君の残り香【RKRN】夢小説
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真の目的はさておき、俺たちはひとまず一応の目的地である団子屋へ向かった。町までの道には何軒もうどん屋や団子屋がある。その中でしんべヱが最もおいしいと太鼓判を押した、忍たま達に密かに人気のある団子屋だ。
自分たちももう五、六回は食べに来ていて、店の主人とも顔馴染みになっていた。
「いらっしゃい」
俺たちの気配に気づいたのか店の奥から声が聞こえた。いつものおじさんの野太い声とはかけ離れた、耳に心地の良い、さわやかな女性の声だった。
勘右衛門は女性の声にあからさまに反応した。三郎も怪しげな笑みを浮かべている。さすがに他の忍たま達にも人気のこの店の娘に手を出すのはやめといた方が良いと、俺は思った。
「お茶をどうぞ」
現れた声の主、団子屋の娘は声はきれいだが色白ではない。学園のくノ一にももっと可愛い奴は居るだろうが、町で見かける女にしては美人と言える。その程度だった。
俺はあまりこの女には興味を持てない。ところが勘右衛門はこの女に大いに関心があるようだ。
「お決まりですか」
そう尋ねる娘に勘右衛門はみたらし団子を六本も頼んでいた。
その量に驚いたようで怪訝な顔をしていたが、次いで俺たちの注文も聞く。俺たちも勘右衛門の注文には面食らっていたので一泊遅れて三色団子ときなこ団子を一本ずつとそれぞれ頼んだ。
三郎はうどんも頼んでいた。
「おい勘右衛門、そんなに食って大丈夫なのかよ」
「何言ってんだ、お前らに二本ずつくれてやろうと思ったのに」
これを聞いて納得したようで、娘は奥へ下がっていった。
「なかなか美人だと思わねえか」
奥へ下がったのを確認すると、勘右衛門が声を潜めてそう同意を求める。こいつがあの娘に良いところを見せようと思って俺たちに奢ったというのはすぐに分かった。
「いや、俺はそうは思わねえな」
きっぱりというと、勘右衛門は鼻で笑った。嘲笑とも受け取れる笑みを浮かべている。
「はっ、見る目ないな、八左ヱ門。あれくらいが気だての良さと美しさが両立するぎりぎりだっての」
「そうかぁ?」
俺たちの会話を三郎は始終薄ら笑いを浮かべて眺めていた。
しばらくすると娘が団子を持ってやってきた。勘右衛門の皿にも、俺たち二人の皿にもみたらし団子二本、三色団子ときなこ団子が一本ずつ乗せてあった。
「おまけ」
俺たちがきょとんとしていたので、その娘は可愛らしく微笑んでそう言う。それが勘右衛門にはこたえたらしい。だらしない表情をしていた。しかしすぐにいつもの表情に戻る。
「あんた、名前は」
あいつにして
はぶっきらぼうにそう尋ねた。
「恵」
娘は俺たちの湯飲みを盆に乗せながら、こちらを見上げもせずそう答えた。
「お茶のお代わり」
「今持ってきます」
三郎は勘右衛門のことなど知らぬ振りをしてお茶を頼む。
「あ、俺も」
俺もそれに便乗した。娘は何も言わない勘右衛門の方を振り向く。
「あなたも分も、お持ちしますからね」
半ばあいつもお代わりが欲しいが言い出せないのだと決めつけた風であった。ちょっと会釈をしたあとはひたすらに団子に夢中になっている様子の勘右衛門を苦笑しながら眺めた。
こいつは、こんなに初な奴ではなかったはずだ。知り合いの店の娘なんていう手のだしにくい相手、しかも器量は中の上、そんな女相手にこれほどまごつくほどこいつは純真じゃない。
お茶が運ばれてきたとき、俺たちは丁度この後について考えを巡らせているところだった。俺はなぜか今日はあまり女遊びをする気分ではないから裏山にでも行って動物と戯れようか、などと考えていたところである。
娘はお茶を出すとすぐに奥へ引っ込んだ。俺はおもむろに三郎達はこの後どうするのかを尋ねる。
「ちなみに俺は裏山に行って動物と戯れるからな。今日は遊びに行かねえ」
「つまんねえ奴。おい三郎、俺たちは行こうぜ」
「当たり前だ」
きっと苦笑いは隠し切れていない。俺はこいつらよりは素直である自信がある。思っていることが素直に表情に現れてしまうのも、その良い例だ。
「まあ頑張れよ、応援くらいはしてやってもいいぜ」
席を立ってお勘定、と言うと娘が出てきた。
「毎度ありがとうございます。またいらっしゃい」
そう言って笑顔で見送ってくれる所は、まあ可愛いかも知れない。
それきりその娘のことは記憶の片隅に追いやり、裏山で生き物達と戯れて心癒される一時を過ごした。
自分たちももう五、六回は食べに来ていて、店の主人とも顔馴染みになっていた。
「いらっしゃい」
俺たちの気配に気づいたのか店の奥から声が聞こえた。いつものおじさんの野太い声とはかけ離れた、耳に心地の良い、さわやかな女性の声だった。
勘右衛門は女性の声にあからさまに反応した。三郎も怪しげな笑みを浮かべている。さすがに他の忍たま達にも人気のこの店の娘に手を出すのはやめといた方が良いと、俺は思った。
「お茶をどうぞ」
現れた声の主、団子屋の娘は声はきれいだが色白ではない。学園のくノ一にももっと可愛い奴は居るだろうが、町で見かける女にしては美人と言える。その程度だった。
俺はあまりこの女には興味を持てない。ところが勘右衛門はこの女に大いに関心があるようだ。
「お決まりですか」
そう尋ねる娘に勘右衛門はみたらし団子を六本も頼んでいた。
その量に驚いたようで怪訝な顔をしていたが、次いで俺たちの注文も聞く。俺たちも勘右衛門の注文には面食らっていたので一泊遅れて三色団子ときなこ団子を一本ずつとそれぞれ頼んだ。
三郎はうどんも頼んでいた。
「おい勘右衛門、そんなに食って大丈夫なのかよ」
「何言ってんだ、お前らに二本ずつくれてやろうと思ったのに」
これを聞いて納得したようで、娘は奥へ下がっていった。
「なかなか美人だと思わねえか」
奥へ下がったのを確認すると、勘右衛門が声を潜めてそう同意を求める。こいつがあの娘に良いところを見せようと思って俺たちに奢ったというのはすぐに分かった。
「いや、俺はそうは思わねえな」
きっぱりというと、勘右衛門は鼻で笑った。嘲笑とも受け取れる笑みを浮かべている。
「はっ、見る目ないな、八左ヱ門。あれくらいが気だての良さと美しさが両立するぎりぎりだっての」
「そうかぁ?」
俺たちの会話を三郎は始終薄ら笑いを浮かべて眺めていた。
しばらくすると娘が団子を持ってやってきた。勘右衛門の皿にも、俺たち二人の皿にもみたらし団子二本、三色団子ときなこ団子が一本ずつ乗せてあった。
「おまけ」
俺たちがきょとんとしていたので、その娘は可愛らしく微笑んでそう言う。それが勘右衛門にはこたえたらしい。だらしない表情をしていた。しかしすぐにいつもの表情に戻る。
「あんた、名前は」
あいつにして
はぶっきらぼうにそう尋ねた。
「恵」
娘は俺たちの湯飲みを盆に乗せながら、こちらを見上げもせずそう答えた。
「お茶のお代わり」
「今持ってきます」
三郎は勘右衛門のことなど知らぬ振りをしてお茶を頼む。
「あ、俺も」
俺もそれに便乗した。娘は何も言わない勘右衛門の方を振り向く。
「あなたも分も、お持ちしますからね」
半ばあいつもお代わりが欲しいが言い出せないのだと決めつけた風であった。ちょっと会釈をしたあとはひたすらに団子に夢中になっている様子の勘右衛門を苦笑しながら眺めた。
こいつは、こんなに初な奴ではなかったはずだ。知り合いの店の娘なんていう手のだしにくい相手、しかも器量は中の上、そんな女相手にこれほどまごつくほどこいつは純真じゃない。
お茶が運ばれてきたとき、俺たちは丁度この後について考えを巡らせているところだった。俺はなぜか今日はあまり女遊びをする気分ではないから裏山にでも行って動物と戯れようか、などと考えていたところである。
娘はお茶を出すとすぐに奥へ引っ込んだ。俺はおもむろに三郎達はこの後どうするのかを尋ねる。
「ちなみに俺は裏山に行って動物と戯れるからな。今日は遊びに行かねえ」
「つまんねえ奴。おい三郎、俺たちは行こうぜ」
「当たり前だ」
きっと苦笑いは隠し切れていない。俺はこいつらよりは素直である自信がある。思っていることが素直に表情に現れてしまうのも、その良い例だ。
「まあ頑張れよ、応援くらいはしてやってもいいぜ」
席を立ってお勘定、と言うと娘が出てきた。
「毎度ありがとうございます。またいらっしゃい」
そう言って笑顔で見送ってくれる所は、まあ可愛いかも知れない。
それきりその娘のことは記憶の片隅に追いやり、裏山で生き物達と戯れて心癒される一時を過ごした。
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