100回目のプロポーズ~私が死なせません!!~
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……………………………
馬がゲオルグの目の前で拐われてから数日後……
タケル「ランバード大将!」
帝国病院のVIPルームに、タケルがノック無しで入室してきた。
タケル「怪我の具合はどうですか!?」
飛行船墜落事故の生存者であるゲオルグを見舞うため、タケルはやって来たようだ。
ゲオルグ「あぁ、もう大丈夫だ。
気持ちだけは今すぐにでも退院出来る。」
ゲオルグはベッドの上からタケルを迎えた。
新聞の一面になる大事故の生存者にしてはかなり元気そうに見え、タケルは安心する。
タケル「それは良かった!!
大将に早く戻ってきてもらわないと書類がとんでもない事になってますから。」
ゲオルグ「前言撤回する、もう数週間は入院しよう。」
冗談か、本気か、ゲオルグの目元は全く笑わずにタケルの言葉に返した。
タケル「……にしても、墜落事故なのに死人が出なかったって奇跡ですね。」
ゲオルグ「あぁ、馬の助言あっての奇跡だった。」
タケル「え?」
ゲオルグ「事前に墜落の可能性を教えてもらっていた。
だから兵達の座らせる場所や操縦士達にも前もって注意勧告をする事が出来た。」
タケル「……凍死者が出なかったのも?」
ゲオルグ「あぁ、ゴム製の靴の着用指示と衣類も人数分載せていた。」
タケルは納得した。
飛行船が墜落し、北国の極寒の山岳地帯に投げ出された悲劇のゲオルグ部隊……しかし、部隊の隊員が誰一人と死ぬこともなく、さらには凍傷なども回避できたという奇跡の背景には馬の能力が絡んでいたのか、と。
ゲオルグ「スタンレー侯爵の脳腫瘍も彼女は言い当てたらしいな。」
タケル「それも聞きました。」
ゲオルグ「戦艦式の件といい、馬には2度も助けられた。
それなのに自分は……本当に酷い事をしてしまった。」
タケル「いえ、海賊なんかを好きになったアイツが悪いんです。」
ゲオルグ「もう2度と会うことは無いだろうな。」
そう言いながらゲオルグは備え付けの机に置かれたウェディングドレス試着時の写真と、クリス司祭に扮するソウシから手渡された木彫りの馬像を眺めている。
タケル「大将、馬をお尋ね者にしないでくれてありがとうございます。」
ゲオルグ「そんな事、受けた恩恵に比べたら容易い事だ。」
帝国会議でゲオルグの花嫁はシリウス海賊団の仲間ではないか!?と糾弾されそうになったが、ゲオルグの大将の権力をもってしてその事実は握り潰された。
ゲオルグ「1年経ったら捜索願いも取り下げるつもりだ。」
タケル「え…」
ゲオルグ「彼女には誰の目にも怯える事なく生活してもらいたい。」
タケル「………………」
そう語るゲオルグに、タケルは何も言えなくなってしまった。
ゲオルグにとって馬は初恋の女性だった。 それ故にどうしても冷静になれず、結果、彼女を傷付けてしまった。
誠意ある謝罪や仲直りをする間もなくシリウス海賊団に拐われた、もとい帰ってしまった馬に対してゲオルグが出来る最大限の詫びとしてこれらの対応をしてくれたのだろうが、果たしてその上司の想いはお気楽な姉に届いているのだろうか、とタケルは考えている。
ゲオルグ『願わくば彼女には健やかな人生を歩んでもらいたい。』
後悔の渦中にいる彼は今、馬の幸せを願うばかりだった。
その後のゲオルグについてだが、彼は生涯結婚する事なく、代わりにモルドー帝国の武神として数々の戦場で功績を上げていった。
彼が遠征する際には結ばれなかった花嫁と2人で映った写真と、式当日に司祭から渡された彫像を必ず持っていたという。
ゲオルグの一途な姿は後々、『拐われた花嫁を生涯待ち続けた悲恋の英雄』として帝国民に長く語り継がれるのだった。