに気持ち悪いのじゃ〜……。じゃが…メルク姐は渡さないのじゃ!!」
パティが先に銃で仕掛けると、男はパティを狙い隠し持っていたナイフで切りつけようとする。
それをフレンが剣で薙いで、パティを守った。
パティ「感謝なのじゃ!」
フレン「僕の目の前で誰も怪我はさせないよ!」
次に男が狙ったのはメルクではなくエステルだった。
武器で受け止めたエステルだったが、すぐにユーリが男へと剣を振るう。
それをも間一髪で避けた男はニヤリと笑い、起き上がろうとしていたメルクへと手を伸ばした。
ユーリ「っ、しまった!メルク!!!」
『??』
ユーリの切羽詰まった声に目を擦っていた手を止め、顔を上げる。
すると少女の目の前に、手をこちらに伸ばす血塗れの男が居た。
少女がすぐさま回避行動を取った事で男は転がりながら外壁を壊し、派手に外へと出ていった。
目をぱちくりさせたメルクに、ユーリ達が安堵の息と共に可笑しそうに笑った。
カロル「さっすがメルク〜!ナイス回避だったよ!」
エステル「メルク、怪我は無いです?!」
『??????』
少女の顔には沢山のハテナが浮かんでおり、さっき壊れたばかりの外壁を見つめていた。
ユーリがメルクの近くに寄り、そして腕を掴み立ち上がらせる。
ユーリ「逃げるぞ!」
『え?え?』
パティ「とんずらなのじゃ〜!」
フレン「急ぎましょう!」
メルクの手を引き、ユーリ達は男が来る前に走り出した。
果たして───貴女達は全員合流出来て、無事にこの界層をクリア出来る?