第四章
夢小説設定
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部品も作成しスチームゴリラ号が完成した。
元の現代社会で唯一運転免許を持っていたゲンが試運転し、改良を重ねながら何とか人を乗せて走れるようになった。
これでようやく司帝国に出発できると千空は意気込んだが肝心の乗せるはずだった年老いた村人達がここに残ると言い出した。
そもそも司帝国まで若干の距離はあるとはいえ、何往復出来ないというわけでもなかった。
それなのに何故自動車を作ったのか、年老い長距離を移動出来ない村人の為に……わざわざここまで手を加えてまで内心人々に思いやる千空の人柄の良さが見てとれる。
本人は決してそれを口には出さないが。
私達を置いて向かってくれ、仮に敵に攻められたら老人だけでは何も出来ないというのに村人は千空にそうするよう説得した。
何故なら……彼らは信じていた。
千空達が司帝国に勝って無事に石神村に帰ってくる事を。
村人の言葉に誰もが決意を固く強めた。
…………必ず勝利して戻ってくると。
途中上り坂でスチームゴリラ号が止まってしまい、千空が急遽何かを思いついたのかコクヨウの指示の元、突貫の野戦築城を築き上げる。
司帝国は目前、煙を誤魔化す為に大量の木々で視界を誤魔化すべく忙しなく動くその他の面々をよそにコハクは望遠鏡で司帝国の様子を伺っていた。
あきらはコハクに近づき遙か向こうの司帝国を眺めるがコハクのように視力が良い訳でもないのでどこに誰がいるかわからない。
「望遠鏡じゃ分からない?」
「このどこかにクロムがいるはずなのだが…………
場所が特定出来ないと助ける手立てもない」
「こっそり潜入っていう手もあるけど私じゃ面割れてるからな……」
「それもそうだ……ん?」
どうしたの?コハクと聞くとコハクは望遠鏡の視界の中でコロコロと転がるスイカを目撃し驚愕した。
今こそ自分が役に立つ時だとスイカはあちこち司帝国をこっそりと回ったが、あまり堂々と動き回っては潜入の意味がない。
あちこちに見張りがいて視線が反れるその時にだけアクションを起こすことが出来るが、手がかりは中々見つからない。
せめて……場所だけでも……と落ち込むスイカを牢で退屈そうに暇していたクロムが気づいた。
クロムはスイカの意図に気づき、どこに閉じ込められているかを大声で叫んだ。
とても危ない行動だったがスイカのおかげでクロムが捕まっている場所が分かった。
後は救出するのみ……だが見張りは多く戦闘は避けられないだろう。
となればこのスチームゴリラ号を改良するのみだとまたもや千空が楽しそうに笑う。
千空の案により防御力を強化されたこの戦車さえあれば牢を破壊するのも容易いだろう。
これなら血を流さずともクロムを救出出来ると…………
底に敵の罠がある事にも気付かずに。
司はとっくに千空が蒸気機関を創ると読んでいた。
彼ならどの道たどり着くだろう、と。
見つかりやすく、突撃しやすい場所にクロムを配置したのは千空の特性を利用した罠だった。
重い車両で突撃すれば落ちる落し穴を用意しそこに誘い込むように手を打った。
後は自ら落ちるのを待つだけ……。
悲しいかな、彼は友を助ける為に自ら命を落とす羽目になるのだ。
ただ一つだけ見逃していた事といえばたまたまクロムが落し穴の存在に気付いた事と彼を過小評価していた事だった。
まずはトイレに行った時を狙い手当たり次第に植物などをこっそり持ち帰ったものの……到底役に立ちそうにない。
火を起こそうにもこんな枯れ枝ではつかないとクロムは電池さえあれば……と思ったがあれは身体検査で没収されてしまった。
そのまま夜になってしまい寝ていたクロムはふと目が覚めると……なんと自分の目の前に没収された電池があるではないか。
それが誰によるかも知らずクロムは勝手に顔も知らない大樹という千空の友人がそっと置いてくれたのだと勘違いした。
となれば夜のうちに脱出する他ないと早速火をつけようとしたが……発火の時に出る煙であっという間に脱出しようとしている事がバレてしまった。
奇しくも木で火をつけようとしていたことから電池の事はバレずに済んだものの……それ以外の方法で脱出しなくてはならない。
司帝国の者達と会話をした際クロムは海の水で脱獄というワードが引っかかった。
これまでの千空のやってきた事を思い返す。
過去千空は塩水を電気で分解し水酸化ナトリウムとやらを作っていた。
それならば縄くらい溶かせるのでは……と。
電気はある、後は塩水だ。
しかしこの状況で海水を得るのは難しい、となれば……
自分で生み出すしかない、と。
クロムは必死に汗を流し流しまくって竹の水筒に自らの汗を貯めてその中に電気を流す。
作り方が間違っていた為に作り出されたのは次亜塩素酸ナトリウム、つまり漂白剤なのだが……
それでも十分なアルカリ性を持つ為縄を溶かしていった。
ぐずぐずに解けた縄が切れ牢が壊れる――
クロムはゲンから学んだハッタリを使い檻の中に熊が出たと嘘をついて看守達の意識を一瞬そいだ。
その一瞬さえあればこっちのものだとクロムは竹を使い穴を飛び越えて逃げ出した。
敵は陽に怒られたくなくて落し穴を壊すのが怖くて追っかけてこられない、そう確信したがただ一人恐れない者がいた、そう陽本人である。
たまたま行き止まりに来てしまい陽に追いつかれてしまったクロムは危機一髪かと思いきや……悟ったかのような表情であと数日の命だと陽に告げた。
そしてそのままクロムは口の中から大量の赤いナニカを吐き出した。
口の中を切ったにしては量が多すぎる、どう見ても吐血――と冷や汗が走る陽にクロムはトドメの一撃をさした。
「肺炎」だと。
科学のない司帝国には抗いのない死を意味する病名に陽は悪寒が走った。
現代では医者にかかれば難なく済む病が猛威を振るうかもしれないなど予想出来たのに目の前にして死を感じ取り陽は一瞬体を強張らせた。
血?を浴びさせ混乱をつきクロムは陽の急所をついてその場を脱出した。
こうして千空達と合流したクロムだったがあからさまについている血の後に皆心配したのだが……
なんとシンとカタバミを口の中で噛み赤い血にみせかけただけだった。
しかしここがクロムの強みである。
これまで培った経験を活かしその場で応用出来るところはすごいところだと千空はクロムを褒めたのだった。
