「ユイ、兄さん呼んできて」


テーブルの上に、晩御飯であるシチューと美味しそうな香り漂うパンを置いたヴィンセントがユイに言う。


今にも食べ出しそうなレスターに、ヴィンセントは頭を引っ張っ叩いた。


「痛ッテェな！」

「兄さんが起きて来るまで、食べちゃ駄目」

「1人分、多いですね。誰か来るんですか？」


レスターとヴィンセント、そしていまだに自分の部屋で眠っているボーに、ユイの分。


テーブルの上には、もう1人分のシチューとパンが置かれている。


「カーリーが、もうすぐここに来るから」

「カーリーさん来るんですね！　分かりました、今すぐボーさん起こして来ます！」


カーリーの名を聞いて、やたらテンション上がったユイは、ボーの部屋のある上の階へと続く階段を開け上がって行く。


「あいつ、カーリーの野郎好きだなぁ」

「彼女に唯一出来た、女友達だからじゃないかな？
ここら辺り、あまりユイに友達いないし」

「まぁ、俺らみたいな変わり者に近付くあいつに、友達はいないからな。
でもカーリーの野郎は、そんな事関係なく気さくに声掛けてたからな」


ユイがボーを連れて来るまでの間、2人はそんな話をしみじみ交わしていた。