シャハイ島~蝶とファラオの花畑~(その3)
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ソウシ「じゃぁ、馬ちゃん、またここに迎えに来るから。」
馬「うーっす、よろしくお願いしまーす!」
元気に挨拶をする馬はいつもの彼女に戻っている。
ソウシは優しく微笑んでから部屋を後にした。
次に彼が向かう先は厨房だ。
……………………………
厨房の扉の奥からザクザクと野菜を刻む音がする。
中にいるナギはどうやら作業中らしい。
果たして、調理中の彼がしっかりと話を聞いてくれるかどうか…
ソウシ『わからないけど、とりあえず行ってみないとね。』
ソウシは極力楽観的に考え、厨房の扉を開けた。
ソウシ「ナギ、入るよ。」
ナギ「…………どうぞ。」
ナギは大量のキャベツを切っているようだ。
廃棄する部位、葉の部分、芯の多い部分と素早く器用に仕分けしながら切っている。
ソウシ「ちょっと話があって。」
ナギ「………切りながらでいいですか?」
ソウシ「構わないよ。」
ザクザクザクザク…
ナギ「………何の用ですか?」
ザクザクザク…
ソウシ「うん、馬ちゃんのことなんだけど。」
ザクッ…ナギの手が止まった。
ナギ「馬が何かしでかしましたか?」
ナギはチラリとソウシの方を見る。
ソウシ「いやいや、彼女は何もしてないよ」
ナギ「……………」
ザクザクザク…ナギは再度包丁を動かし始める。
ソウシ「馬ちゃんはさ、ビックリするくらい人懐っこいよね。それに純粋な子だなって思うよ。」
ナギ「………」
ドクターは何が言いたいのだろう、ナギは疑問に感じながらもキャベツを切る手を止めずにいる。
ソウシ「さっき馬ちゃんと話してる時に、彼女の首にいくつかキスマーク付いてるのを見つけたんだけど…あれ付けたのナギかな?」
ザク…………… またもやナギの動きが止まる。
ソウシ「馬ちゃんは誰が見ても分かるくらいナギのことを好きみたいだし、彼女も良いって言ってるんなら別に私は何も言わない。」
ナギ「………」
ソウシ「…でももし嫌がってたら手を出すのはやめなさい。純粋な馬ちゃんを娼婦のように扱うのはダメだよ。」
優しく諭すように話すソウシ。
ソウシ「ナギも馬ちゃんのこと気に入ってるんだろう?」
ナギ「………」
ナギは言葉に詰まってしまう。
身内であるシリウスメンバーのソウシには自分の色恋話をあまり知られたくないのだ。
それでもソウシは話を続ける。
ソウシ「彼女は恋愛経験も無さそうだし、何もかもが初めてみたいだからもっとゆっくり気遣ってあげて欲しい。
私の可愛い弟子が壊れていく様を見るのは忍びないからね。」
ナギ「………俺は、」
リュウガ「ナギちゅぁあああん、帰って来ましたよぉぉお!」
ナギの話を遮り、早朝から千鳥足のリュウガが厨房へと乱入してきた。
ソウシ「船長…また朝まで飲んでたんですか?」
ソウシが心配そうに尋ねる。
リュウガ「当たり前だろ!!! それよりもナギ、昨日の馬が言ってたこと…当たってたぞ。」
リュウガはニヤリと笑ってナギの方を向く。
ナギ「…船長が何かして女に刺されそうになったんでしょう?」
ナギは馬の予言めいた発言をあまり気にしていなかったため、適当に普段のリュウガに起こりそうなトラブル例を挙げた。
リュウガ「俺はそんな事しねぇよ!……それよりも、ナギ。 お前バラ疹って知ってるか。」
ナギ「……?」
ソウシ「…何の話ですか?」
会話の流れが掴めないソウシは訝しげな顔をしている。
リュウガ「娼婦でバラのような発疹…と言えば?」
ナギ「………?」
ナギにはリュウガの発言の意図が掴めない。
代わりに理解出来たのは医者であるソウシの方だった。
ソウシ「ちょっと待って船長!まさかバラ疹のある娼婦と交わってないですよね?」
リュウガ「あぁ、俺はまだ海賊やってたいんでな。 その娼婦に、すぐに医者に診てもらえ、って言ってから店を出てきた。
…で、その後は一人寂しく深酒してた(笑)」
ソウシ「うん、それが正解です。しかし、高級娼館にもいるんですね…」
リュウガとソウシの間では会話が成立している。
二人のやり取りを聞いていても、やはり意味が分からなかったナギはソウシに尋ねた。
ナギ「…バラ疹って何ですか?」
ソウシ「あぁ、ナギは知らないんだね。怖い病気だから知っておいた方が良い。」
ナギ「…病気?」
リュウガ「昔、船乗りの間でな、噂になってたんだよ。 モルドーの下層売春宿界隈には鼻の削げた娼婦が沢山いるってな。」
ソウシ「瘡毒※っていう病気だよ。」
ナギ「そう毒?」
リュウガ「娼婦の赤い発疹には気を付けろ、小さなバラみてぇな発疹、バラ疹には近付くな、ってな。
モルドーの船乗り達が言ってたんだ。」
ソウシ「厄介なのがね、瘡毒の初期の頃って自覚が無くて、感染者が健康な人と交わってしまうんだよ。 そうすれば交わった人も感染してしまう。
バラ疹が出てる段階の娼婦と交われば確実に感染するだろうね。
瘡毒の末期はね、全身に発疹が広がり、鼻が削げた状態になって苦しむんだって。」
ナギ「………」
リュウガ「良かったな、ナギ。知らずにヤってたら鼻が無くなってるところだぞ(笑) 馬に感謝しとけよ!」
ナギ「……そうですね。」
ソウシ「それにしてもバラ疹が出るまで進行してるなら………今からでも薬が効いたら良いんだけど…」
ソウシはブツブツ呟きながら医務室へと戻って行った。
リュウガ「じゃ、俺も飲み直すわ!」
リュウガは近くにあった酒瓶を勝手に手に取り、厨房を出ていった。
ナギは野菜を切る作業を一旦中断し、自室に戻ってみることにした。
先程のリュウガの話を聞いたからか、無性に馬の様子が気になったのだ。
(※瘡毒=梅毒のことです。現在は初期段階でのペニシリン投与が有効で、完治させることが出来る病気です。)