異界
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キブネ駅からきさらぎ駅まで後3駅はある。
それまでユイは、うたた寝をしていた。
終電とあっても電車内に人がいてもよさそうなのだが、とある噂があって、全くと言っていい程人がいない。
その噂とは……。
「えーまもなく、きさらぎ駅に到着です。お降りの方は」
車掌の無機質な声が電車内に響き、ビクッと肩を震わせてうたた寝から目覚める。
目を閉じて、盛大に伸びをする。はしたない事この上ないが、人がひとりもいない電車内で気遣う必要などない。
仕事で凝りに凝った肩や背中が、嫌な音を立てるがいつもの事だ、気にしない。
電車がスピードを落とし、やがてピタリと停まる。
ドアが開いたのを見て、ユイは席から立ち上がり外に出た。
今日の晩御飯(日付け変わっているので、晩御飯かどうかも怪しいが)は、何をしようかと考えながら外へ出た筈であったが。
「何、ここ?」
鬱蒼と茂る森の中に立っていて、ユイは馬鹿みたいに呆然と呟いた。
きさらぎという場所には、歴史が無い。どんな街にも、歴史のひとつやふたつは絶対にありそうなのだが、きさらぎには歴史が抹消されているのではないかと思う程に、全く無いのだ。
理由としては、魔術師が創り出した都市で歴史が無いからだとか、いや突如何らかの原因で出現した街かもしれないだとかの噂がある。
偽の歴史を書いたのだとしても、いずれ暴く者が出て来る……だから歴史が無いのではないかと、誰もが考察に精を出した。
そして歴史が無い代わりに、きさらぎには様々な怪談話が存在する。
色々あるが1番代表的なのが、きさらぎ駅に向かう最終電車に乗ると、異界に引き摺り込まれると言うもの。
真偽かどうか定かで無いが、きさらぎに東京から出張した人が帰って来ないという例があった為、信憑性はかなり高いと判断されていた。
怪談話があれば、きさらぎに住む人間に興味の対照が向くという事。
好奇心に駆られて聞いてくる者を冷たくあしらっている内に、きさらぎの人間は怒りっぽく冷たい人種だと揶揄されてしまった。
という話を思い出し、ユイは森に突っ立たまま呆然と呟く。
「噂、本当だったんだ」
「おい、そこにいるのは誰だ?」
前方から声が聞こえ、彼女はビクッと肩を震わせる。
全身が黒の衣装着た男性が、こちらにやって来た。
「あ、あの、私」
「ん、待て……貴様」
男は一瞬怪しむ素振りを見せたが、やがて納得した様に頷く。
「よし、来い」
「え?」
「貴様に合わせたい方がいる」
黒い男性は、付いて来いとばかりに背を向ける。
ここにいても何も出来ないと判断した彼女は、素直に彼に付いて行った。
それまでユイは、うたた寝をしていた。
終電とあっても電車内に人がいてもよさそうなのだが、とある噂があって、全くと言っていい程人がいない。
その噂とは……。
「えーまもなく、きさらぎ駅に到着です。お降りの方は」
車掌の無機質な声が電車内に響き、ビクッと肩を震わせてうたた寝から目覚める。
目を閉じて、盛大に伸びをする。はしたない事この上ないが、人がひとりもいない電車内で気遣う必要などない。
仕事で凝りに凝った肩や背中が、嫌な音を立てるがいつもの事だ、気にしない。
電車がスピードを落とし、やがてピタリと停まる。
ドアが開いたのを見て、ユイは席から立ち上がり外に出た。
今日の晩御飯(日付け変わっているので、晩御飯かどうかも怪しいが)は、何をしようかと考えながら外へ出た筈であったが。
「何、ここ?」
鬱蒼と茂る森の中に立っていて、ユイは馬鹿みたいに呆然と呟いた。
きさらぎという場所には、歴史が無い。どんな街にも、歴史のひとつやふたつは絶対にありそうなのだが、きさらぎには歴史が抹消されているのではないかと思う程に、全く無いのだ。
理由としては、魔術師が創り出した都市で歴史が無いからだとか、いや突如何らかの原因で出現した街かもしれないだとかの噂がある。
偽の歴史を書いたのだとしても、いずれ暴く者が出て来る……だから歴史が無いのではないかと、誰もが考察に精を出した。
そして歴史が無い代わりに、きさらぎには様々な怪談話が存在する。
色々あるが1番代表的なのが、きさらぎ駅に向かう最終電車に乗ると、異界に引き摺り込まれると言うもの。
真偽かどうか定かで無いが、きさらぎに東京から出張した人が帰って来ないという例があった為、信憑性はかなり高いと判断されていた。
怪談話があれば、きさらぎに住む人間に興味の対照が向くという事。
好奇心に駆られて聞いてくる者を冷たくあしらっている内に、きさらぎの人間は怒りっぽく冷たい人種だと揶揄されてしまった。
という話を思い出し、ユイは森に突っ立たまま呆然と呟く。
「噂、本当だったんだ」
「おい、そこにいるのは誰だ?」
前方から声が聞こえ、彼女はビクッと肩を震わせる。
全身が黒の衣装着た男性が、こちらにやって来た。
「あ、あの、私」
「ん、待て……貴様」
男は一瞬怪しむ素振りを見せたが、やがて納得した様に頷く。
「よし、来い」
「え?」
「貴様に合わせたい方がいる」
黒い男性は、付いて来いとばかりに背を向ける。
ここにいても何も出来ないと判断した彼女は、素直に彼に付いて行った。