廃墟島~滅びの女王と二刀流の剣士~(その4)
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……………………………
馬「この『黒』の部分は船長の言葉をお借りして『闇』にして……その後に続く言葉は『感染』って訳で良いんじゃないですかね。
単語事態が『染つる』の響きと似てますし。」
シン「『闇に感染した』か。
船長が昼間見てきた光景と似ているからそれで良いな。」
シンは馬の翻訳説明に納得し、そのままメモに『闇』と『感染』の言葉を書き足した。
2人の様子を眺めていたソウシが一言告げる。
ソウシ「馬ちゃんってさ、意外と賢いよね。」
馬「むむ、『意外と』ってのが引っ掛かりますね。」
ソウシ「いやいや、ごめんね、馬鹿にするつもりは無くて…ほら、古代語が出来る女性って珍しいから。」
馬達が生きる世界では女性が学校に通う事は珍しくは無いのだが、就学内容と言えばせいぜい文字の読み書きと日常生活に困らない程度の算数ぐらいだ。
古代語を学ぶ人種と言えば高等学校に進学する裕福な家庭の男性ぐらいだろう。
馬「古代語は梅さんに教えてもらったんですよ。」
ソウシ「あぁ、養父の。」
ソウシの脳裏にあの厳つい強面の顔が浮かぶ。
馬「梅さんが、『女は男と違って力が弱い分、知識で乗り切れ!』って言いながら色んな事を教えてくれたんです。」
ソウシ「なるほどね。」
『女に無駄な知識を与えると家庭が上手く回らなくなる』という偏見を持つ男性が多い中、梅の先進的な考えにソウシは感心している。
シン「お前の養父こそ賢いな。」
ソウシが思うように、シンも女性にも勉学は必要だと考える側の人間なので、梅の言い分を称賛する。
馬「ですよねー。
梅さん、あぁ見えて何かの博士号とかたくさん持ってるらしくって、まさに文武両道なんですよ。
初級学校にも行けてなかった私やタケル君に凄く上手に勉強を教えてくれましたし…」
ソウシ・シン「…………」
馬の発言を受けて、裕福だった自分達とは違い、彼女達姉弟は学校にも行けていない境遇にいた事実を思い出した。
ソウシ「馬ちゃんはさ、組み手とか座薬講習会でも動きのキレがあったし、ダンスのセンスもあったし、勉強も大学校にまで行ってたら凄い発見をしてそうだよね……えーっと、そうだな、つまりは天才肌だって言いたいんだ。」
馬「そ、ソウシさん、いきなりどうしたんっすか…」
急にソウシからベタベタに褒めそやされ、自尊心に欠けている馬は愕然とした顔で彼を見つめる。
シン「……………」
シンは目の前の2人のやり取りを黙って聞いているだけだが、ソウシの言う事は強ち間違ってはいないと考えている。
ソウシ「いや、馬ちゃんが小さい頃からちゃんとした英才教育を受けてたら、今頃は凄い著名人になってただろうって思ってね。」
言葉にはされなかったが、ソウシの言葉の後に「勿体無い」という意味合いが含まれていそうだ。
馬「あ、あはは…」
自分を褒め称えてくれるソウシに対し、馬は渇いた笑いしか出てこなかった。
シン「そういえば、お前の小さい頃はどんな暮らしをしてたんだ?」
あまり馬の事情を知らないシンがズバリと彼女の過去について質問をした。
馬「ち、小さい頃ですか?
あー、えっとー、今と変わらずチャランポランでした(笑)!
川でお風呂を済ませちゃうような野生児でね、アハハ!」
馬は笑い飛ばして誤魔化そうとした。
過去の、特に幼少期の出来事はあまり思い出したくないし、知られたくも無い。
しかし、鋭い洞察力のある2人には馬の挙動に感ずるものがあり……
シン『コイツ…自分の過去は知られたく無いのか。』
ソウシ『やっぱり小さい時に何かあったのかな。』
と、的確に察してこれ以上深く追求することは無かった。
ソウシ「それなら2世に期待しよう!
ナギも学校には行ってないのに買い出しの時の計算が凄く速いし、素質は十分にあるから!
ねぇ、シン!!馬ちゃんとナギの子どもに私達で英才教育をしてみないか?」
シン「海賊が家庭教師をするなんて前代未聞ですよ。」
馬に気を遣った2人は自然と別の話題を出した。
しかし、
馬「…………」
昔の事を知られそうになった馬の心臓は未だに早く脈打っており、
馬『あぁ、無性にナギさんに会いたくなってきた……匂いを嗅ぎたい…』
ひたすら最愛の人の顔を思い浮かべては不安感を拭おうとするのだった。