シャハイ島~蝶とファラオの花畑~(その2)
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名前を入れないと『馬』になるので、あなたの脳内で馬が大暴れするでしょう…お気をつけください。
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馬「ここって公園ですかね。」
ナギ「……多分な。」
現在いる広場の入り口には『アッパレ花畑公園』と書かれているのだが、二人はまだ気付いていない。
ナギ「…………ふぅ。」
ナギも流石に疲れたのか、近くにあったベンチに腰掛け、タキシードの上着を脱いでから首元を寛げる。
馬も急いでベンチまで追いかける。
そして、自分はベンチではなく、ナギの眼前の地面に直接座り込んだ。
ナギ「………ドレス汚れんだろ。」
ナギが呆れて言うも、馬は首を横に振った。
馬「転んだ時点で手遅れです! それと、ナギさんを疲れさせちゃったからには戒めとして私は直接地面に座ろうと思います!」
座っている位置関係から自然と上目遣いになる馬。
ナギはチラリと見える胸の谷間に気付き、すぐに視線を反らした。
ナギ「……俺は女を床に寝かしたり、座らしたりする趣味は無いって言ってるだろ。」
そう言い放ち、馬の手を取り無理矢理立たせた。
馬「ぬぅ! 馬死すとも自由は死せず! 私に反省する自由を与えたまえ!!」
いつものようにギャーギャー喚く馬。
彼女の今の装いと振る舞いはアベコベだ。
ナギ「……お前、本当に見た目と中身が一致してねぇな。」
思ったことを呟くナギ。
馬「……ぐっ…」
大人しくナギの横に座る馬。
馬「見た目と中身が違ってるとダメですか?」
急に真剣な物言いになる馬。
ナギ「………は?」
こういう時はナギの方が戸惑ってしまう。
馬「見た目はどんなでも、私は私です! 仮面を被っていようがドレスを着ていようが、全部私です! つまり、どんな姿になっても私はやりたい事をやりますよ!ウヘヘッ♪」
馬はナギの顔を見ながら悪そうな笑みを浮かべた。
何をする気だ? と、訝しげなナギのことはお構いなしに、馬はいきなりナギの腕を… ガシッ! と掴んだ。
馬「ナギさんの腕取ったどーー!! …あぁ、逞しくて固い肌触り、たまりませんなぁ…」
スリスリとナギの腕を愛おしそうに頬擦りをする馬。
相も変わらず彼女は変わった言動とおかしな行動を取っている…それはいつも通りの馬ということ。
ナギ『…なら、いつも通りじゃねぇのは俺の方か。』
ナギはぼんやりと考えていた。
夜の公園のベンチで、馬に腕を気安く触られる自分が不思議でしょうがなかった。
ナギは昔から人を信頼することがなかった。
それは彼の生い立ちに原因がある。
幼少期の頃、彼は親から麓の山に捨てられ、その山を根城としている山賊に拾われ命を繋いだ。
それからは生きていくために山賊と他の同じ境遇の孤児達と共同生活をしていた。
その時の暮らしは幼いナギにとっては辛いことの連続でもあった。
山賊として幅を利かすようになる少し前、ふと街まで出たことがある。
そこで目撃した光景が、自分と同じ年頃の子どもが家族と幸せそうに歩く姿…ただその姿を見ただけなのに、その場から一歩も動けなくなってしまった。
家族なんていない自分の境遇に絶望し、世界中で自分を必要とする身内は誰もいないのだと気付いてしまったのだ。
絶対的な孤独…それを味わってしまったナギはこれを皮切りにより荒れた日々を過ごす事になる。
強盗、暴行行為は日常茶飯事だったし、人には言えないことも沢山した。
山賊連中からは『山賊としての箔が付いてきた』と、褒められはしたものの、堕ちていく自分を止める者は誰もいない… 自分の事を叱ったり悲しんだりする身内は誰も居ないのだから好き放題やり続ければいい、そう思いながら、自暴自棄な生活を送っていた。
しかし、そんなナギにも臆することなく話しかけ、注意してくる人間が突然現れたのだ。
もう二度と逢うことはないけれど… ナギが唯一信頼出来ると思えた人物…その人物は自分と年が近い少女だった。
そして、その少女がナギの初恋の相手でもあったのだろう、彼女との思い出は今でも色褪せることは無い。
ナギ『……馬はアイツに少し似てるのかもな。』
初恋の人物と馬を重ね合わせたナギは感慨深く馬の方を見た。
ガリッガリッガリッ……
馬「〜〜♪(※鼻歌を機嫌良く歌っている)」
ベンチから立ち上がり、いきなり地面を石でガリガリと堀り始めた馬を見て、ナギは先程の考えを撤回したくなった。
野犬みたいな奴が自分の初恋の相手でたまるか、と、ナギはそっと考え直した。
ナギ「……………」
とりあえず奇行に走る馬を見守ることにした。
ガリザッガリザッザ…
それからすぐに、
馬「成仏なさい!!」
という声が聞こえた。
掘った穴に向かって馬は何やら言ってるみたいだ。
バッバッバッ…
逆に今度は上から土をかけて埋め始めた。
ヤマト女性特有の長い黒髪の女が、闇夜に溶け込みながら不可解な行動をしている様子は、はっきり言って不気味としか言いようがない。
しかし、ナギはそれでも黙って見守り続けた。
野犬のような穴掘りの結末が気になる、という理由も正直あった。
馬「お待たせしました〜、ここの土は柔らかくて凄く掘りやすかったです!」
ナギ「…何してたんだ?」
馬「さっきの転倒の原因となった憎きバナナの皮を無惨に埋葬してやったでアリマス!!」
馬は敬礼しながら理由を説明した。
一仕事を終えた彼女の表情は実に満足気だった。
ナギ『……確かにコイツはバナナの皮で転んでいたが…わざわざ拾い上げていたのか。』
と、 ナギは変なところで関心してしまった。