体が勝手に…

「なんで俺が…」

 今日アカデミーを風邪で休んだナルトの元に配布されたプリントを渡すべく、サスケはブツブツ言いながらもナルトの自宅へと足を向けていた。

「確か熱があるとか言ってたから、ロクに食べてもないだろうからこのリンゴも持っていってくれないか?」

 ついでと言わんばかりにイルカから持たされたリンゴが入った袋をぶん回しながら、ナルトの家のドアまでやってきた。

「おい、ナルト!此処に置いとくからな!」

 ドアをトントン叩きながら、少々大きめな声で部屋の中に居るナルトに話してかけたのだが、一向に返答の一つもない。

「んだよ!クソッ!めんどくせぇな!」

 サスケはドアノブに手を触れると簡単にドアが開かれ、カーテンも締めっきりのようで薄暗く少々カビ臭いナルトの家のに入り込み、ナルトのいる場所を目指していった。

 するとジメッとした熱気がある部屋のベッドで息を荒く呼吸しているナルトが寝込んでいた。

 サスケは慌ててナルトの傍に近寄ったら、かなりの高熱を出してナルトがうなされていた。

「ウスラトンカチが!何やってんだよ!」

 サスケは舌打ちをしながらもナルトの熱を下げるべく、浴室からハンドタオルを持ってきて、水で絞ってからナルトの額に当てた。

「これだけじゃ足りないな…」

 そう思ったサスケは冷却剤が必要だと、近くの日用雑貨店に行き、急速冷却剤を買ってくるとナルトの脇の下に充てがった。

「これで少しは熱も下がるだろ」

 そのまま持ってきたプリントとリンゴを置いて帰ろうとしたサスケは置こうとしたテーブルがあまりにも汚かったので、プチッと嫌気が差していた。

「あー!!クソッタレが!!」

 暫くしてナルトの意識が戻ってきて、薄っすら目を開けると、何やらいい匂いがナルトの鼻を掠めていった。

「あれ…?俺ってば、何を??」 

 漸く覚醒したナルトが部屋を見回し、ゴチャついていた数々の物やゴミが綺麗に片付いていたのに目を見張った。

「どうしちまったんだってば?!」

 驚いていたナルトの元に飛んできた声があった。

「やっと気がついたか、ウスラトンカチ!」

「えっ!サスケ?!まさかお前が全部やってくれたのか?」

「こんな部屋じゃ病気が悪化するだけだからな!」

 チッと後ろを向きながら、サスケは台所で作っていた物を持ってきた。

「これサッサッと食ったらちゃんと寝てろよ!」

 出来立てのお粥と持ってきたリンゴを摺った物をナルトのいるベッドの横の机に置いた。

「サスケェ〜ありがとうだってばよ!!」

 ナルトは目をうるうるさせながら口を大きく空けていた。

「あ?何やってんだ?」

「だって病人には食べさせてくれんだろ?」

「なっ…!そこまでやるかよ!自分でやれ!」

「まだ熱あるしよー」

 ナルトはハフゥと大きくため息付きながら上目遣いでサスケに病人アピールをしていた。

 その姿に何故かサスケはドキッとしてしまい、仕方なしにナルトに食べさせる事になった。

「ハァー、サスケが作ってくれたのスゲー上手いってばよ!」

「フン、当たり前だ!」

 キュルキュルとした顔でサスケが差し出すスプーンを思いっきり頬張るナルトを一瞬微笑んでサスケは見ていた。

 ナルトはすかさずそれに気が付くと、サスケの顔を覗き込んだ。

「サスケ、今笑ってたってば?」

「笑うか!」

「イヤちゃんと見たってばよ!!」

 ナルトはニタニタしながらサスケを見ると顔を赤くしたサスケは立ち上がった。

「そんなに元気ならもう自分でやれ!」

 逃げるようにナルトの家から出ていったサスケはそのまま走って自宅へと向かっていった。

 取り残されたナルトはサスケが擦ってくれたリンゴをパクリと口へと運んだ。

「リンゴうめぇ~!」

 ナルトは熱で寝込んでいたうちに色々やってくれたサスケに感謝していた。

「熱下がったらサスケになんかお礼しなくちゃな!」

 ニコニコしながら、ナルトはまだ冷気が残ってる保冷剤を充てながら眠りに付いていった。

 一方、慌てて帰ってきたサスケはまだ胸のドキドキが止まらず、何故ナルトにここまでやってやった理由がよく分からずにいた。

「なんで…俺が、アイツのために…!」

 ハアハアと息を切らしながら、サスケもそのまま倒れ込むようにベッドへと眠りに落ちていった。

◇◇◇
 その翌日、サスケも高熱にうなされ、ナルトが看病に来る事になるのはまた別の話である。


    ー了ー
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