意地悪ヒーロー/🦈
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ピンチになった時に颯爽と現れ、颯爽と去っていく。
優しくて強くて格好いい、みんなの憧れのヒーロー。
子供の頃、親に連れて行ってもらった映画館でヒーローが出てくる映画を見て以来、私にもいつかヒーローが助けに来てくれるんじゃないかと信じるようになった。
そんなものフィクションだ。現実と映画は違うよと散々馬鹿にされ、口にはしなくなったけど、十六歳になった今でも信じている。
必ずヒーローは存在する。誰のものでもない私だけのヒーローがいつの日か助けに来てくれるって。
◆◇◆
「リドルくん、お願いだから、今日という今日は泊めさせて!」
「毎日ここに来られても答えはいつも同じだ。却下」
「うう……」
「それにウチはもう余っている部屋がない。他をあたることだね」
「……もう、トイレでもいいから」
「いやいや。そこまで成り下がっちゃ、ダメだろ」
項垂れる私に目もくれず、黙々と本を読むのは幼馴染みのリドルくん。そしてその隣で苦い笑みを浮かべるのは同じく幼馴染みのトレイ兄ちゃん。二人ともハーツラビュル寮生で寮長と副寮長を務めている。
厳しいけどしっかり者のリドルくんと優しくて頼れる存在のトレイ兄ちゃん。
昔はよくおばさんの目を盗んではこっそりと遊んだ仲であったが、ここ最近はこの通り。塩っけが強い。
「第一、オクタヴィネル寮生をうちの寮に招き入れると考えるだけでゾッとする。まあ、キミがオクタヴィネルじゃなかったら、少しは考えたかもしれないね」
「身はオクタヴィネルにあるけれど、心はハーツラビュルだもん」
「心がハーツラビュルの奴がオクタヴィネルに配寮されるはずないだろ」
トレイ兄ちゃんはそこまでだが、リドルくんはオクタヴィネル寮を異様に嫌っており、オクタヴィネルの連中は信用できない。関わりたくないの一点張り。幼馴染みとはいえ、オクタヴィネル寮生の私も対象らしく、なにかと邪険に扱われているような気がする。
私だって好きでオクタヴィネルに入ったわけじゃない。
本当はリドルくんたちと同じ寮に入りたかった。だが、どういうわけか、今の寮に組み分けられてしまった。
いやいや、闇の鏡さん。あなたのお目目は節穴ですか?と尋ねたい気分だった。慈悲の精神に基づき、頭脳明晰な生徒が多く集まる寮と言われているオクタヴィネル。慈悲の精神はわからないけど、飛び抜けて勉強ができるわけでもないし、かといって飛び抜けて馬鹿なわけでもない。平均値。アベレージな頭な私が何故。
それだけではない。
生まれも育ちも陸。しかも海からうんと離れた内陸の町。人魚云々どころか海との関わりが一切ない私が何故、人魚の生徒が多い寮に放り込まれたのか理解に苦しむ。
しかし、決められたものは仕方がない。
異種族だらけの寮に不安はあったが、入ってしまえばそんなこともなく、優しい先輩たちばかりで安心した。ただし、一人を除いては。
「寮に帰ったら、フロイド先輩がいるんだよぉ!ほっぺは伸ばされるわ、頭は押し付けられるわ、物騒なことを聞いてくるわで、もうやだ……」
真っ黒い笑顔を浮かべながら、「おら、早くしろよ」と腕を広げてくる昼間のフロイド先輩が脳裏に浮かび上がってきたので、咄嗟に消し去ろうと、机の上に額を押し付け、ぐりぐりと動かす。ひんやりとした感覚が肌に伝わり、気持ちがいい。
「……いや、もうお疲れ様としか掛けてやる言葉が見つからないな。リドルもそうだけど、どうしてそんなにも気に入られるのか不思議だな」
「本当に迷惑な話だよ。アイツがいるだけで調子が狂う」
「私なんて放課後も一緒だよ。シフトが被りまくって気が休まらないや」
とほほ……と肩を落とす。
シフトという言葉で何かを思い出したのか、リドルくんが「開店準備の時間に間に合うのかい?」と懐から懐中時計を取り出しながら呟いた。
その問いに、今日はお休みをもらった、と答えれば、二人は声を合わせて、えっ、と驚嘆した表情を見せた。
「休暇を与えた?あのアズールが?」
「そう……だけど」
「い、いや、驚いた……。モストロ・ラウンジって、いつも見ても忙しそうだから、休みなんてくれないと思っていたよ」
「トレイ兄ちゃんまで。ちゃんと前もって言えば休みは取らせてもらえるよ」
すると、二人は互いに顔を見合わせ、正気か?嘘だろ?とでも言いたげな様子。アズール寮長にどんなイメージを抱いているのやら。
そう不思議に思いながら、差し出された紅茶に口をつける。紅茶はすっかり冷め切ってしまっており、時の経過を物語っていた。
優しくて強くて格好いい、みんなの憧れのヒーロー。
子供の頃、親に連れて行ってもらった映画館でヒーローが出てくる映画を見て以来、私にもいつかヒーローが助けに来てくれるんじゃないかと信じるようになった。
そんなものフィクションだ。現実と映画は違うよと散々馬鹿にされ、口にはしなくなったけど、十六歳になった今でも信じている。
必ずヒーローは存在する。誰のものでもない私だけのヒーローがいつの日か助けに来てくれるって。
◆◇◆
「リドルくん、お願いだから、今日という今日は泊めさせて!」
「毎日ここに来られても答えはいつも同じだ。却下」
「うう……」
「それにウチはもう余っている部屋がない。他をあたることだね」
「……もう、トイレでもいいから」
「いやいや。そこまで成り下がっちゃ、ダメだろ」
項垂れる私に目もくれず、黙々と本を読むのは幼馴染みのリドルくん。そしてその隣で苦い笑みを浮かべるのは同じく幼馴染みのトレイ兄ちゃん。二人ともハーツラビュル寮生で寮長と副寮長を務めている。
厳しいけどしっかり者のリドルくんと優しくて頼れる存在のトレイ兄ちゃん。
昔はよくおばさんの目を盗んではこっそりと遊んだ仲であったが、ここ最近はこの通り。塩っけが強い。
「第一、オクタヴィネル寮生をうちの寮に招き入れると考えるだけでゾッとする。まあ、キミがオクタヴィネルじゃなかったら、少しは考えたかもしれないね」
「身はオクタヴィネルにあるけれど、心はハーツラビュルだもん」
「心がハーツラビュルの奴がオクタヴィネルに配寮されるはずないだろ」
トレイ兄ちゃんはそこまでだが、リドルくんはオクタヴィネル寮を異様に嫌っており、オクタヴィネルの連中は信用できない。関わりたくないの一点張り。幼馴染みとはいえ、オクタヴィネル寮生の私も対象らしく、なにかと邪険に扱われているような気がする。
私だって好きでオクタヴィネルに入ったわけじゃない。
本当はリドルくんたちと同じ寮に入りたかった。だが、どういうわけか、今の寮に組み分けられてしまった。
いやいや、闇の鏡さん。あなたのお目目は節穴ですか?と尋ねたい気分だった。慈悲の精神に基づき、頭脳明晰な生徒が多く集まる寮と言われているオクタヴィネル。慈悲の精神はわからないけど、飛び抜けて勉強ができるわけでもないし、かといって飛び抜けて馬鹿なわけでもない。平均値。アベレージな頭な私が何故。
それだけではない。
生まれも育ちも陸。しかも海からうんと離れた内陸の町。人魚云々どころか海との関わりが一切ない私が何故、人魚の生徒が多い寮に放り込まれたのか理解に苦しむ。
しかし、決められたものは仕方がない。
異種族だらけの寮に不安はあったが、入ってしまえばそんなこともなく、優しい先輩たちばかりで安心した。ただし、一人を除いては。
「寮に帰ったら、フロイド先輩がいるんだよぉ!ほっぺは伸ばされるわ、頭は押し付けられるわ、物騒なことを聞いてくるわで、もうやだ……」
真っ黒い笑顔を浮かべながら、「おら、早くしろよ」と腕を広げてくる昼間のフロイド先輩が脳裏に浮かび上がってきたので、咄嗟に消し去ろうと、机の上に額を押し付け、ぐりぐりと動かす。ひんやりとした感覚が肌に伝わり、気持ちがいい。
「……いや、もうお疲れ様としか掛けてやる言葉が見つからないな。リドルもそうだけど、どうしてそんなにも気に入られるのか不思議だな」
「本当に迷惑な話だよ。アイツがいるだけで調子が狂う」
「私なんて放課後も一緒だよ。シフトが被りまくって気が休まらないや」
とほほ……と肩を落とす。
シフトという言葉で何かを思い出したのか、リドルくんが「開店準備の時間に間に合うのかい?」と懐から懐中時計を取り出しながら呟いた。
その問いに、今日はお休みをもらった、と答えれば、二人は声を合わせて、えっ、と驚嘆した表情を見せた。
「休暇を与えた?あのアズールが?」
「そう……だけど」
「い、いや、驚いた……。モストロ・ラウンジって、いつも見ても忙しそうだから、休みなんてくれないと思っていたよ」
「トレイ兄ちゃんまで。ちゃんと前もって言えば休みは取らせてもらえるよ」
すると、二人は互いに顔を見合わせ、正気か?嘘だろ?とでも言いたげな様子。アズール寮長にどんなイメージを抱いているのやら。
そう不思議に思いながら、差し出された紅茶に口をつける。紅茶はすっかり冷め切ってしまっており、時の経過を物語っていた。
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