私の家の隣には、いつの間に引っ越して来たのか分からない、奇妙な隣人がいる。


気付いたら隣の空き家に、1人の男性が住んでいたのだ。


「なぁ、ユイ。いい加減返事してくれよ」


仕事に行こうと家を出た所で、嫌な男と会ってしまう。


「同じ会社に勤めて、もう数ヶ月経つだろ？
僕にとってはさ」

「何回も言ってますけど、お断りします。
そもそも、貴方とあまり話した事ないですし」


ユイに付き纏う男－－セブルス・プリンスは、同じ会社勤めであるが部署は違う。


1回彼から悩み相談を持ち掛けられ、放って置けない義務感から、解決出来るか分からない方法を教えた。


根拠無い解決方法であったが、翌日にセブルスから解決したと言う旨を喜んで伝えられたのが、約数ヶ月前。


以来、セブルスから違う部署にも関わらず、猛アプローチをして来るのだ。


最初は義務感から助けただけだと言ったが、セブルスは信じようとしなかった。


寧ろ、僕に一目惚れしたからだろ、と変な脚色をされていたのだ。


セブルスがユイの家を尾行するなど、容易いにも程があった。


と言うのも、セブルスの実家は名家で訴えようものなら、逆に訴えられる可能性があった程だ。


だから誰にも相談出来ず、今に至る。


面倒くさくなって、返事は仕事の終わりにするからと言うと、セブルスは喜び勇んでやっと家の前から立ち去ってくれた。


「今の彼は？」


いきなり声を掛けられ、思わず「ひぇっ！？」と変な叫びを上げてしまう。


慌てて謝りながら見ると、ユイの隣人である。


挨拶程度はした事あるが、こうやって面と向かって話すのは初めてだ。