序章 邂逅
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「……うっ……ひっく……かあさまぁ……。」
まだ幼い少女が傍らに横たわる母親にしがみついて泣いていた。母親は動かない。少女は母親の体を揺さぶったが返事が返る事はなかった。とうとう母親は死んでいると少女は理解せざるを得なかった。突然、少女は立ち上がると母親の傍を離れ何処かに走り去る。向かった場所は花が咲き誇る花畑。一輪だけ花を摘むとまた走る。どうやら母親の骸に手向けるつもりらしい。摘んだ花を大事に抱え来た道を戻る途中何かにぶつかり思わずよろめいて尻もちをついてしまい咄嗟に顔を上げる。
「グガガガ……」
相手は何処か苦しそうに低く唸り声を上げている。少女はおずおずと心配そうに大丈夫かと尋ねようとした時だ。
「……助け……ギャァァァ---」
「っ……!?」
突如、相手は頭を抱え禍々しい黒いモヤに包まれると少女に襲い掛かる。恐怖からか、声も出ず動けずにいた少女の眼前に一回りも高い背中が見えたかと思うと次の瞬間にはあの黒いモヤに包まれた相手は煙の様に消えて幻だったのではと一瞬疑ったが眼前に立つ背中はそこにある。現実だった。ようやく恐怖から解放され声が出る様になり少女はお礼を述べた。
「……別に。これが"役目"だから。」
振り返り素っ気なく言い放つ狐の仮面を着けた少年。少女より年上そうだ。
「……ありがとう。このお花ね、かあさまにあげるものだったから無事で良かった……だからありがとう。」
「は?命を取られる所だったのに?」
「でも、あの人私を殺そうとする前に助けてって言ってた。何があったのか苦しそうだったし……」
「……人の話まるで聞いてないし。」
少年は呆れ果てていたが少女は自分より他人を考えるらしい。
「……じゃ、俺は退散………」
「待って。」
「ちょっ……」
少女は少年の服の袖口を思いのほか思い切り掴み引っ張ったのか少年はよろめいたが何とか踏ん張り転ぶ事はなかった。引き留められた少年は何だとばかり驚いていた。
「……手、怪我してる。痛いよね。私を助けてくれた時に?だとしたらまだ行かないで。手当てするから。」
「これくらい掠り傷にすぎないさ。……あんたを守るのが俺の任務。……俺なんて構うな。」
「お仕事?よく分からないけれど手当てをするね。……こうして、……こう……」
「……だからっ……分かった、大人しくしてる。」
「……ありがとう。」
「っ……。」
少女の意外な強引さに少年は仕方なく折れて渋々応じる。少女は微笑むと手当ての続きを始めた。少年は少女の微笑みに少し照れていたが仮面のお陰で少女にバレる事はなかった。少女はテキパキと慣れた手付きで手当てを進めている。しばらくして手当ては終わり少年はおもむろに提案をした。それは少女の母親の骸に花を手向けるのを見守るというもの。戻ると少し離れた所から少女の母親と最期の別れを見守った。少女はもう泣いてはいない。別れを済ませ戻って来た少女は何かを決意したかの様な凛とした眼差しに変わっていた。
「私、誰かが目の前で傷付いたりするのは嫌。だから。強くなって今度は私が守るの!!」
「……話を聞いていたのか?俺はあんたを……」
キラキラと瞳を輝かせて決意固く語る少女に何も言えなくなってしまった少年。
「しょうがないな……。俺の主は随分勇ましく頼もしい。いつも……見守っている。」
そう言うと少年は瞬く間に少女の前から姿を消した。
「また、会えるかなぁ。……よし!今日から頑張って修行しよう!あ……兄上にお願いしていいよを貰わなくちゃ……。」
「……。」
踵を返し急いで帰る少女から姿を確認出来ない場所から見守っていた少年は少女の姿を見えなくなるまでじっと見つめていた。
「……今度こそあんたを失わない。」
何故か悲しげに苦しそうな感じを含ませ少年は呟いた。もう視界から見えない少女を思って。そして今度こそ少年はその場を後にした。
まだ幼い少女が傍らに横たわる母親にしがみついて泣いていた。母親は動かない。少女は母親の体を揺さぶったが返事が返る事はなかった。とうとう母親は死んでいると少女は理解せざるを得なかった。突然、少女は立ち上がると母親の傍を離れ何処かに走り去る。向かった場所は花が咲き誇る花畑。一輪だけ花を摘むとまた走る。どうやら母親の骸に手向けるつもりらしい。摘んだ花を大事に抱え来た道を戻る途中何かにぶつかり思わずよろめいて尻もちをついてしまい咄嗟に顔を上げる。
「グガガガ……」
相手は何処か苦しそうに低く唸り声を上げている。少女はおずおずと心配そうに大丈夫かと尋ねようとした時だ。
「……助け……ギャァァァ---」
「っ……!?」
突如、相手は頭を抱え禍々しい黒いモヤに包まれると少女に襲い掛かる。恐怖からか、声も出ず動けずにいた少女の眼前に一回りも高い背中が見えたかと思うと次の瞬間にはあの黒いモヤに包まれた相手は煙の様に消えて幻だったのではと一瞬疑ったが眼前に立つ背中はそこにある。現実だった。ようやく恐怖から解放され声が出る様になり少女はお礼を述べた。
「……別に。これが"役目"だから。」
振り返り素っ気なく言い放つ狐の仮面を着けた少年。少女より年上そうだ。
「……ありがとう。このお花ね、かあさまにあげるものだったから無事で良かった……だからありがとう。」
「は?命を取られる所だったのに?」
「でも、あの人私を殺そうとする前に助けてって言ってた。何があったのか苦しそうだったし……」
「……人の話まるで聞いてないし。」
少年は呆れ果てていたが少女は自分より他人を考えるらしい。
「……じゃ、俺は退散………」
「待って。」
「ちょっ……」
少女は少年の服の袖口を思いのほか思い切り掴み引っ張ったのか少年はよろめいたが何とか踏ん張り転ぶ事はなかった。引き留められた少年は何だとばかり驚いていた。
「……手、怪我してる。痛いよね。私を助けてくれた時に?だとしたらまだ行かないで。手当てするから。」
「これくらい掠り傷にすぎないさ。……あんたを守るのが俺の任務。……俺なんて構うな。」
「お仕事?よく分からないけれど手当てをするね。……こうして、……こう……」
「……だからっ……分かった、大人しくしてる。」
「……ありがとう。」
「っ……。」
少女の意外な強引さに少年は仕方なく折れて渋々応じる。少女は微笑むと手当ての続きを始めた。少年は少女の微笑みに少し照れていたが仮面のお陰で少女にバレる事はなかった。少女はテキパキと慣れた手付きで手当てを進めている。しばらくして手当ては終わり少年はおもむろに提案をした。それは少女の母親の骸に花を手向けるのを見守るというもの。戻ると少し離れた所から少女の母親と最期の別れを見守った。少女はもう泣いてはいない。別れを済ませ戻って来た少女は何かを決意したかの様な凛とした眼差しに変わっていた。
「私、誰かが目の前で傷付いたりするのは嫌。だから。強くなって今度は私が守るの!!」
「……話を聞いていたのか?俺はあんたを……」
キラキラと瞳を輝かせて決意固く語る少女に何も言えなくなってしまった少年。
「しょうがないな……。俺の主は随分勇ましく頼もしい。いつも……見守っている。」
そう言うと少年は瞬く間に少女の前から姿を消した。
「また、会えるかなぁ。……よし!今日から頑張って修行しよう!あ……兄上にお願いしていいよを貰わなくちゃ……。」
「……。」
踵を返し急いで帰る少女から姿を確認出来ない場所から見守っていた少年は少女の姿を見えなくなるまでじっと見つめていた。
「……今度こそあんたを失わない。」
何故か悲しげに苦しそうな感じを含ませ少年は呟いた。もう視界から見えない少女を思って。そして今度こそ少年はその場を後にした。
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