「父から電話が来たんです、今日の朝」


ユイは寂しそうに呟いた。


大方、担当ウマ娘が決まらなければ、トレーナーをやめろと言うそんな内容だろう。


オルフェーヴルの予想は、的を得ていた。


「担当ウマ娘を決めなければ、今日の夜にでもトレーナーを辞めてもらうって。
あんまりですよ、頑張ってトレセン学園に来たのに」


ただ黙って彼女の話を聞いていた。


さしものオルフェーヴルでも、自分が口を挟む内容ではないと理解している。


だがどうしても譲れない事が。


「つまりこの我を、同情的な理由で気を引き、担当ウマ娘になってもらうと言う作戦か？
ふん、大人しそうに見えて、考えたものだな」


同情を引いて、望みのウマ娘を担当する……それはオルフェーヴルにとって、1番侮辱に値する事であった。


それにユイは、違いますと口にする。


「私がトレセン学園に来て、初めて目にした走りは貴女でした。
デビュー戦で他のウマ娘を蹴散らさんとする走り……まさしく私の心は、貴女に奪われました」


だから、と強く言葉を続けた。



「他の誰でもない、貴女だけなんです！
寝ても覚めても、貴女だけしか考えられない！
貴女の走りでないと、満足出来ない！！
私には貴女しか……」

「もうよい。
全く、恋する乙女みたいな台詞を吐くな」


まるで頭痛を堪える様に、顔を顰めるオルフェーヴル。


我に帰ったユイは、すみませんと謝る。