あきらに勉強を教えるようになってからはや一ヶ月が経った頃の話だ。

毎週の土日のどちらか、又は両日、定期的に教えていたのだが、ある日。

白夜が昔馴染みと家で飲みたいと言ってきて自宅が急遽使えなくなってしまった。
スマホであきらに勉強会を断ろうと伝えたのだが。

「私の家ならいいけど、どうする？」

何と(名前)の家で勉強会をやったらどうだと提案されたのだ。

気にしないのか、と返信したが、あきらは特に気にしないと返ってきた。

(まぁ、向こうも気にしないからいいか……)

白夜に少し出掛けてくると（あきらの家に行ってくる事は伝えずに)言って千空は家を出た。

あきらから送られてきた住所を元に歩くとやけに大きい屋敷が見えてきた。

「でけえ…………」

恐らく家の中にも道場があるのだろう。

戸を叩いて開けてもらうかと思いきやちゃんとインターホンがある。

チャイムを鳴らすと大きな戸がギイと鳴ってあきらが出てきた。

「いらっしゃい、千空」

「……おう」

出迎えたあきらを見て千空は少し気恥ずかしくなった。
あきらの格好は稽古で着る袴のままで普段見る服装と違うからだろうか。
「あ、ごめん、袴のままで」

さっきまで稽古をしていたのかあきらの頬は少し赤かった。

「いや、構わねえよ」

千空は初めて見る袴が珍しいのかまじまじとあきらの格好を見る。

「えっと、じゃあ、案内するから」

あまりじろじろと見られるのが恥ずかしいのかあきらは背を向いてしまった。
そして、千空は初めて女子の家へと足を踏み入れた。