モルディ市国~貴族と軍人と海賊~(その3)
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名前を入れないと『馬』になるので、あなたの脳内で馬が大暴れするでしょう…お気をつけください。
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クイックステップで流れる曲は事前に告知されていたので、何度も何度もシンとレコードで聴いていた。
そのおかげで、馬は指パッチンでメロディーを奏でられるくらい、今流れている曲を知り尽くしている。
馬『曲の終了まで………後少し!』
聞き慣れているこの曲が現在ラストスパートに入っていることを、馬達は十分承知しているのだが……
シン『体力の限界か?』
シンは馬の動きから、彼女が限界に近付いていることに気が付いた。
練習の時から本番用のヒールを履いて練習していたが、問題は靴ではなく宮殿の床の方にあった。
馬『っっ…足が…』
シリウス号の甲板は木製だが、ダンスホールの床は大理石で出来ており、練習の時よりも固くて足の負担になっていた。
シン『ほんの少しだが、馬の足が遅れてきている…』
練習を共にしてきたコーチなだけあって、シンは馬の些細な変化を的確に感じ取っていた。
シン「おい、ハナコ嬢。」
シンはここにきて初めてダンス中の馬に話し掛けた。
馬「は、はい…」
シン「今までよく頑張ってきたな。
ほら、アイツも見ている……舞踏会が終われば結婚するんだろう?」
そして今まで練習でも見せなかった態度……ツンデレの彼が初めてデレ(優しい言葉を掛け)る姿勢を示したのだった。
馬『け、結婚っっ!!』
シンの言葉で馬の気力が一気に回復した。
ナギとの結婚のために今日まで汗鼻水垂らして頑張って来たのだ、足が痛いくらいで気を抜くわけにはいかない!
シン「後少し、後少しだけ持ちこたえろ!」
馬「はい!!」
こうしてシンの絶妙な言葉掛けにより、馬は再び強い意志を持ってラストスパートに臨む事が出来たのだった。
……………………………
「素晴らしいペアだった!」
「つい見惚れてしまいましたわ。」
ギャラリー達は口々に賛辞を述べ、ダンスホール中央からサイドの壁際まで戻ってきた馬達を拍手喝采で迎えた。
優勝を掛けた競技ではなく、ただの仮面舞踏会でこのような現象が起こる事はまずないのだが、それだけ馬とシンのダンスに魅了されたのだろう。
シンは馬の手を引きながら人気の少ない壁際まで連れていった。
やはり道すがら、幾人ものゲストが2人と話したいがために声を掛ける素振りを見せたが、その度にシンは鋭い眼光で黙らせていた。
シン「ハナコ嬢、」
演技終了後のシンコーチからの一言である。
運動直後のため、彼の頬も微かに紅潮しているのが普段とは異なる点だ。
シン「これでお前とオレのペアは解消だな。」
馬「え、」
シンの口から出た言葉は、次の舞踏会に向けての意気込みや今後の対策などではなかった。
そう、シンの本業は航海士でダンスコーチではない。
それは馬も同じで、彼女の職業はシリウス海賊団の雇われメイドであって、プロの踊り子ではない。
最終目的だった今日の舞踏会が終われば、明日からまたシンと馬は鬼畜航海士と奇人メイドとしての生活に戻るのだ。
馬「…………」
日常になりつつあったシンとの猛特訓の方が実は非日常で、もう彼とペアを組んで踊ることは無い……そう考えると、馬の心にはなんとも言えない寂しさが募る。