廃墟島~滅びの女王と二刀流の剣士~(その4)
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……………………………
ギィ……
馬『寝てるよね…』
翻訳作業に区切りを付け、馬がナギの部屋まで戻ってきたのは日付けが変わって既に数刻が経ってからだった。
ナギはきっと寝ているだろうと予想し、馬は彼を起こさないよう出来るだけ静かに入室した。
ナギ「……………」
馬『おふぅぅっっ!!
ナギさんの寝顔が輝いてるっっ!!』
今宵もやはり月が大きく、月明かりに照らされた室内は明るかった。
そのため部屋の灯りを点けずとも、ベッドで眠るナギの整った顔立ちを存分に堪能することが出来ている。
馬『眠ってるホワイトスノープリンセスに思わずキッスをしちゃった王子様の気持ちがわかるわっっ!!
この寝顔はまさに神が創りあげし芸術作品!!
あぁぁぁぁ、素敵ぃぃ!!』
真夜中の、特に睡魔が襲ってきている時は非常に気持ちが高揚するもので、馬はナギの寝顔を見て感涙しそうになっている。
馬『くっ、何時間でも眺めていたいけど私ももう寝ないと。』
そう考えながら馬は自分用の毛布を床に敷いていく。
夫婦になったのだからナギの眠るベッドで一緒に眠れば良いのに(※現に彼の横に1人眠れるだけのスペースは空いている)、
馬『たまには広々と寝てもらおう♪』
馬の中ではいつまで経っても『居候』の身分が拭いきれず、ナギに対して常に遠慮してしまうのだ。
馬『よいしょっ…と。
あぁー、ソウシさんのカメラを借りてナギさんの寝顔を盗撮したい。』
馬は煩悩と共に床に直接寝転んだ。
以前使っていたマットレスも立て掛けられた状態で置かれているのだが、それを倒して音を立てる事は避けたかった。
馬『カメラも良いけどソウシさんに頼み込んでナギさんの人形を作ってもらうのも良いかも……シンさんと協力してナギさんを縛り上げてもらうのも興奮しちゃうな……ナギさんとの共同作業でハヤテさん用の肉を焼き上げるってのも仲が深まりそう…』
と、眠くなるまで羊を数えるかの如く、馬が自身の煩悩を挙げ連ねていると、
ナギ「………おい、」
馬「ぎゃぁっっ!!」
寝ているはずのナギから声を掛けられ、馬は仰天する。
ナギ「戻って来たんなら起こせよ…」
ナギは眠気眼を擦りながら上半身だけ身体を起こした。
馬「いやいや、ナギ様を起こすなんてとんでもございません!
ほら、横になってください!!」
馬も慌てて身を起こす。
ナギ「…っつうか、何で床で寝てんだ?」
馬「それは勿論、ナギ様に広々と寝てもらうためですね♪」
ナギ「………………」
ナギは無言でベッドをポンポンと叩く。
『ここに来い』という合図である。
馬「は、はい…」
ナギに呼ばれて嬉しいものの、ここでも馬は遠慮してしまう。
しかし、
馬『あぁ、とてつもなく落ち着く…』
実際にナギと同じベッドで身を寄せ合うと、とても快適に感じる。
シンの質問を受けたせいで情緒不安定気味になっていた馬だが、ナギのいる部屋に帰ってきた瞬間にその不安感は忘れることが出来た。
さらに、今こうして直接抱き止められていると、究極の安らぎに感じられ、負の感情は跡形もなく消え去っていた。
ナギ「……日記は読めたのか?」
馬「はい、なんとか。
思ってた通り新婚夫婦の赤裸々日記でしたが、」
『最後は悲しくて怖い結末になります』と、馬が言おうとするその前に、ナギが台詞を被せてきた。
ナギ「その日記に、『嫁さんは地べたで寝てた』って書いてたか?」
馬「へ?書いてませんでしたが…いきなりどうしたんです?」
ナギ「……いつの時代も嫁さんが床で寝るのはおかしいって事だ。」
ナギは目を閉じ、馬の頭を軽く撫で付けてやりながら柔らかい口調で告げた。
彼は先程の馬の取った行動『床で寝る』を暗に咎めている。