「もう1度聞く。今の彼は？」

「え、えっと、ですね……」


ユイが驚いた事にも不快感を示さず、ただ淡々と先程の質問をする彼。


不思議に思いつつ、セブルスについて話した。


ふむふむと頷き、彼はあろう事か変な事を言う。


「今日は会社、休んだらどう？」

「え、何言って」

「行っても彼に付き纏われるだけだろう？
なら適当に理由を会社に告げて、休んだ方がいい」


後に彼は、セブルスについては俺がどうにかしようと言う始末。


いやどうにかするって？


「セブルスさんは、名のある名家ですよ。
私達みたいな一般人には」

「法で裁けないなら、自ら手を下すまでだろう？」


違うかな、と不気味で怪しい光を目に灯しながら、彼はそう告げる。


何だか危ない予感がして、ユイは見ず知らずの他人の為に、そこまでしなくていいですと思わず言ってしまう。


「こ、これは、私の責任ですし……ひゃっ！？」

「隣人でありながら助けられなかった、俺の責任でもある。
だから、俺に任せてくれないか？」


いきなり抱き寄せられ、優しく耳元で懇願される様に言われては、断る選択などない。


おまけに背中に手を這わされ、ユイはビクッと肩を震わせる。


不快感、からではない。もっと別の。


答えが出る前に、ユイはこの男性の名前を知らない事に気付く。


表札も無いから、今まで名前を知らなかったのだ。


「あ、あの、貴方の名前は？」

「ん、俺の？　そうだね、俺の名前は」


抱擁を解いた彼は、天使にも悪魔の様にも見せる微笑を浮かべて、名を告げた。


「チャールズ・リー・レイ。
それが俺の名前だよ」