つぎの日
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名前を入れないと『馬』になるので、あなたの脳内で馬が大暴れするでしょう…お気をつけください。
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シンは優雅に航海室でコーヒーを飲んでいた。
今頃馬はシンの自室を相手に四苦八苦しながら掃除をしているハズだ。
先ほどからガシャガシャという、彼女が苦戦しているであろう音が聞こえている。
最近は急な天候悪化のせいで航路の変更を余儀なくされる事が多く、航海室で仮眠を取ることも多くなった。 それ故、自室はどんどん物置化が進み、今となっては全く人の手の入っていない魔窟へと変貌していた。
シン『仮にもシリウス号の船員となったからには、あれくらいの掃除で音を上げるようではこれからの航海は堪えられないだろう。 まぁ音を上げたら直ぐに魚のエサに、』
馬「終わりましたー!!」
彼の渋カッコイイ脳内台詞が言い終わる前に、元気な声で馬が戻って来た。
シンが予想していた時間どころの早さではない。
シン「…終わっただと?」
馬「はい、一通り終わりましたよ!
で、掃除してたらこの仮面が出てきたので、使わなかったら私にくれませんか?」
馬が持ち出してきた仮面は、シンの初航海直後に知り合った異民達が記念にと作ってくれた工芸品だった。
数年ぶりに目にしたそれの存在は、馬がちゃんと掃除をしたという証拠にもなっていた。
シン「…フン。その前に部屋を見に行く。」
馬「はい、チェックしてください!」
シンと馬は問題の部屋へと向かった。
……………………………
シンの私物が散乱していた部屋は、まるでホテルの一室かの如く小綺麗になっていた…が、嫌がらせなのか、仮面の他にも発掘されたであろうシンの下着類(シルク製)が無造作にベッドの上に置かれていた。
他にも新参者の彼女には処分の方法がわからなかったと思われる大型のガラクタ類も綺麗に仕分けされた状態で扉横に並べられていた。
シン「……!!」
シンは正直驚いていた。
このとろくさそうでアホ丸出しの馬がここまで掃除が出来るなんて想定外の結末だ。
シン『意外な特技があるもんだな…』
シンは久々に他人に対して感心の目を向けた。
馬「エヘヘ、シンさん、このパンツ被り心地が良いですね~。 シルクですかな?」
馬はいつの間にかベッドにあったパンツを自身の頭に被せて喜んでいる。
怪しげな仮面を着用中の彼女は、顔を見られる恐れが無いということでとても大胆な行動を取ることが出来た。
シン「アホ!!!返せ!!!!」
慌ててパンツを毟り取るシン。
先程感心した事実を今すぐに撤回したい、と彼は後悔する。
馬「イタタ、未使用だから私、気にしませんよ?」
シン「そういう問題じゃない!」
……………………………
シルクパンツ帽子の件の不敬は抜きにして、それにしてもここまで部屋を綺麗にしてもらっておいてタダ働きで済ませることは流石のシンも気が引けた。
シン「…報酬にその仮面はお前にやろう。」
馬「え?良いんですか!!!」
実質、全く不要な物だったのでシンの懐は痛くも痒くもないのだが。 彼は実に抜け目のない男である。
シン「あぁ。次は航海室の掃除をしろ。」
馬「そしたら次はパンツをいただける、」
シン「やらん!!!」
馬の要望は仮面だけに留まらされた。
……………………………
馬「シンさーん、終わりましたよー。」
綺麗になった自室の机で、シンが航図の作成に集中している間に、馬は再び要領良く航海室の掃除をし終えたようだ。
シンは手を止め、すぐ隣の航海室へと足を運ぶ。
やはり見違えるように綺麗になっている航海室。
シン「こういう仕事をやってた事があるのか?」
もはやこれはプロの仕業としか思えなかった。
馬「あ、そうですね。 短期間だけ女中と便利屋のバイトをしていたことがあります。」
シン「女中?便利屋?聞いたことが無い…」
両方ともシンの出身国には無い、初めて耳にする職業だった。
馬「女中はヤマトのお城で働く女性のことで……メイドとか侍女と言ったところですね。」
シン『それで部屋が細部まで綺麗に磨かれているのか。』
馬「便利屋は何でも屋さんですね。言葉通り、金額に合わせてなんでもします。
私の場合、引っ越しの梱包や、人が亡くなった後の片付けなどをしてました。」
さらっと馬の口からトンデモ就業内容が飛び出たが、
シン『だから大きな荷物の解体もためらう事なくこなせたのか。』
シンは冷静に馬の仕事ぶりを振り返っていた。
メイドと引っ越し業者の併せ技で完璧な清掃技術を習得している馬…掃除係としては最適の逸材である。
シン『ナギも馬を上手く使えば便利なのに、アイツも不器用な奴だな。』
馬を上手に手懐ければ非常に便利な存在となる、それに気が付いたシンは彼女を頑なに拒む頑固なナギを不憫に思った。
シン「もう昼だな、食堂に行くぞ。」
馬「えっ、もうですか!お仕事いただけたので時間があっという間でした♪シンさんありがとうございます!」
シン「………」
クセは強過ぎるが馬は真面目に仕事はするし、何よりも素直に礼が言える人間ではないか。
共に過ごしている内にシンは少しだけ彼女の人間性を見直していた。
シン「行くぞ」
馬「イエッサー!!」
時刻は太陽が真上に来る頃、もうすぐ昼食の時間だ。
シンは迷子常習者の馬を食堂まで連れていってやることにした。