馬「ナギさん、 私と結婚し……」
しかし、言いかけてふいに黙ってしまう。
ナギ「……?」
馬の様子がおかしいことにすぐに気付いたナギが彼女の顔を覗き込むと、
馬「…………」
驚愕の表情をしたまま固まっていた。
ナギ「……どうした?」
馬がおかしい行動を取るのは今に始まった事ではないが、それでも急停止した彼女を心配して声を掛けた。
馬「結婚しないでください… むしろ私は…ナギさんから離れないとダメかもしれません……」
と、やっと言葉を発した
馬だが、非常に弱々しく離別宣言をしたのだった。
ナギ「……は?」
ソウシ「え!?」
シン「はぁ!?」
その場にいる全員が驚きの声を上げた。
まさか
馬の口から決別の言葉が出るとは微塵も思っていなかったからだ。
ナギ「……何言ってるんだ?」
馬「…………」
ナギの呼び掛けにも応えずに、
馬は踵を返し、そのままスタスタと従者の控える馬車を目指して歩いていった。
今までの彼女から考えるとあり得ない態度だ。
ソウシ「
馬ちゃんどうしたの!?」
ソウシが慌てて
馬の後を追う。
シン「何なんだ、アイツ… お前が何かやらかしたのか?」
冷静沈着なシンでさえ呆気に取られている始末で、
ナギ「……いや、俺は何も…」
当事者のナギも勿論、呆然と彼女の背中を見送るしか出来なかった。
ソウシ「
馬ちゃん、待つんだ!!」
ソウシが強い口調で呼び止めると、
馬「ソウシさん……」
力のない声を出しながら
馬が振り向いた。
今の彼女の様子は酷く憔悴しているように感じられる。
ソウシ「急にどうしたんだ?ナギにあんな事を言うなんて君らしくない。」
馬「私は今、仮面着けてますよね?」
ソウシ「え…?」
馬「着けてますよね?」
ソウシ「うん……着けてるよ。」
ソウシは彼女質問の意図が掴めずにたじろいでしまう。
馬「ですよね…」
回答を聞いた
馬の表情は絶望といったもので、苦しそうに頭まで抱え出してしまった。
ソウシ「どういうこと?」
何かに苦悩する
馬の様子を見たソウシは彼女に答えを迫った。
……………………………
その後の
馬の態度も頑なとしか言いようが無かった。
馬1人だけで馬車を使わずに歩いて船まで戻ると言い出し、なんとか説得して馬車に乗せると今度はナギから可能な限り距離を置いて座ろうとした。
馬「…………」
ナギ「……………」
シン「……………」
ソウシ「…………」
普段ペチャクチャとお喋りでうるさい
馬が黙るだけで、馬車の内部は葬式のように静まり返っている。
唯一、
リュウガ「やっぱり帝国トップの貴族達が集まる舞踏会だけあるな!
金一封だけで暫く遊んで暮らせるぞ!」
と、リュウガだけは楽しそうに笑っていた。
しかし、
シン「残念ですが、船の補修費に回すので遊べませんよ。」
ナギ「………あと、食費も。」
ソウシ「そろそろメスを買い替えないと。」
リュウガ「ぐぐっっ、」
リュウガもあえなく撃沈した。
馬「……………」
ナギ「………………」
シン「………………」
ソウシ「………………」
リュウガ「……………」
全員が沈黙する中で、 ただガタゴトと馬車の走る音だけが聞こえて来る。
ソウシ『…………ここで絶対に笑うべきでは無いんだけど…』
笑ってはいけない、この現状がソウシを極限まで追い詰めていた。
ソウシはどうしても
馬に伝えたいことがあった。
ソウシ「……
馬ちゃん、これだけは言わせて欲しい。」
ソウシはそっと
馬に耳打ちをする。
馬「…?」
気落ちしたままの状態だが、
馬は顔を上げた。
ソウシ「シンのアレってさ、眼帯?仮面?
どっちかな、ずっと気になってたんだ。」
馬「…!?」
突然の指摘に
馬も思わず吹き出しそうになる。
確かに、
馬もずっと気になっていたのだ。
アレは仮面と言うよりも………

眼帯にしか見えない。
しかし、本人が仮面と言い張って着けているのなら仮面なのだろう。