廃墟島~滅びの女王と二刀流の剣士~(その2)
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とても明るくて美しい母親だったが、身体だけは虚弱だった。
しかし、女手一つでシンを養うため、彼女は毎日労働に勤しんでいた。
「ゴフォッ…グフッ…ゲフンゲフンッッゲホォッッ……あ゙ー!!」
シン「おっさんみたいな咳をしてるけど大丈夫…?」
「……大丈夫!!穿いて、」
シン「それはもう良いから。」
「フフ、いらなかった?」
母親はいつもシンに優しかったのも覚えている。
「じゃあ、母さんは元気にお仕事行ってくるけど、何かあったらおじいさまのところに行きなさいね。」
『おじいさま』とは族長の事で、シンの母親はウル族の中で『姫』に当たる人物でもあった。
シン「…………」
その『姫』の子どもなのに……
シンは、自分の右目を押さえた。
憎き敵国の血が自分の中に流れている事実を嫌でも示す右目が忌々しくてたまらなかった。
ところが、
「シンのお父様はね、とっても素敵なジェントルマンで、ダンディーで、母さんより年上なのにたまに見せる可愛い仕草がこれがまた…」
シンのコンプレックスを知ってるはずの母親は事ある毎に父親の話、しかも惚気話を彼に聞かせていた。
シンの父親は良き人間だったと言いたかったのだろう。
そんな母親の姿を見ても、
シン『オレがあの噂を気にしてるからって、母さんはわざと思っても無いことを言ってるんだ…』
いつもシンは悲観的に受け止めていた。
『あの噂』とは勿論、『シンの母親が敵国の軍人に乱暴された結果、シンを身籠った』という噂だった。
シン「………フン。」
「もう、シンったら、捻くれちゃって……イヤイヤ期かしら?」
日々擦れていく息子の様子に見兼ねて、母親が1度だけ鬼の形相で叱りつけた事がある。
「貴方って子は!!それでも(ピー※自主規制)ついてるの!?
そんな毎日毎日、自分を憎んで生きてるなんて、ウル族の男らしくないっっ!!
もっとプライドを高く持って生きなさいよっっ、この、バカシンがぁ!!」
感情が高ぶり過ぎたのか、最後の「バカシン」発言に関しては、『sin』よりも『chin』に近い発音だった。
シン「……………」
普段は見せない母親の鬼気迫る勢いに、シンは目を見開いて驚いてしまう。
そして、彼女の背後に前髪がセンター分けのロン毛の男性教師のような影が見えた気がしたが、目の錯覚だろうと思うことにした。
シン『母さん、か……懐かしい。』
美しく、明るく、情熱的で、少し変わった性格の母親と暮らした日々は、シンにとっては人生で1番楽しく充実した日々だった。
子どもは、自分の親と似たタイプを配偶者に選びやすいと言うが……
シン「………………」
シンは母親を懐かしむ想いで馬の首筋に顔を埋めた。
女性特有の柔肌と、甘く香る体臭が非常に心地良かった。
シン『もし、馬がオレとの相部屋を選んでいたら……どうなってただろう。』 (※実際は酷い目に遭います、『他小説』参照)
最初は他人事としてナギの気苦労を憐れんでいたシンだが、今となってはただただ羨ましい。
そんな彼の想いなど露知らず、
馬「くふふっ、奥様、くすぐっとうござぁますわ、むにゃ………」
マダムになった夢の中で豪華なお茶会を楽しんでいる馬はザマス口調で寝言を呟いた。
シン「………………」
やはり他の女には無い、馬の何処か変なところが亡き母親と重なって見えてしまう。
シンにはこの感情が何なのかよくわからなくなっていた。
母性愛に飢えているだけなのか、 恋心なのか……
だが、
馬「お願いしますぅ………」
シン「?」
馬「ナギさんの……乳首の……魚拓取らせて……それを眺めながらお茶会したいぃぃ!!」
この寝言を聞いたシンは、やはり同室にならなくて良かったかもしれない、と思い直していた。