朝からナギに対して数々の失敗をやらかした
馬は流石に落ち込んでいた。
馬「…そうだ、ソウシさんにお願いしてみよう。」
心が落ち込んでいる時に思い浮かんだのは菩薩のソウシの笑顔だった。
馬『ソウシ大先生なら医務室の掃除とか、医薬品の整理とか、私にも出来そうな仕事を与えてくださるかも…』
馬はソウシが居るであろう医務室まで足を運ぶ事にした。
馬『で、医薬品の整理が終わったら「これ着てくれない?」ってナース服を差し出されちゃったりして… それで、「これからナギの個人診察を始めようと思う」って言われて、無理矢理座らされたナギさんのあんなところやこんなところに、ソウシさんと一緒に聴診器を当てて…キャーーー////』
馬の過剰な妄想歩行はまだまだ続く。
馬『それでそれで、「座薬を用意して」って言われて私がナギさんに速やかに…うひゃーーー////ソウシ先生のイケナイ診療所だわ!』
痛々しい妄想のおかげですっかり元気になった
馬が辿り着いた先は目的地の医務室…ではなくて航海室だった。
馬「あっれぇー?」
極度の方向音痴の
馬は自分が瞬間移動でもしたのかと本気で疑った。
……………………………
来てしまったからにはシンに挨拶しておこう、そう考えた
馬は航海室の扉を静かに開けた。
昨晩の不寝番はシンだったらしい。 徹夜明けの彼は今から寝ると言って食堂を後にしていたのできっと眠っているだろう。
馬「(おじゃましまーす、寝起きドッキリでーす…)」
このように呟いておけばシンに見つかり、怒られても堂々と「ドッキリのために侵入した」と主張できる。
出来れば『ドッキリ大成功!!』というプラカードもあれば完璧だったが、無いものは仕方がないので今は手ぶらでドッキリに挑戦する。
馬「(ウヒヒ、シンさんの綺麗な寝顔はどこですかー?)」
改めて航海室と連なっているシンの自室を見てみると、様々な物で溢れかえっているのがわかった。
シンが何処で寝ているかさえ見当がつかない。
馬「(シンさーん、見つけたらシンさんのお顔をペロペロしましょうねぇー、ウヘヘ…)」
とんでもない変態女子がここにいる。
その変態女子が足音を忍ばせて静かに荷物を掻き分けようとした…その時、
シン「おい、何してる。」
馬の背後から急にシンの声がした。
馬「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!!!」
シン「うゎっ!」
あまりにも突然の登場に、
馬は驚き過ぎて絶叫した。
その時の顔はある種のホラーだったと、後にシンは述べている。
……………………………
シン「ナギに追い出されたのか。」
馬「……はい。それどころかナギさんに嫌われちゃいまして…」
シン「どうせまた余計な事をしでかしたのだろう。」
馬「うぅ、食器を下げるのが遅すぎたり、洗い物をしているナギさんの背中を愛撫してあげたり、ナギさんはれっきとした女好きだ!って訂正しただけなんですが…」
聞いただけでも他人からされたら鬱陶しい内容ばかりだった。
シン『救えないな…』
シンは
馬の救いようのないバカっぷりを憐れんだ。
シン「……………」
シンは少し考えて、
馬に問うた。
シン「お前に仕事をやろうか?」
馬「はい!はい!!何でもやります!!! この不況の時代、仕事にありつければ何でもやってみせます!!」
突如湧いて出た求職情報に、
馬は必死になって喰い付いた。
シン「
馬はヤマトにいた時、自分の部屋の掃除はしていたか?」
馬「はい!それは勿論!!」
シン「フン。決まりだな…」
ニヤリと笑うシン。
簡易面接の結果、どうやら採用が決まったみたいだ。
シン「仕事内容はこの部屋の掃除だ。」
馬「えぇっ!」
馬が驚くのも無理は無い。
なぜなら彼女の眼前には足の踏み場も無い腐界が広がっているからだ。