幻想のかなた
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「ふわ~あ……」
リオは誰も見ていないのをいいことに、あんぐりと口を開け大あくびをした。
少しだけ頭がすっきりする。
とっぷりと日が暮れ、今の時間は21時ごろだ。
暗くなり、街灯に照らされる道をとぼとぼと歩いていく。
あんなに大学の授業が大変だったなんて知らなかった。
お陰でもうクタクタ……。家に帰ったら、お風呂は明日にして寝ようっと。
道なりに行けば自宅があるのだが、ふと道の真ん中に落ちている異質なものを見つけ、それを注意深く見つめた
赤く丸い物体がスポットライトを浴びるようにしてちょうど街灯の明かりに反射している。
どんどん歩みを進めて姿かたちが分かるまで近づくと、やっとそれが何であるか分かった。
「……おもちゃ?」
それはポケモンに出てくるモンスターボールだった。
なんでこんな所に落ちているんだろう。誰かが落としたんだろうか。
キョロキョロと見回してみるけれど、周囲に人の気配はない。街灯がある場所以外は、暗暗とした空間があるだけだ。
地面に落ちているものを触るのは気が引けるけど、落し物にしては珍しいと思う。
拾い上げてよくよく見てみると、傷一つついていない新品のガチャガチャのカプセルだった。
上下で赤白に塗り分けられていて、ご丁寧にモンスターボールの『スイッチ』のようなものもプリントされている。
最近のカプセルはよく出来ているなぁ、と少し感心した。
近所の子供が落としたものなのだろう。
落とし物?本当に?
もう一度周囲を窺ってみるけれど、こんな夜中に子供が外に出ているはずもない。
元の場所に戻そうかと思ったが、なんとなくリオはカプセルを鞄に放り込み家へ向かった。
ゴミは捨てなければ、と常々思っていたからかもしれない。
なぜかそのまま置いておくことはできなかった。
------------------------------------
子供の頃の思い出は不思議なものだ。
カプセルを机に置いたあと、リオは布団の中に潜り込みまどろんでいた。
ポケットモンスターといえば、小学生の頃ゲームボーイの赤をやったぐらいだ。
それもゲームボーイの充電が途中で切れてしまい、ヒトカゲがリザードに進化した辺りのデータが消えてしまってショックを受けてから遊ぶのをやめた。
もうほとんど覚えていないけれど、その後はもっぱらアニメを見ていただろうか。
………。
ガチャン!
「わああ!?」
突然物が割れる音が聞こえてリオは飛び起きた。
すっかり目が覚めて音の出処を探すと、ゴミ箱の隣でカプセルが二つに割れて落ちているのを見つけた。
割れてるというか……開いている。
もぞもぞと這い出し、カプセルをつまみ上げる。
ちょうどガチャポンを開けてカプセルが赤と白、2つに分かれた状態で落ちている。
中身のほうは…赤い方のカプセルの下の辺りに転がっているのを見つけた。
よかった、中身は無事みたいだ。中身を拾ってみると、見覚えのあるポケモンが透明なビニール袋越しに見える。
名前は忘れたけれど、茶色くて耳の長い犬のようなポケモンだ。色んな種類のポケモンに進化することができるポケモンで……それ以外は覚えていない。
とりあえずビニールを剥がして、中のポケモンを机の隅っこに飾ってみた。
ポケモンはくりくりとした目でこちらを見つめている。
「ふわあ……寝よう」
私はもう一度布団に潜り込んだ。
目を閉じると、驚くほどすんなり眠りにつくことができた。
まるで身体が後ろに引っ張られるような、吸い込まれるような感覚……
その日、いつもとは違う夢を見た。
気が付くと私は何もない空間の中立っていた。真っ暗な闇以外何も見えない。
その闇をわずかに照らす頭上からの光に気づき顔を上げると、金色に輝く大きな鳥が飛び去っていくのが見えた。
その大きな羽を動かすたび、どんどん私のいる空間が明るくなっていくように感じる。
綺麗だな…鳥を見てそんな感想が浮かんだ。瞼が重くなる。
再び体が後ろへ吸い込まれるような感覚がして、そして……
目が覚めた。
1話 始まりのモンスターボール<完>
2012.06.01
改2018.2.20
リオは誰も見ていないのをいいことに、あんぐりと口を開け大あくびをした。
少しだけ頭がすっきりする。
とっぷりと日が暮れ、今の時間は21時ごろだ。
暗くなり、街灯に照らされる道をとぼとぼと歩いていく。
あんなに大学の授業が大変だったなんて知らなかった。
お陰でもうクタクタ……。家に帰ったら、お風呂は明日にして寝ようっと。
道なりに行けば自宅があるのだが、ふと道の真ん中に落ちている異質なものを見つけ、それを注意深く見つめた
赤く丸い物体がスポットライトを浴びるようにしてちょうど街灯の明かりに反射している。
どんどん歩みを進めて姿かたちが分かるまで近づくと、やっとそれが何であるか分かった。
「……おもちゃ?」
それはポケモンに出てくるモンスターボールだった。
なんでこんな所に落ちているんだろう。誰かが落としたんだろうか。
キョロキョロと見回してみるけれど、周囲に人の気配はない。街灯がある場所以外は、暗暗とした空間があるだけだ。
地面に落ちているものを触るのは気が引けるけど、落し物にしては珍しいと思う。
拾い上げてよくよく見てみると、傷一つついていない新品のガチャガチャのカプセルだった。
上下で赤白に塗り分けられていて、ご丁寧にモンスターボールの『スイッチ』のようなものもプリントされている。
最近のカプセルはよく出来ているなぁ、と少し感心した。
近所の子供が落としたものなのだろう。
落とし物?本当に?
もう一度周囲を窺ってみるけれど、こんな夜中に子供が外に出ているはずもない。
元の場所に戻そうかと思ったが、なんとなくリオはカプセルを鞄に放り込み家へ向かった。
ゴミは捨てなければ、と常々思っていたからかもしれない。
なぜかそのまま置いておくことはできなかった。
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子供の頃の思い出は不思議なものだ。
カプセルを机に置いたあと、リオは布団の中に潜り込みまどろんでいた。
ポケットモンスターといえば、小学生の頃ゲームボーイの赤をやったぐらいだ。
それもゲームボーイの充電が途中で切れてしまい、ヒトカゲがリザードに進化した辺りのデータが消えてしまってショックを受けてから遊ぶのをやめた。
もうほとんど覚えていないけれど、その後はもっぱらアニメを見ていただろうか。
………。
ガチャン!
「わああ!?」
突然物が割れる音が聞こえてリオは飛び起きた。
すっかり目が覚めて音の出処を探すと、ゴミ箱の隣でカプセルが二つに割れて落ちているのを見つけた。
割れてるというか……開いている。
もぞもぞと這い出し、カプセルをつまみ上げる。
ちょうどガチャポンを開けてカプセルが赤と白、2つに分かれた状態で落ちている。
中身のほうは…赤い方のカプセルの下の辺りに転がっているのを見つけた。
よかった、中身は無事みたいだ。中身を拾ってみると、見覚えのあるポケモンが透明なビニール袋越しに見える。
名前は忘れたけれど、茶色くて耳の長い犬のようなポケモンだ。色んな種類のポケモンに進化することができるポケモンで……それ以外は覚えていない。
とりあえずビニールを剥がして、中のポケモンを机の隅っこに飾ってみた。
ポケモンはくりくりとした目でこちらを見つめている。
「ふわあ……寝よう」
私はもう一度布団に潜り込んだ。
目を閉じると、驚くほどすんなり眠りにつくことができた。
まるで身体が後ろに引っ張られるような、吸い込まれるような感覚……
その日、いつもとは違う夢を見た。
気が付くと私は何もない空間の中立っていた。真っ暗な闇以外何も見えない。
その闇をわずかに照らす頭上からの光に気づき顔を上げると、金色に輝く大きな鳥が飛び去っていくのが見えた。
その大きな羽を動かすたび、どんどん私のいる空間が明るくなっていくように感じる。
綺麗だな…鳥を見てそんな感想が浮かんだ。瞼が重くなる。
再び体が後ろへ吸い込まれるような感覚がして、そして……
目が覚めた。
1話 始まりのモンスターボール<完>
2012.06.01
改2018.2.20
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