
人魚島~二つの呪い~(その5)
馬『な、ナギさん……!?』
ナギの顔を見返す
馬の口はあんぐりと開いたままである。
ナギ「………………」
そんな呆気にとられている
馬にはお構いなしに、ナギは彼女の頭をグィっと自身の胸に押し当てた。
馬『え、えっと…これはヨダレが出る夢なのかな?』
パニックになりすぎて現実逃避をしそうになっている
馬を尻目に、ナギはプロポーズに至った自身の気持ちを少しずつ伝えていく。
ナギ「……俺のせいで、人間やめちまうまで追い詰めたんだな。」
馬『…いや、あの…私の好奇心でなっただけで…ナギさんのせいじゃないですよ…(※
馬の心の声)』
ナギ「……けど、いくら人魚になったからと言って、たった1人でこの島で生きていくのは無理だ。」
馬『リヴラさんと愉快な仲間達がいるみたいだから大丈夫そうなんだけど…(※
馬の心の声)』
ナギ「……このままお前を犬死にさせるわけにはいかない。 シリウスに残れ、良いな?」
馬『うぅ……』
言葉だけを耳に入れていた
馬が見上げた先には、あまりにも真剣なナギの瞳があった。
その彼の真剣さに気圧されて
馬はついに頷いてしまう。
その様子を見届けたナギは、
ナギ「良い子だ。」
と、小声ながらも甘く囁き頭を撫でた。
馬『えぇ〜、凄いとろけそうになるやつぅ…』
その時のナギの笑顔と大きな手が心地好く、
馬はウットリとしながら彼の胸に顔を埋めた。
ところが、
ナギ「………ただな、人魚のお前は…………その……」
恍惚とする
馬とは対照的に、ナギは何故だか、先の言葉を非常に言いづらそうにしている。
馬『えっ、人魚のお前は魚臭い!とでも言いたいのかな!?』
そんな考えに至り、急に不安になった
馬は次の瞬間にはナギから距離を置こうとした。
ナギ「いや、離れなくていい。」
自己評価の低すぎる
馬の考えそうなことを想定したナギは慌てて彼女を抱き止めた。
ここは自分の本当の気持ちを伝えなければいけない、 ナギは意を決して続きを話す。
ナギ「人魚のお前は………綺麗過ぎて………色んな奴に狙われないか心配だ。」
馬『…私はそんなことを言うナギさんの頭の方が心配なんですけど……』
案の定、ナギの言葉に疑問を抱いた
馬は思いきり顔を顰めている。
ナギ「……そんな顔をするな、本当に綺麗で……その、…可愛い。」
1度言ってしまうと止まらなくなったのか、ナギの口からは次々と本音が飛び出す。
馬『あわわわわ……ナギさんがおかしくなった……』
馬はそんな彼の様子に本気で怖じ気付いている。
ナギ「もう1度言う……結婚しないか?」
ナギが真剣な表情で
馬を見つめる。
馬「………っ、」
馬はかなり困った様子で、目をそらそうとしたが、ナギに顎を掴まれ思うように動かせない。
ナギ「人魚のお前を、俺が一生守るから。」
馬「……!!」
馬は気付いてしまった。
馬『あぁ、ナギさんは勘違いをしているんだ……』
…と。
馬『私が一生人魚のままだと思って責任を感じてるみたいだけど…どうしよう、1日体験人魚なんでーす☆なんて今さら言えない…』
ナギ「
馬…?」
何もアクションを起こさない
馬の態度を肯定と捉えるべきか、彼は考えあぐねているようだ。
そして悪いタイミングは重なるもので、
フラッ…
馬『あれ?』
馬自身も驚いてしまったが、急に彼女の体がふらつき、ナギの体にしなだれかかってしまったのだ。
水から離れた人魚の体が乾燥し、徐々に体力を奪われていった結果である。
しかし、そんな事情を知らないナギは、抱き付く
=プロポーズの了承だと受け取ってしまった。
ナギ「…………
馬、」
ナギに愛おしそうに名前を呼ばれ、抱き締められた
馬はますますパニックに陥る。
馬『ナギさんを騙してる…これは結婚詐欺に当たるかもしれない、本当にどうしよう…』
一方のナギは、今までの想いが全て爆発し、どうにかなってしまいそうだった。
加えて人魚の
馬からは、匂い立つ色気も尋常ではなく、 普段からナギの本能をくすぐる彼女の甘い匂い、フェロモンというものだろう、も、通常時よりも色濃く反映されていた。
美しい人魚は人間の男達を虜にすると言うが今がまさにその状況だった。
ナギ「
馬…このまま良いか?」
想いと同様に、肉欲まで爆発しそうになっているナギは、
馬をそっと床に押し倒した。