モルドー帝国・後編~死刑囚と純白の花嫁~(その8)
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梅「さて、アホなタケルは置いといて。
馬、本当に良いのか?」
改めて梅が真剣な表情で問う。
真剣な表情とは言えども、彼のトレードマークの黒いサングラスのせいでハッキリと窺えないのだが、声の雰囲気から伝わってくる。
馬「何が?」
梅「この結婚、昨日のおめぇは納得してなさそうに見えたからな。
あの後タケルと心配してたんだぞ?」
馬「えっ、タケル君も?」
タケル「あぁ、お前の凹みっぷりが見てらんなくてさ。
俺が大将を勧めたけど、それが本当に馬のためになんのかわかんなくなった…」
梅「タケルのやつ、心配するあまり元婿殿の行方をいちいち調べたりしてたんだぞ(笑)」
再び梅は豪快に笑いながらタケルのシスコン秘話を暴露した。
タケル「ちょっ、ジジィ!余計な事言うなって…」
馬「……………」
逆に馬はナギの話題を出されたために顔を曇らせている。
梅「なぁ、やっぱり元婿殿と一緒に、」
馬「梅さん、タケル君!!」
梅の言葉を遮るようにして、馬は2人の名前を呼び、
馬「私は今日ゲオルグさんに嫁ぐって……もう決めたんだ♪」
意外と軽い口調で自分の気持ちを述べた。
タケル「けど、」
馬「タケル君、シリウス号は出航しちゃってるんでしょう?」
シリウス号が既にモルドー帝国から発っている事は、昨日の時点で馬もゲオルグから聞かされていた。
タケル「……アイツが脱獄したその日の昼にそれらしい船が北に向かって出航したって記録が残ってた。」
馬「そっか……ナギさん達も私の事を見限ってると思う。
だからと言ってはあれなんだけど、これからはゲオルグさんと家庭を作っていく努力をしていきます!」
馬は身内2人を安心させるためにも笑顔を作る。
今日の彼女はウェディングドレス姿で大層艶やかな乙女に見えるが、今の顔にはかつて梅達と過ごしていた頃と変わりないあどけなさが残っていた。
梅「…………」
タケル「…………」
梅とタケルの目には、気丈に振る舞う馬の姿が痛ましく映っていた。
梅「馬がそう言うんなら……俺は応援するぞ!!」
切り換えの早い梅は娘の選んだ道を否定せずに応援することにしたようだ。
そして、
梅「よーし、ほらコレ!」
梅はニヤリと笑いながら大きな皮袋を馬に差し出した。
タケル「さっきから気になってたんだけどよ、何入ってんだ?」
馬「な、何だろね、嫌な予感しかしない。
前もこんなノリで生きた魚を丸ごと貰ったんだよね……うゎ。」
タケル「生きた魚!?それはキツいな……うゎ。」
袋の中身を見た姉弟は同じ反応を示した。
中に入っていたのは……
梅「ヤマトの縁起物『シシマイ』だ!
これをバージンロードで馬と2人でやろうと思ってな(笑)」
馬「ぶふぉっ(笑)!?」
馬はバージンロードをシシマイが練り歩くシュールな光景を想像して噴き出してしまった。
一方、
タケル「はぁ!?何言ってんだよ、頭おかしいんじゃねぇか!?」
3人の中で一番まともなタケルだけは梅の奇抜な発想を止めようとする。
馬「梅さん…それ、面白いかも(笑)」
タケル「いや、ランバート大将が横にいるのに、面白いとか絶対ダメだろ!」
ゲオルグ相手におふざけは許されないだろうと、タケルは真面目にツッコんだ。
梅「是非とも俺はコイツ(※シシマイ)でランバート、もとい新婿殿の頭をガブリと噛んでやりてぇんだけどな!」
馬「ぶぶふぉっっっ(笑)」
ますますシュールな光景を想像し、馬は鼻と口から色んな物を噴き溢した。
タケル「うわっ、汚ぇなっ、鼻拭け、鼻っっ!
…って、俺の服で拭くなよ、アホ馬!!」
タケルは必死になってめちゃくちゃな2人の相手をするのだった。
梅「やっぱり馬が前だろ。」
馬「えー、でも私が前だとゲオルグさんの頭をかじるのは無理じゃないかな?」
タケル「だから、やめろって!!」
コンコン…
馬「あ、誰か来た。」
馬達がシシマイを囲んでなんちゃって親族会議を開いていると、控え室の扉がノックされた。