ナギ「……どうして俺なんだ?」
納得のいかないナギが
馬に問いかけた。
ここはナギの部屋。
ベッドと机、そして衣類等が収納されたチェスト以外は何も置いていないシンプルな部屋である。
リュウガに促され、誰との相部屋にするか決めなければならなかった
馬はナギを選んだ。
ナギにとってそれは死刑宣告に近く、思わず項垂れてしまう程だった。
馬「はい! すっかり忘れてましたがナギさんの服を汚しちゃったでしょう?
謝るついでにナギさんの部屋で良いやって決めました!」
ナギ「……はぁ?ついでだと?」
適当としか思えない選択理由を聞き、割りと本気で睨むナギに
馬は小さく悲鳴を上げる。
馬「ヒェッ!!で、でもお代官様ゴッコもやって、一緒に走った仲じゃないですか…」
ナギ「………」
不機嫌に口をつぐむナギの内心では『ただの同居人として最低限しか接触しないようにしよう』そう決意しているのだった。
ナギ「………チッ、俺は夕飯の用意をしてくる。 お前はこの部屋で休んでろ。そこのベッドは自由に使っていい。」
馬「ありがとうございますッフォーイ!」
と、
馬はベッドに飛び込むようにして座った。
ナギ「…ガキかよ。」
馬「………あ!!」
呆れ果てるナギを尻目に、
馬は一通りベッドの心地を確認している…そして気が付いてしまった。
ナギ「…じゃあな、」
部屋から出ていこうとするナギを
馬が慌てて呼び止める。
馬「待ってくださいナギさん!! このベッドは一つだけですよね…? ここに私が寝ますよね? するとナギさんは…?」
ナギ「……床で寝る。」
馬「ギャァッ!!!!」
ナギ「……!?」
突然の
馬の奇声にナギは怯んだ。
馬「そいつぁいけませんっっ、 部屋主を床に寝かせて私がベッドなんて!!!」
ナギ「………はぁ? ベッドは一つしか無い。
俺は女を床に寝かす趣味は無い、なら床で寝るのが当然だろ。」
馬『くぅー、漢らしいよナギさん、否、ナギ先輩!!……でもやっぱり悪すぎる……そうだ!!』
馬は良案を思い付いた。
馬「よし、なら一緒に寝ま」
ナギ「嫌だ。」
しかし、素早く拒絶されてしまった。
馬「(うぅ…即答にしても早すぎるぅぅ。) で、でもでも!ナギさんに申し訳無さすぎて私の気がすみません!! 一緒に寝ましょう、ね?」
それでも
馬はめげずにベッドの上でM字開脚をし、手をパーンッと叩いてナギに向かってアピールした。
ナギ「……………」
バタンッ!
今度こそナギは無言で出ていってしまった。
馬『私のお色気攻撃が効かないなんてさすが硬派なナギさん…って、それよりも考えないと!
一緒に寝ないとしたら、やっぱり私が床で寝るべきだよね。 でもそれはナギさんが嫌がるから……』
馬にしては珍しく真剣に考え込んでいたが、
馬『そうだ!!!』
意外と直ぐに答えが出たようだ。
馬『私が床でも快適に寝たら良いんじゃない? そうすればナギさんも後腐れなくベッドで寝る事が出来るはず!!
よし、これで二人の快適な同棲ライフを始められる♪』
善は急げとばかりに
馬は部屋を飛び出した。
目指す先は彼女が入っていたタルの置いてある倉庫だ。
倉庫にはタルの他にも様々な資材が置かれていて、それらを駆使すれば床上でも心地好く過ごせるスペースを作る事が出来ると企んだのだ。
馬『よーし、ナギさんも床で一緒に寝たくなるような悠々自適スペースを作っちゃおう!!』
方向音痴の
馬は自信を持って倉庫を目指した。