俺はいつも考えていた。

父ちゃんに本当の俺の気持ちを話そうか。
昔のような子供染みたイタズラなどは気持ちのすれ違いがあった時に父ちゃんに気を引かせる為だけにやってたようなもの。

和解後の今は何でもって訳じゃねーが、少しは話せるようになってきた。

だけどいかんせん、前よりも物分りのいいヤツに成り下がってしまった。

父ちゃんが大変なのも分かるし、俺達の事も蔑ろにしてるわけじゃねぇ。
むしろ愛情が有りすぎるのが痛い程よくわかる。

だからこそ我が儘が言えなくなって、遠慮までするようになっちまった。

前よりも父ちゃんに対する気持ちが大きくなっていたから、こんな事を父ちゃんに告白したら父ちゃんの事だ、また本気で悩ませちまう。

ボルトはナルトを父親以上の気持ちで想ってしまっているのを本人にはひた隠しにしていくつもりだった。


あの時までは…。


七班での任務を終え、火影塔に報告をしていた。

「今回も無事に終えたようだな。」

「ああ、俺がやってんだぞ！直ぐに終わるってばさ！」

「んな事言って、ボルトなんかミスが多かったじゃないの！時折ボーッとしちゃったりしてさ！」

「なっ、何言ってんだってばさ、サラダ！そんな事ねーよ！」

「ふん、七代目の前だからって格好つけちゃって！」

取り繕く間もないままにサラダに言われ放題のボルトは図星の事を言われて慌てふためいてた。

「あー。分かったってばよ。今日はとりあえず成功したんだ。これで解散でいいってばよ。」

「はい。わかりました！じゃあこれで失礼します。」

七班が火影室を出ようとしたとき、ボルトだけ残るようにナルトに言われた。

「なんだってばさ、俺も疲れてるんだけど。」

「何か悩み事でもあんのか？任務に身が入っていないようだけどよ。」

先ほどの報告でサラダに指摘されてた事をナルトに突き止められて、ボルトは目を反らした。

「べ、別に何もねーよ。」

まさかあの時、父ちゃんの事を考えていて任務に集中出来てなかったなんて言えねーよ。

一瞬ボルトが曇った目付きをしたのをナルトは見逃さなかった。

「何かあんだろ？もう隠し事はしないって約束したじゃねーか！」

机から立上がり、ボルトの両肩をナルトは掴んだ。

「ホントに何でもねーってばさっ！」

ボルトはこんなに近くにあるナルトの顔を直視してしまうと自分の気持ちが爆発してしまうんじゃないかと顔を背け続けた。

「そんなに父ちゃんにも相談出来ねえ事なのか…。」

シュンと寂しそうな顔になったナルトの顔になったのを見て、思わずボルトは叫んでしまった。

「そ、そうじゃねーってばさ！むしろ俺、父ちゃんの事を…！」

「…えっ……？」

ボルトが言うや否や、ボルトの体が勝手に動いていた。

ボルトの両手がナルトの顔を捉えた瞬間にナルトとボルトの唇が重なった。

とても柔らかく、温かみなある優しいキスをボルトはナルトに交わしたなだった。

「……ボルトっ！？」

目を丸くしたナルトは何がなんだか分からなかった。

「…わりぃ、父ちゃん。この気持ちは譲れねーってばさっ…。」

優しく触れるような初めてのキスは互いに言葉を交わさずとも想いを伝えるには充分だった。

直ぐ様ボルトは火影室を後にして、一人残ったナルトは呆然と立ち尽くしていた。

まさかのボルトからのキスで自分の息子の気持ちを知ったナルトはとても複雑な心境の顔で笑うだけだった。