【朝食の用意】
ナギ「………っ、」
窓から朝日が差し掛かると同時にナギは目を覚ました。
ナギ『……起きるか』
本日も朝からよく食べる船員達の給仕をしなければならない。
まだ眠っていたい気もするが気合を入れて立ち上がるか、とナギは手を横に付いたところ、
ムギュッ!!
…柔らかい何かに触れた。
馬「…ぁぎゃっっ!?」
手触りの良いそれはうつ伏せで眠る
馬の尻だった。
ナギ「……チッ!!」
手触りの良さは置いておいて、朝一番から
馬の身体に触れる羽目になったナギはとりあえず腹が立ったので、
バサッッ!!
うつ伏せのまま一直線に伸びきった
馬に毛布を投げつけた。
ナギ的にはこのまま超問題児の彼女を毛布と共に封印してしまいたい。
しかし、
馬「ナギさん…毛布を掛けてくれるなんて朝から優すぃ~ハァハァ…////」
残念ながらナギの怒りは
馬には届いておらず、イケメンからの毛布の投げつけは彼女にとってこの上ないプレゼントとなってしまっていた。
ナギ「……うぜぇ。」
馬の発言を受け、瞬時に不快感に襲われる。
ナギの寝覚めは最悪なものとなった。
ナギ「…お前はベッドで寝てただろ、なんで落ちて寝てんだよ。」
馬「夜中、ナギさんが寒いだろうと思って…人肌で温めようと…その…////」
ナギ「…………」
急にもじもじしだす
馬、その様子が最高に鬱陶しい。
シャツを着がえ終えたナギは、自身のトレードマークでもあるバンダナに手を伸ばそうとしたが、何故かいつも置いてある場所には見当たらなかった。
ナギ「……?」
馬「あ、バンダナですね!はいどうぞ。」
スルスルスルーっと…
なんと
馬は胸当ての中からバンダナを取り出したではないか!!
ナギ「アホっっ!!!」
ナギは慌てて奪い取るも、彼女の温もりが残るバンダナは、何とも言えない気持ち悪さがあった。
昨日使用したバンダナは洗濯中でまだ乾いてはいない。
今日使う予定にしていたバンダナは
馬の温もりが残っている…ナギはどちらを選ぶのか、ある種究極の選択を迫られていた。
……………………………
バンダナの中の髪の毛が湿り気を帯びてしまい、ナギの不快指数は上がっていく。
ナギ「………………」
馬「ナギさーん、あの、半乾きのバンダナ巻いて頭寒くないですか?」
トン、トン、ダンッッッ!!!!!!!
無神経な
馬の質問を受け、つい力任せに野菜を切ってしまった。
ナギ「…誰のせいだと思ってんだ?」
ナギは
馬を睨み付けた。心なしか、使用している包丁の刃先が彼女の方を向いている。
馬「ヒイィィ!! あ、あの、ヤマトでは主君のために部下が靴を服の中で温めて、それで忠誠をアピールする話があるんです。 それを再現しようと思って……」
ナギ「余計なことすんじゃねぇ!!」
馬「…もしかして、胸当てよりも、パンツの方で温めた方が良、」
ナギ「良くねぇ!!」
ダンッッッッッ!!!!
かなり堅いヤマトカボチャがナギの渾身の一刀で真っ二つに割かれた。
ナギ「お前は黙って芋の皮を剥いてろ!!」
馬「は、はいぃぃ!!!」
ナギに激怒されてしまったため、
馬は自身の作業に集中することにした。
……………………………
馬「…出来た!!」
しばらく静かに芋の皮を剥いていた
馬が何かを完成させたらしい。
ナギ「……?」
ナギは彼女の手元にある皿を見てみた。
しかし、皿には綺麗に剥かれた芋達が並んでいるだけだった…彼女は一体何を作ったというのだろうか?
馬「ジャーーン!!ナギいも~♪」
答えは皿の中ではなく、
馬の手中にあった。
その手にはナギの顔らしきものが彫られた芋が握られていた。
ところが、
ナギ「…………」
ポイッ!
ナギは容赦なくナギいもを奪い取り、グツグツと沸騰する鍋へと投入した。
馬「ぁあ゙ぁぁあ゙~、ナギいもさーん、カムバックぅぅぅー…」
ナギ「……変なもん作るな、アホ。」
その後、無惨な姿(ポテトサラダ)に変わり果てたナギいもはトワに美味しくいただかれたのだった。