モルドー帝国・後編~死刑囚と純白の花嫁~(その5)
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……………………………
結局、ゲオルグが帰って来れたのは夜も更けた頃だった。
馬がゲオルグのために料理を作ったという報告を受けた彼は、夜半にも関わらず彼女の料理を全てたいらげてしまった。
遅い夕食を終え、入浴を済ませたゲオルグは馬の控えている寝室へと向かった。
ガチャ…
馬「お、おかえりなさ…ぐぅ……はっ、いかんいかん!」
室内では、今にも眠ってしまいそうな馬が昨晩のように床に寝床を作って待っていた。
ゲオルグ「すっかり遅くなってしまった。」
ゲオルグは馬を軽々と抱き上げてベッドの上に下ろした。
馬「いえいえ、お疲れさま………ぐぅ……はっ、ダメダメダメ!」
馬は必死に睡魔と戦っている。
相変わらず面白い言動をするんだな、とゲオルグは感心しながら、
ゲオルグ「馬嬢、夕食は非常に美味しかった、ありがとう。」
と、感想と共に感謝の気持ちを伝えた。
馬「いえ……お気になさら…ぐぅ…」
ゲオルグ「待たせてしまったな、もう休んでくれ。」
馬「ふぁい……ぐぅ…………」
ゲオルグの許可を得てから馬は本格的に眠りに就いた。
暫くして、
確実に馬が眠った事を確認してから、ゲオルグは彼女の身体を抱き寄せた。
寝入ってしまった馬はちょっとやそっとの事では起きない。
ゲオルグ『…………』
ゲオルグは少しだけ気になっていたことを確かめようとした。
彼は貴族の女性達の香水の匂いが苦手だった。
そのため、馬には香水を使わせないようにルイーズに言い付けていたのだが、ずっと馬からは何とも言えない良い香りがしていた。
その原因を探ろうと、馬の首筋を直接嗅いでみた結果……
ゲオルグ『やはり、馬嬢の体臭が甘いのか。』
と、納得した。
ほんの僅かな間なのに、彼女の首筋の匂いを嗅いでいると雄の本能が刺激されそうになった。
しかし、ゲオルグは医師の言葉を思い出し、鋼の精神で堪え忍ぶ。
ゲオルグ『……結婚してからだ。』
こうしてゲオルグ邸の滞在2日目も、馬は何事もなく夜を過ごしていくのだった。
……………………………
その後、馬とゲオルグの同棲生活は非常に順調だった。
ゲオルグが仕事でいない時、馬はルイーズとの会話に花を咲かせていた。
ルイーズがファッションについて熱く語るのを、うんうん、それからそれから、かーらーの!?…等、馬は熱苦しい相槌や合いの手を入れて聞いていた。
他にも、朝昼晩の食事前には必ず厨房に行き、ジェフの横で調理過程を見学して味付けのメモを取ったり、隙あらばダニエルの調理補助をしたりと、意外と忙しい日々を送っていた。
そんな馬の評判は、使用人達の間ですこぶる良かった。
「馬様がお使いになった後の浴室はとても綺麗なの。」
「寝室も綺麗に使ってくださるわ。」
馬自身メイドの経験があるので、彼女達の目線に立ち、あまり手を煩わせないよう気を付けて生活していた。
その他にも数々のバイト就労経験から、『挨拶をしてくれる客』『感謝の言葉を伝えてくれる客』のありがたみを知っている馬は、積極的に挨拶と「ありがとう」を伝えるようにしていた。
ゲオルグ邸の使用人達に自分の世話をしてもらうのが申し訳なく感じる分、彼女達の労を労いたかったのだ。
馬のその想いは使用人達にも届いており、
「馬様は他の貴族の令嬢には無い、人の痛みがわかるお嬢様だ!」
と、話題になっていた。
ジェイガン「流石ゲオルグ様の選んだお方ですね、使用人達から抜群の支持を得ていらっしゃいますよ。」
他人に対して厳しい評価をしがちなジェイガンですら馬を称賛していた。
ゲオルグ邸の使用人達は皆、主人と馬が結婚する日を指折り待ち望んでいた。
しかし、婚礼式まで後3日という日の晩、重大な問題が発生する。
ガシャァァァンッッ!!!
何処かの部屋でガラスの割れる音がした。
「あら、ゲオルグ様のお部屋かしら?」
「もしかして泥棒!?」
ゲオルグ邸の使用人達が何事かと音がした部屋に向かうと、
男女の揉める声が聞こえてきた。
「ゲオルグ様と馬様……?
痴話喧嘩かしら、珍しい。」
馬「ナギさんのところに行かせてくださいっっ!!お願いします!!」
悲痛な声で懇願する馬の瞳からはボロボロと涙が溢れており、
ゲオルグ「そんな事は絶対に許可出来ない!!」
ゲオルグの方は馬の腕を抑え込みながら声を荒げていた。
ジェイガン「どうなさいましたか、ゲオルグ様!?」
あまりにもらしからぬ2人の様子に、ジェイガンが慌てて間に入った。
(その6に続く、あとがきへ)
【あとがき】
主人公の絶望の部分が触りだけになってしまいました(;´д`)
次章ではもう少し病んでもらう予定です。
そして、シリウスメンバー達にはそろそろ主人公の奪還計画を立てていただきたいところです。
また明日、新しい章を上げますので、少々お待ちくださいませm(_ _)m
馬ときどき魔王 管理人より(※と、当時の管理人が申しておりました!)。