モルドー帝国・後編~死刑囚と純白の花嫁~(最終章)
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名前を入れないと『馬』になるので、あなたの脳内で馬が大暴れするでしょう…お気をつけください。
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リュウガ「潮時だな……おっさん!!
俺の相手をするよりも倒れてる参列者達をなんとかした方が良いんじゃねーか?」
リュウガはニヤリと笑いながら、梅と距離を置くと自身の剣を鞘に収めた。
梅「あ?どういう意味、」
ドドッドドッ……
何処からか重たげな足音が聞こえてきたかと思えば、
モ゙ーーーーーー
巨大な牛が1頭、チャペル内へと侵入してきた。
タケル「牛!?」
ハヤテ「じゃあな、馬の弟!」
タケルが牛に気を取られている内に、ハヤテが撤退体勢に入る。
ゲオルグ「暴れ牛か!?
……くっ、ヴァイカート氏!!タケル!!
至急、参列者達の安全を確保してくれ!!」
興奮した牛はかなり狂暴だ。
頭から突進されたり、後ろ足で蹴り上げられたりしたら柔な人間などただでは済まない。
ゲオルグはタケル達に直ちに参列者達の身の安全を優先するように呼び掛けたが……それは馬をナギに譲ってしまう事になるという苦渋の決断でもあった。
軍隊生活において、一個人を優遇するよりも複数の命を優先する事は当然と考えられている。
ゲオルグは根っからの軍人気質だった。
愛する馬よりも倒れている複数の参列者達を救わなければならなかった。
ナギ「……………」
シンと生物兵器(※暴れ牛)のおかげでゲオルグの意識を逸らし、無事に馬を手中に収める事が出来た。
ギュッ…
久し振りに触れた最愛の人の身体は、さらに小さくなってしまっているように感じられた。
ナギ「……ここから出るぞ。」
まだまだ馬を取り戻せた感慨に耽っていたいところだが、
「もう1頭行ったぞー!!」
再び不穏な言葉が聞こえてきたので一先ず自分達の安全を確保する事にした。
ソウシ「ナギ、こっちだ!!」
シリウスメンバーが逃走している間、
梅「タケル、シシマイ被って牛を引き付けろ!!
マタドールみてぇに(笑)」
タケル「アホか!早く頭抑えろ、ジジィ!!」
梅とタケルは牛の相手をし、
ゲオルグ「立てそうか!?」
ゲオルグは意識の無い参列者達の気付けに当たっていた。
……………………………
リュウガ「おい、シン!!こっから乗ってく馬の準備は!?」
リュウガは走りながら、シンに尋ねた。
シン「先の茂みに繋いでます。」
汗をかくような事は極力したくないシンなのだが、そんな彼も珍しく全力疾走をしながら答えている。
トワ「シンさん、結局牛も連れてきてもらったんですね。」
シン「……羊も豚もな!!
あの辺り一帯の家畜全部だ!!」
シンはヤケクソ気味に答えた。
乗馬が得意だという単純な理由で、気の毒な事に、シンはリュウガから今回の生物兵器の調達係に任命されてしまった。
調達係イコール、畜産物を買い占めて来いという命令を受けたシンはトワと共に酪農地まで赴き、シリウス海賊団の財力で物を言わせて大量の家畜動物達を購入してきた。
それら全てを引き連れた(※正確には家畜を率いた酪農家を引き連れた)シンは、チャペル前で一気に動物達を解き放ったのだ。
銃を恐れる事なく警備の兵に向かっていく牛や羊はまさに生物兵器と化し、非常に良い仕事をしてくれた。
シン「……オレも追い掛けられて散々だったんだぞ!!」
シンの白いシャツにはくっきりと羊の蹄跡が残っており、その時の屈辱を思い出した彼は苛立ちを隠せないようだ。
メンバーの中でも後方を走っているのはソウシとナギ、そして、ナギに抱えられ、
馬「…………」
人形のように固まっている馬がいた。
ソウシ「大丈夫?」
ソウシは、負傷中の身でありながら馬を抱き抱えたままで走るナギの身を案じていた。
ナギ「……鎮痛剤が効いてます。」
ナギは自身の体調を答えた。
彼の表情を見る限り、嘘ではなく本当に平気であるように窺えた。
ソウシ「なら良かった。」
その時、ずっと黙っていた馬が口を開いた。
馬「また会ったな、宦官の男。」
無表情だった彼女がニヤリと笑う。
ナギ「……?」
ソウシ「え、」
ナギには馬の言葉の意味がわからなかったが、心当たりのあるソウシは自身の心臓がドキリと高鳴るのを感じた。
ソウシ『もしかして今の馬ちゃんは珠さんだったりするのかな?』