100回目のプロポーズ~私が死なせません!!~
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ナギ「……あのゲオルグって奴、気にくわねぇな。」
非常に忌々しそうにナギが溢した。
馬「え…何でですか?」
ナギの発言を聞いた馬は純粋な疑問を抱いた。
自分は一言もゲオルグの愚痴や悪口など言わなかったのに、何故ナギはそんなにも彼に悪意を持つのか?
馬はゲオルグの事を決して嫌ってはいなかった。
むしろ、遅くまで仕事をこなす姿は尊敬に値するものだったし、嘘を吐かれた事を除けば、基本的に自分にとても良くしてくれた。
タケルの立場を持ち出された件では、冷静に考えると至極当然な考えであり、それに気付かせてくれた事に感謝すらしている。
馬『ナギさんはそんなにゲオルグさんと喋ってないのに何で嫌ってんだ…?』
馬は他人の心情についてとことん鈍いのだ。
馬「ナギさん…あのー、ゲオルグさんは超良い人ですよ? そんなに嫌わなくても、」
ナギ「……はぁ!?」
馬「ひょぇっっ!!」
この期に及んで何を言ってるのか……ナギは信じられない物を見るような目で馬を見た。
馬「あ、あの、凄く優しくしてくれたし……」
非常に誤解を招くような言い方だ。
ナギ「…………」
それはどういったシチュエーションでの体験を指しているのか、ナギは考えている内に怒りで支配されそうになる。
だが、
ナギ「……はぁ。」
溜め息を吐くことによって何とか心を鎮めた。
そんな彼の様子を見兼ねた馬が恐る恐る尋ねる。
馬「私、何か良からぬ事を言ったでしょうか……?」
ナギ「……お前なぁ、」
心底呆れた声で言いながらナギは馬の二の腕を掴んだ。
二の腕にも関わらず、ナギの掌だけで余裕で掴みきれてしまう。
ナギ「……結婚予定の相手をこんなにやつれさせて良い人なわけねぇだろ?」
馬「うーん…」
ナギの説明を聞いても、馬はいまいちピンと来なかった。
ゲオルグはむしろ食べさせようとしてくれていた。
しかし、自分が食事を受け付けなかったせいで痩せていったので、所謂自業自得である、というのが馬の認識である。
馬『やっぱりゲオルグさんは関係ないと思うんだけど…』
彼女の中では、『食べられなくなった原因=ゲオルグの嘘』という事実が抜け落ちてしまっている。
ナギ『……仕方ねぇな。』
未だ戸惑う馬には言葉で説明するよりも強行手段でプロポーズする方が早いとナギは考えた。
グィッ、
掴んだ腕をそのままに、馬の白い手袋をナギは外そうとした。
馬「あ!」
その先には生々しい傷痕が残っている。
そんなグロテスクなものをナギに見せるわけにはいかない… ところが、
ナギ「……!?」
馬が止める前に手袋は脱がされてしまい、甲の傷はあっさりと白日の下に晒されてしまった。
ナギ「この怪我……どうしたんだ!?」
既にかさぶたになっているとはいえ、本人が思う以上に酷い傷痕なのだろう、ナギは愕然とした顔で馬に尋ねた。
馬「え、えーと…」
それはナギを想って開かない扉を叩き続けた時の傷なのだが……重苦しい内容だったのでナギには言い辛かった。
ナギ「…………」
口籠る馬の答えを聞く前に、もう片方の手袋もナギは外した。
ナギ「……こっちもか。」
こちら側にも花嫁には似つかわしくない傷があった。
馬「こ……これは…奇跡的に豪快なこけ方をしちゃって…」
ナギ「……お前は両方の手の甲で受け身を取るのか?」
そんな事が出来るのは掌が常に『グー』の状態のアンハ○ンマンかドラ-もんぐらいだろう。
しかし、この世界にそんな国民的キャラクターはいない。
馬「ぐぅっ…」
状況的に不自然な事を指摘され、何も言い返せなくなった。
ナギ『……もしかしてゲオルグの奴に酷い虐待をされてたのか?』
ナギも昨日のタケルと同じような考えに行き着いてしまった。
食事も満足に与えられず、暴力を振るわれ、そして嫌がる彼女を無理矢理脅して……
ナギも馬に無体を働こうとしたが、それを差し引いてもここまで酷いことは絶対にしない。
ナギ「……殺す。」
背景を全く知らないナギの怒りは頂点に達してしまい、本音がポロッと溢れ出た。
馬「ひぃっ、お、お助け……あ、でもナギさんに殺されるなら本望かも…」
ここで最後のすれ違いが生じるのだった。