ナギ「……破片で怪我するなよ。」
スタンレー邸の備品置き場の窓を割り、先に地面に降り立ったナギが
馬の手を引いてやる。
馬「はーい、よ…っ!!」
窓枠にしゃがみこむ
馬は、ナギの手をあまり煩わせないよう意識しながらピョンと飛び降りた。
馬「おっ…?」
そのまま地面に着地する予定だったが、何故だか足はプラプラと浮いたままだ。
ナギ「………………」
散らばるガラス片の上に着地する前に、ナギが彼女の身体を掬い上げていたのだ。
いくら靴を履いているとは言え、大事な女性が怪我をするような可能性は少しでも排除したい、そう思う故の配慮だった。
馬「うひょーい!」
馬は空中浮遊を楽しみ、
ナギ「……………」
ナギは黙って彼女の足を何もない地面の上に着地させた。
馬「あ、ありがとうございます……気遣いが……その、か、カッコいいですね////」
両想いだと知ってからは、何故だかナギに好意を示すのが照れ臭く感じてしまう。
ナギ「………行くぞ。」
それはナギも同じのようで、微かに顔を赤くしながらすぐに
馬に背を向けて進みだした。
ナギは裏門に近い柵からの脱出を選んだ。
裏門は崖に続くやや荒れた道と繋がっている。
そのため、軍馬などが停めにくいだろうと読んでの判断だ。
ナギ『……警備が4人、内2人が監視室の中。』
ナギは脳内で警備員達の目を欺くシミュレーションをしている。
正面突破はキツいが、隙を突いての柵越えは可能だろう。
方針の決まったナギは
馬に指示を出そうと振り向いたが……
ナギ「……うゎっ、何だよそれ。」
呆れ気味のナギが見たものは、
馬「擬態に役立つかなーって。」
馬の顔がすっぽりと隠れてしまうような巨大な落葉……それに3ヶ所穴が開けられており、そこから
馬の目玉が覗いていた。
ナギ「……アホな事してねぇで、今からは慎重に行くぞ。」
馬「押守!」
馬は巨大な葉っぱお面を気に入ったようでまだ外していない。
ご丁寧に紐まで取り付け、顔にピッタリと張り付けている。
ナギ「……………」
思いきりアホな事をし続けている
馬を一瞥してから、
ナギ「……虫付いてるぞ、それ。」
と、小声で忠告してやった。
馬「えっっ!?」
馬は慌てて葉っぱお面を外した。
しかし、表裏を確認しても何処にも虫は付いていない。
馬「虫、付いてないですよ?」
ナギは
馬の手からお面を奪い取ると、
ナギ「……これは目立ち過ぎるから止めろ。」
と、お面を地面に投げ捨ててしまった。
馬「ぎょっっ、ナギスケっっ!?
ナギさん酷いです、ナギスケを捨てるなんて!!」
既にお面にはナギに因んだ名前が付けられており、
馬はお面を拾い上げながら憤慨していた。
ナギ「いや、そんな変な葉っぱに人の名前付ける方が酷ぇだろ。」
冷静な彼は淡々と突っ込むのだった。
馬「カッコいいと思うんだけどなー…あ、破れちゃってる、さよなら、ナギスケ。」
作成してそう時間が経ってないため、
馬の愛着もそんなに湧いていなかったようだ。
馬は巨大な葉っぱのお面を足下に置いた。