サラ「さぁ、本題に入りましょう!ドレスなんだけど、私は
馬ちゃんの中身を活かした清純派ドレスが良いと思うの♪だからー…」
サラは主に白いドレスを中心に選び始めている。
馬「中身?…胃腸やら肝臓やら、内臓に優しいドレスでお願いします。」
店員にとって注文の意味がわからない客ほど厄介なものはない。
サラ「言い回しが気持ち悪いわよ。とにかく締め付けない物が良いのね。」
ゆったりとしたドレスを手に取り
馬の身体に合わせてみる。
サラ「あら?
馬ちゃん痩せた? 思ったよりドレスがぶかぶかだわ。」
馬「そりゃぁ、毎日朝から晩まで色んな男性達に仕えてますからね。 座薬講習会とか意外とハードなんですよ。」
サラ「そう……大変ねぇ。(複数!?しかも座薬とかどんなプレイなの…)」
馬の言い回しは第三者に対していつも誤解を招いてしまう。
……………………………
サラ「ちょっと!!!頭がプリンになってるじゃない…髪は女の命なのよ!」
馬に選んだ服を着替えさせている間、サラは彼女の頭髪が根元が地毛の黒色、毛先が以前染髪したままの明るい茶色になっていることに気がついた。
いわゆる『プリン頭』の状態である。
馬「ぎゃっっ!私、サラさんほど女子力無いですって。」
サラに頭髪を引っ張られている、その部分がもげそうだ。
サラ「…まさかだけど、あなたちゃんと化粧道具持ってるわよね?」
馬「全く無いです!!」
馬は親指を立ててカッコよく即答する。
ポカッと、ナギほどの威力は無いが、サラから優しめの指導が入った。
昔からサラは美容について怠ると鬼のように激怒する傾向があるのだが、今の彼女はそのスイッチが入ってしまっている。
馬「いててっ」
サラ「おバカ!!何で無いのよ、あーーもうっっ!」
サラは急ぎシンのところまで戻り何かを伝えた。
するとサラの言葉に従ったと思しきシンはそのまま店外へと出ていってしまった。
馬「え、ちょっとサラさんはシンのアニキに何を言ったんでやんす!?」
突発的に下っ端キャラになる
馬。
そんな事より、こんな魔窟のようなセレブ街に一人置いていかれるなんて溜まったもんじゃない。
サラ「フフフ…これからこの店はあなたの貸し切りよ!! ケーン!!!、ケーーン!!!! ちょっと来てちょうだい。」
サラに呼ばれて店の2階からお洒落泥棒な男性が降りてきた。
馬『うわ、またおっしゃれな人が登場してきた…この感じ、シリウス号に初めて乗った時と似てる。』
馬は、次から次へとイケメン達が登場してきて、本当に自分は死んでしまったのかと錯覚したあの日の感覚を思い出した。
サラ「この店の2階は自宅なの。 で、ケンは私のパートナーかつ、ここらでは有名な美容師なのよ。」
馬「……それは素敵ですね。」
嫌な予感がする…直ぐにでも逃げ出したい…そう本能が感じ取ったので
馬はクルリと振り返り店舗出口の方を向いたのだが、
ガシッ!!…と、力強くサラに肩を掴まれてしまう。
サラ「劇的なビフォーアフターをしましょうね〜♪」
馬「ノォォォォ〜〜〜!!!」
馬の意識は遠退きそうになった。
……………………………
ビフォー
↓
アフター
なんという事でしょう。
匠の手により、以前は無頓着にスカートを穿いているだけといった状態の下半身がヒラヒラふわふわのスカート姿に。
実はそれなりにあったバスト、生かされずただただ仕舞い込んでいただけだった胸元は今や大胆に見せつけられています。
化粧っ気の無かった顔にはきちんと紅が引かれ、アイメイクとしてライナーもマスカラも濃くなり過ぎない程度にしっかりと施されていてバッチリ。
頬にはピンクのチークが乗せられ白い肌によく映えています。
そして…
なんということでしょう。
ボサボサで地毛と染毛が入り混じったプリンのような毛色をしていた頭髪は綺麗に匠の手によって地毛側の色に染め上げられ漆黒の黒真珠のようになりました。
足りない長さを補うため、用意された匠のこだわりの逸品、つけ毛が自然に地毛と調和され、極上のロングヘアーへと仕上がりました。
これで依頼人が両手で虫入りの瓶を抱えていたとしても、ほんの僅かしか違和感を感じなくなりました。
これが二人の匠の為せる技です。
(↑以上をササ゚エさんの声のナレーションで再生!)
……………………………
サラ「よし!劇的大改造に成功したわね♪ありがとうケン、後は私がやるわ。」
ケンの整髪技術は本物だった。残念なプリン頭の
馬の髪をあっという間に改善してくれた。
そんなお洒落界のカリスマ美容師ケンはサラに言われるがまま自宅階へと再び戻って行った。
サラ「まだパトロンさんは来ないわね。もう少しお喋りしましょうか。」
ヤマトのオカマバーの雑用バイトとして三ヶ月程働いていた
馬だが、最初の一月はこのサラの補助員として付き添っていた。
彼女(彼)には色々と仕事のコツ(幼く見えるといけないから髪を染めなさい等)を教えてもらい、そしてまだまだバイトに慣れていない
馬の事をとても気に掛けてくれていた。
アケミがお喋り系おネエなら、サラは正統派美貌おネエで、店での人気ランキングが常にNo.1の絶対的エースだった。
しかし、
馬のバイト歴が二ヶ月目に入るか入らないかの頃に、サラは電撃寿引退をしてお店を去っていった。
馬「あの伝説の引退パーティからまだ2ヶ月くらいしか経ってないですよね??それなのにこんな立派なお店の店長さんをやってるなんてビックリしました。」
サラ「前からケンに誘われてたからお店の準備は着々と進めてたのよね〜。
でもそれを言うなら同じくヤマトを出て船旅を始めたっていう
馬ちゃんの方こそビックリしちゃうわよ!」
馬「いやこうなったのも実はですね…」
馬はサラにこれまでの経緯を詳しく説明した。(※但しシリウス海賊団である部分は伏せておいた状態で)