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高級レストランのVIPルームに通される一同。
馬はボーイに席まで案内され、椅子に促されてもずっと緊張したままだった。
馬の直近の席にはトワとハヤテが着席した。
並びからして
馬は若人部隊に配置されたみたいだ。
ハヤテ「………」
馬「…………」
トワ「……………」
3人共に無言である。
いつも五月蝿すぎて窘められる3人が全員集結しているにも関わらず無言である。
馬「今日は散々でしたよ…」
先に沈黙を破ったのは
馬だった。
ハヤテ「何が?」
トワ「何がです?」
馬「途中でね、シンさんに誘拐されて。 止めてくださいって言ったのに、嫌がる私を何度も何度も…」
馬は身震いしながら今日あった出来事を誤解を招きそうな表現で説明する。
ハヤテ「なっ////シンにそんな趣味が、」
シン「
馬!!!」
馬「ヒィッッ!」
勿論、誤解を招きそうな表現は同じ場にいるシンにもしっかりと聞こえている。
トワが声を潜めてフォローに入る。
トワ「…つまり、シンさんがドレスの用意を手伝ってくれたんですね?」
釣られて
馬とハヤテも声を潜めて会話を続ける。
馬「そう!ドレス選びって言うよりも虐待に近かったよ、あれは。」
ハヤテ「えー、でもシンにしては趣味が良いな。 俺最初誰かわからなかったぜ?」
トワ「僕もです////」
馬「私って気付いてもらえないのもどうかと思って、昼間着てた服で来ようと思ってました。」
トワ「昼間の服って、僕のシャツじゃないですか…危うく勇者になるところでしたね。」
ハヤテ「あぁ、今回はシンが正解だな。」
馬「えー、でもシンさんは人の皮を被った極悪非道ドS航海士、」
シン「
馬!!!」
馬「へいっっ!お許しを!!!」
シンは意外と耳が良いのだろう。自分の悪口を的確に拾い上げて都度
馬に睨みを利かせる。
そして、
シン「プロテイン!!」
馬を黙らせる一言を放つ。
馬「うっ!…シン様は慈悲深きお方でございます…」
シン「自分の立場をわきまえておけよ。」
馬「はいぃ…」
ハヤテ『
馬とシンは意外と仲が良いんだなー』
馬とシンのこれらのやり取りを見て『仲が良い』という感想を抱くハヤテはかなりポジティブ思考である。
シンと
馬のやり取りは勿論ナギも目撃している。
ソウシ「ナギ、顔が怖いよ?」
ナギ「…そうですか?」
ソウシに指摘され、ナギはすぐに平常心を装う。
しかし、
ソウシ『あれ?ナギも意外と
馬ちゃんのこと気にしてたりするんだ…』
ソウシの読心術は正確で鋭い。
ソウシ『まぁ、ナギの気持ちも分かるけどね。
今日の
馬ちゃんはシンと並んでも見劣りしないし、いつも自分に懐いてる子が他の男と急接近してたら複雑な気分になるか…
うん♪
馬ちゃん良かったね。』
と、ソウシは慈愛に満ちた気持ちで
馬を眺めた。
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食事の最中、尿意に襲われし
馬が席を立つ。
馬『マナー違反だけど…漏らすよりかは絶対マシなはず!!!』
リュウガ「ん?どうした、
馬?」
ストレートに「トイレ(小)行ってきます!」と言える雰囲気でもなくリュウガの隣まで足を運び、
馬「潜入調査行ってきます!」
と、ぼかして言ってみた。
リュウガ「そうか! 存分に行ってこい!」
リュウガからあっさりと許可が下りたので
馬は潜入調査もとい、用を足しに出立した。
フラフラと一人部屋から出ていった
馬を見て、嫌な予感がしたナギも席を立つ。
ソウシ「あ、行ってらっしゃい♪
馬ちゃんは絶対迷子になると思うからしっかりエスコートしてあげるんだよ。」
シン「まったく、お前まで席を立つとか、躾のなってない飼い主とペットだな。」
ソウシのアドバイスとシンの小言を背中に受けつつ、ナギは
馬の後を追った。
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馬は自分の勘を頼りに、お上品に言うならばレストルームを探した。
馬『だいたい厨房近くにありそうなんだよねー。』
ボーイに話しかけられるのが面倒なのでみつからないようにコソコソと身を低くして移動する。
やましい事は何もしていないのに、もう既に不審者の動きである。